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米ぬか~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「米ぬか」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?

米ぬかの成分

 米ぬか(rice bran)とは茶色がかった玄米を真っ白な精白米に搗精(とうせい)する際に生じる副産物のことです。具体的には米の胚芽、果皮、種皮、糊粉層が含まれます。 ドッグフードの成分として用いられる「米ぬか」  米ぬかから絞った油脂は「こめ油」(米ぬか油)として利用され、油を搾り取った後のかすは飼料や肥料として転用されます。
 米ぬかの重要性が認識されるようになったのは19世紀のころです。研究所で飼育されていたニワトリの飼料を玄米から白米に切り替えた途端、病気を発症しだしたことから、米の表面にある茶色い層には何か重要な成分が含まれているに違いないと考えられるようになり、1900年代に入ってからは家禽の飼料に含まれるようになりました。
 しかし米ぬかの部分だけを取り出して貯め込むと、中に含まれるリパーゼなどの影響で酸化してすぐに悪臭を発するようになることから、長い間廃棄されるだけの不要物として扱われていました。
 2000年代の初頭になると、米ぬかを化学的に安定させる技術が開発され、家畜の飼料やペットフードの中にも含まれるようになりました。米ぬかに含まれる生物活性化合物と主な作用は以下です出典資料:Elizabeth P. Ryan, 2011
米ぬかの含有成分と主な作用一覧
  • フェルラ酸抗酸化作用 | 化学予防剤 | 抗炎症作用 | 脂質低下効果
  • γ-オリザノール抗酸化作用 | 化学予防剤 | 抗炎症作用 | 脂質低下効果
  • イノシトール-6-リン酸がん細胞の成長とシグナリングの阻害
  • カンペステロール血管新生抑制
  • β-シトステロールコレステロールブロック
  • リノレイン酸抗炎症作用
  • αトコフェロール脂質の過酸化 | 細胞内シグナリングの阻害
  • トコトリエノール脂質の過酸化 | 細胞内シグナリングの阻害
  • サリチル酸抗炎症作用
  • カフェー酸腸内細菌との相互作用
  • クマル酸抗変異原 | 抗酸化作用 | 化学予防剤 | 細胞サイクルの阻害
  • トリシン抗変異原 | 抗酸化作用 | 化学予防剤 | 細胞サイクルの阻害
 米ぬかに含まれる繊維を人が摂取した場合、血中コレステロールの低下や胃がん予防に対する効果が示されています。しかし逸話的に語られる便秘、高血圧、糖尿病への効果に関してはデータ不足により有効性が実証されていません。ペットフードに含まれるようになった背景にあるのは、「人間やげっ歯類で効果があったのなら、犬や猫にも同じ効果があるだろう」という仮定です。

米ぬかは安全?危険?

 米ぬかを犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのは米ぬかに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

フィチン酸

 フィチン酸(phytic acid)はミオイノシトールの6個の水酸基がすべてリン酸エステル化した物質。「イノシトール6リン酸」(IP6)とも呼ばれます。またフィチン酸にマグネシウム、カリウム、カルシウムなどが結合した塩の混合物は「フィチン」と呼ばれます。
 米ぬかやトウモロコシの種子から得られたフィチン酸は、日本では厚生労働省によって既存添加物の酸味料製造用剤として認められています。また脱脂した米ぬかから得られた、フィチン酸及びペプチドを主成分とするものは特に「コメヌカ酵素分解物」と呼ばれ、既存添加物の酸化防止剤として認可されています。
 ラットを対象として行われた反復投与毒性試験において、フィチン酸の無毒性量(NOAEL)は経口摂取で体重1kg当たり1日300mgと推計されています。また変異原性や催奇形性は認められていません出典資料:医薬食品局食品安全部

イノシトール

 イノシトール(Inositol)は、フィチン酸の加水分解により調製される環状多価アルコールの一種。動物体内ではイノシトールまたはイノシトールリン酸の形で、主に脳、腎臓、性腺、肝臓、心臓、血液、眼球、甲状腺などの細胞膜に存在しています。人間においては、多嚢胞性卵巣症候群、強迫性障害、パニック症候群に対する有効性が示唆されています。
 イノシトール(イノシット)は日本では厚生労働省によって既存添加物の強化剤に認可されています。定義は「フィチン酸を分解したものより、又はアカザ科サトウダイコン(Beta vulgaris LINNE var.rapa DUMORTIER)の糖液又は糖蜜より、分離して得られたもの」です。
 EFSA(欧州食品安全機関)が2016年に行った安全性の見直しでは、家畜動物の乾燥飼料1kg中3,000mg(3g)までは安全だろうとの見解を示しています。ただしエビデンスが欠落しているため、添加による健康増進効果まではわからないとも出典資料:EFSA

ヒ素

 ヒ素(砒素)は原子番号33の重金属の一種。急性毒性としては吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、ショック、最悪の場合は死。慢性毒性としては皮膚の角化や色素沈着、骨髄障害、末梢性神経炎、黄疸、腎不全などが確認されています。また国際がん研究機関(IARC)では、単体のヒ素および無機ヒ素化合物がグループ1(=ヒトに対して発がん性が認められる)、そして無機ヒ素の代謝物であるモノメチルアルソン酸MMA(V)とジメチルアルシン酸DMA(V)をグループ2B(ヒトに対して発がん性を有する可能性がある)に分類しています。
 お米を実らせる稲は他の穀物に比べて組織中にヒ素を蓄積しやすい性質を持っています。ここで心配になるのが、ヒ素が蓄積した「糠」を高濃度で摂取して果たして大丈夫だろうかという点です。2012年にアメリカの独立系レビュー雑誌「コンシューマレポート」が223種類のお米商品を対象としたヒ素濃度調査を行った所、「同じメーカーの商品でも白米より玄米の方がヒ素濃度が高かった」と報告されています。こうした事実から考えると、やはり「糠」の層にヒ素が蓄積していることは間違いないようです。
 日本国内で流通しているペットフードに関してはペットフード安全法によりヒ素の上限値が「15μg/g」と定められています。検査はFAMIC(農林水産消費安全技術センター)が定期的に抜き打ち検査を行っているものの、検査項目は年によってまちまちで、ヒ素が調べられるのは全体の1/3程度に過ぎません。ペットフードが海外で製造されている場合は注意が必要です。
米ぬかの安全性(危険性)に関するより詳しい内容は「犬や猫のペットフードに含まれる米とヒ素の危険性」をお読みください。