トップ犬の食事ドッグフード成分・大辞典穀類米(玄米・ライス)

米(玄米・ライス)~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「米(玄米・ライス)」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

米(玄米・ライス)の成分

 米(玄米・ライス)とは稲から収穫される籾(もみ)のことで、世界三大穀物の一つに数えられています。主成分は炭水化物に属する「でんぷん」で、一般的なラベル表記例は以下です。
ドッグフードのラベルでよく見る米の表記例
ドッグフードの成分として用いられる「米(玄米・ライス)」
  • 米・白米「白米」とは玄米から糠と胚芽を削り取った状態の米です。一般的に私たちが口にしているお米をイメージすればわかりやすいでしょう。同じカテゴリに属する表現としては「精製白米」「ライス」「粗びき米」などがあります。
  • 玄米「玄米」とは果実の外側を包んでいる籾殻(もみがら)だけを取り去った状態の米です。この時点ではまだベージュ~淡褐色のくすんだ色をしています。色の元になっている糠(ぬか)にはビタミン、ミネラル、食物繊維が多く含まれるため、あえてこの状態のまま食用にすることもあります。同じカテゴリに属する表現としては「玄米粉」「ひきわり玄米」などがあります。
  • 醸造用米「醸造用米」とは日本酒を醸造するときに使われる特殊なお米のことで、通常の食用米とは区別されます。タンパク質や脂肪分が少ないのが特徴です。
  • 中白糠「中白糠」(ちゅうしろぬか)とは玄米を85%だけ精米し、白米の一歩手前にとどめた状態を指します。

米(玄米・ライス)は安全?危険?

 米(玄米・ライス)を犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのは米(玄米・ライス)に関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

犬とお米の消化性

 犬に米を給餌したときの消化吸収率がいくつかの実験で報告されています。例えば以下は、米を主体としたフードを犬に給餌したときの総消化管における見かけの消化吸収率です。薄いオレンジのグラフはフィンランドの調査チームが7頭のそり犬を対象とし、米をフードの乾燥重量中30%の割合で含んだものを2週間に渡って給餌した結果(Kempe, 2004)。濃いオレンジのグラフはサンパウロ州立大学の調査チームが6頭の犬(平均3歳 | 12.5kg)に対し、米由来のでん粉を45%含んだフードを給餌したときの結果です(Carciofi, 2008)
犬の米消化吸収率
犬における米の消化吸収率一覧グラフ
  • 乾燥物✓そり犬(7頭)=81.7
    ✓中型犬(6頭)=82.4%
  • 有機物✓そり犬(7頭)=87.9%
    ✓中型犬(6頭)=88.4%
  • 粗タンパク質✓そり犬(7頭)=79.7%
    ✓中型犬(6頭)=89.0%
  • でん粉(糖質)✓そり犬(7頭)=90.8%
    ✓中型犬(6頭)=99.3%
  • 脂質✓そり犬(7頭)=94.2%
    ✓中型犬(6頭)=89.0%
 糖質、脂質、タンパク質の3大栄養素を、ほぼ80~90%の割合で消化吸収できていることがうかがえます。一方、別の給餌試験では炭水化物の供給源としてのお米はフード全体の消化率を高めるものの便をやや緩くしてしまう可能性が指摘されています。
 この試験では16頭の犬を対象とし、栄養素の割合は同じだけれども炭水化物の供給源だけが異なる3種類のフードが給餌されました出典資料:Twomey, 2002, 2003。具体的には「もろこし(ソルガム)由来」「コーン由来」「米由来」の3種です。
 その結果、便のゆるさを示す糞便スコアに関してはすべて正常範囲内だったものの、お米由来の炭水化物フードではやや緩くなる傾向があったといいます。消化性に関しては、デンプンの消化率に格差が見られなかったことから、一般的に消化が悪いとされるもろこしやコーンでもエクストルード製法により十分消化可能な形に加工されていることが示されました。
 一方、タンパク質と脂質、およびフード全体の可消化エネルギーに関しては、お米由来の炭水化物フードが最も高いという結果になりました。
 調査チームは犬のうんちがゆるい場合、炭水化物をお米からモロコシやコーンに切り替えた方が良いと推奨しています。ただし代償として、乾燥重量1kg当たりの消化率が0.3~0.8 MJ DEほど落ちるとも。

ヒ素

 ドッグフードのラベルに記載されているのが「白米」だろうと「玄米」だろうと、水田で育てられるという性質上、水や土壌から吸い上げた発がん性物質「ヒ素」を蓄積しやすいという事実は変えられません。
 お米を実らせる稲は、他の穀物に比べて組織中にヒ素を蓄積しやすい性質を持っています。理由の一つは、稲の根が間違って土壌からヒ素を吸収してしまうから。そしてもう一つは、水田環境に含まれるヒ素が5価のヒ酸から3価の亜ヒ酸に還元され、植物に吸収されやすい形に変化してしまうからです。その結果、吸収されたヒ素が根、茎、籾殻、糠、白米全体に分布し、少しずつ蓄積されていきます。
 日本国内で流通しているペットフードに関してはペットフード安全法によりヒ素の上限値が「15μg/g」と定められています。検査はFAMIC(農林水産消費安全技術センター)が定期的に抜き打ち検査を行っているものの、検査項目は年によってまちまちで、ヒ素が調べられるのは全体の1/3程度に過ぎません。
 ペットフードが海外で製造されている場合はさらに注意が必要です。海外産のペットフードに米、玄米、ライスと記載がある場合、少なくとも輸入業者が独自の受け入れ規格を設定し、ペットフード安全法が定めるヒ素やその他の重金属の濃度チェックをしておく義務があります。
ドッグフードに含まれるヒ素の危険性に関しては「犬や猫のペットフードに含まれる米とヒ素の危険性」でも詳しく解説してありますので参考にしてください。