トップ犬の芸・トリック犬にコーナーを教える

犬にコーナーを教える

 犬の芸・トリックのうち「コーナー」を教える方法を、写真や動画付きで詳しく解説します。

目標動作の模範演技

 以下でご紹介するのは、「コーナー」の完成形です。最初の10秒だけ見て、以降は飛ばしても構いません。飼い主が指示語(Naughty!)を発すると、犬が壁際に移動して顔を背けます。この動作を最終目標として、犬をしつけていきます。
【動画】犬のコーナー
元動画は→こちら

芸・トリックに必要なもの

 以下でご紹介するのは、犬に芸やトリックを教える際に必要なものです。

条件付けの基本理論

 犬に芸やトリックを教える際は、「犬のしつけの基本理論」で解説した「古典的条件付け」と「オペラント条件付け」の知識が絶対に必要です。まだあやふやな方は、犬のしつけの基本理論を熟読してマスターしましょう。
 簡単に復習すると以下です。
犬の条件付け
  • 古典的条件付け無関係な二つの刺激を関連付けて覚えること。ごほうびや罰は必須ではない。新たに記憶させたい刺激は、生理的反応の直前に提示する。→より詳しく
  • オペラント条件付けある特定の行動と快や不快を関連付けて覚えること。ごほうびや罰が必要。ごほうびや罰は、新たに記憶させたい行動の直後に提示する。→より詳しく

ごほうび

 犬が快感を感じるごほうびを用意します。罰は必要ありません。
 犬に直接快を与える「一次強化子」としては、犬が大好きで、かつ低カロリーのトリーツを用います。犬に間接的に快を与える「二次強化子」としては、ほめ言葉やクリッカーを用います。クリッカーに関しては犬に対する有効性が科学的に証明されていませんので、煩雑に感じる方はほめ言葉を優先的に使用して下さい。
 またごほうびの効果を高めるため、犬をやや空腹状態にしたほうがベターです。

気の散らない環境

 犬の集中力を高めるため、テレビなど余計な音を消し、おもちゃも片付けるようにします。
 また犬の集中力は10~15分程度が限度です。犬が注意散漫になってきたら、ストレスになってしまう前に、いさぎよくその日のトレーニングは中断します。

犬にコーナーを教える手順

 以下でご紹介するのは、犬に「コーナー」を教える際の具体的な手順です。

ターゲットを鼻で触らせる

 まず、付箋紙(ポストイット)をターゲットとして決めます。そして、床に置いた付箋紙に、犬が鼻で触れたらごほうびをあげるという練習を繰り返します。ごほうびを持った手を付箋紙の上におき、犬が顔を近づけるように誘導してみましょう。鼻がしっかりと触れていないときや前足で触ったときは、ごほうびを与えないようにして下さい。 付箋紙に鼻で触れるといいことがあると覚えこませる
しつけポイント  このステップは「付箋紙に鼻で触れる」という行動と「ごほうび」という快感を結び付ける「オペラント条件付け」です。ごほうびは、犬の鼻が付箋紙に接した瞬間に与えるようにします。

時間を延ばす

 犬が「付箋紙に鼻で触れる」という動作に慣れてきたら、今度は触っている時間を徐々に延ばしていきましょう。ごほうびを持った手を付箋紙の上に置き、犬の鼻先を誘導します。そのままおあずけし、犬の鼻先が付箋紙に触れた状態をキープします。最初は1秒程度の接触で構いません。犬が慣れてきたら、2秒→3秒→4秒→・・・という具合に、接触時間をだんだんと延ばしていきます。
しつけポイント  このステップは「付箋紙に鼻先をくっつけ続ける」という行動と「ごほうび」という快感を結び付ける「オペラント条件付け」です。ごほうびは、犬の鼻先が付箋紙に接し、一定時間経過した瞬間に与えるようにします。

ターゲットを徐々に高くする

 犬が付箋紙に鼻先で触れるという動作に慣れてきたら、今度は付箋紙の位置を徐々に高くしていきましょう。床においていた付箋紙を、飼い主の膝の上→壁の低い位置→壁の高い位置という具合に移動していきます。付箋紙の移動にもかかわらず、犬が鼻先で触れてきたら合格です。 ごほうびのスイッチである付箋紙の位置を、徐々に高くしていく
しつけポイント  このステップは「高い位置にある付箋紙に鼻先で触れる」という行動と「ごほうび」という快感を結び付ける「オペラント条件付け」です。ごほうびは、犬の鼻先が付箋紙に接した瞬間に与えるようにします。

指示語と行動を関連付ける

 犬が「壁の高い位置にある付箋紙に触れる」という動作と「ごほうび」とを関連付け、スムーズに行動に移れるようになったら、今度は犬が鼻先で触れる直前に、「コーナー」など、任意の指示語を発します。犬が事前の訓練通り付箋紙に鼻先で触ったらごほうびを与えます。
 この練習を繰り返し、飼い主の「コーナー」という指示語だけで犬が付箋紙に鼻先をくっつけるようになったら成功です。
しつけポイント  このステップは「コーナー」という指示語と「高い位置にある付箋紙に触れる」という行動を結び付ける「古典的条件付け」です。指示語は、犬の鼻先が付箋紙に触れる直前に発するようにします。

ターゲットを小さくする

 犬が「コーナー」という指示語を完全にマスターしたら、今度はターゲットの大きさを徐々に小さくしていきましょう。付箋紙を1センチメートル刻みで小さくしながら壁に貼り、「コーナー」と指示を出します。犬が鼻先で触ってくれたら成功です。もし犬が戸惑うようでしたら、もう一度付箋紙の大きさを元に戻します。
しつけポイント  このステップは「小さな付箋紙に鼻先で触る」という行動と「ごほうび」という快感を結び付ける「オペラント条件付け」です。ごほうびは、犬の鼻先が付箋紙に接した瞬間に与えるようにします。

ターゲットをなくす

 犬が「小さな付箋紙に鼻先で触る」という動作に慣れてきたら、今度はターゲットをなくしてみましょう。今まで使っていた付箋紙を取り外し、「コーナー」とだけ指示を出してみます。付箋紙がないにもかかわらず、犬が壁に鼻をくっつけたら合格です。 犬が指示語に従って壁に鼻を押し付けるようになれば合格
しつけポイント  このステップは「壁に鼻先で触る」という行動と「ごほうび」という快感を結び付ける「オペラント条件付け」です。ごほうびは、犬の鼻先が壁に接した瞬間に与えるようにします。

指示語の直前にハンドシグナルを見せる

 犬が「コーナー」という指示語を完全にマスターしたら、次は指示語を発してごほうびを与える直前に「壁を指差す」など任意のハンドシグナルを出してみます。指示語とハンドシグナルを同時に教えるよりも、いったん「コーナー」という指示語を完璧にマスターしてからハンドシグナルを教えた方が効果的です。犬が壁に鼻をくっつけたらごほうびを与えます。
しつけポイント  このステップは「壁を指差す」という視覚的刺激と「コーナー」という聴覚的指示語を結びつける「古典的条件付け」です。ハンドシグナルは、指示語の直前に提示するようにします。

指示語やシグナルだけを出してみる

 上記しつけを一通り終えたら、最後の仕上げとして指示語とハンドシグナルだけを出してみます。「コーナー」と言ったとき、犬が自発的に壁に鼻先をくっつけてくれたら成功です。「指示語だけ」、「ハンドシグナルだけ」、「場所を変えて」など、徐々にハードルを上げて試してみましょう。
 もしキョトンとして何もしてくれないようでしたら、まだ行動と指示語のリンクが足りません。指示語と行動を関連付けるに戻り、もう一度古典的条件付けをやり直します。
「コーナー」の教え方
 以下でご紹介するのは、犬に「コーナー」(naughty corner)を教えるやり方をまとめた動画です。英語ですが、内容はほぼ上で解説したとおりに進行します。 元動画は→こちら