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夏場の散歩で避けたい犬の熱中症危険エリア

 犬と散歩している際、地表との距離だけでなく地表の材質が変わることによって人間と犬の体感温度には差が生まれます。では具体的に地面がどのような材質のとき最も温度が上がり、犬の熱中症リスクを高めてしまうのでしょうか?

地表の材質と熱中症リスク

 調査を行ったのはアメリカにあるノーステキサス大学地質環境学部のチーム。6月5日と8月10日の2回に分けて30箇所の温度を定点計測すると同時に、さまざまな材質における日の出から日没までの日内温度変化を定時計測しました。

定点計測

さまざまな材質で構成される地表
2020年6月5日
6月5日AM8:00PM4:00
コンクリ27.9℃51.0℃
27.3℃39.4℃
チップシール28.7℃52.7℃
タール30.7℃60.2℃
  • AM8:00気温:25.6℃→27.7℃/湿度:74%/地面はしっとり
  • PM4:00気温:34.9℃→35.0℃/湿度:47%/地面はしっとり
2020年8月10日
8月10日AM8:00PM4:00
コンクリ29.8℃52.2℃
28.0℃41.9℃
チップシール30.6℃52.9℃
タール31.6℃59.1℃
  • AM8:00気温:27.7℃→28.2℃/湿度:76%/地面は乾燥
  • PM4:00気温:35.6℃→36.1℃/湿度:39%/地面は乾燥

定時計測

 計測日は2020年8月30日。前日に雨が降り、午前は曇り、午後は晴天というコンディション。日の出から日没までの間、2時間おき10種類の材質のそばにある空気温を計測し、上下動を定時的に記録しました。 さまざまな材質と周辺外気の日内変化 さまざまな地表材質一覧 Warm air leads to hazardous ground temperatures when walking dogs in built and natural environments
Pet Behaviour Science 2022, Vol. 12, Paul F. Hudak, DOI:10.21071/pbs.vi12.13733

危険の少ない散歩ルートを!

 定点計測と定時計測を通じ、地表付近の外気温を高める因子がいくつか見えてきました。
外気温上昇リスク
  • 時間帯午前<午後
    午前中よりも午後の方が外気温が高くなります。太陽光によって照らされている時間が長くなればなるほど温度が高くなるのは当然です。
  • 地表の材質明るい色の材質<黒っぽい材質
    黒い服を着て夏日に外を歩くと熱がこもる事は誰しも経験したことがあるでしょう。明るい色よりも暗い色の方が熱を吸収しやすいために起こる現象です。
  • 材質の比熱比熱が大きい<比熱が小さい
    素材の温度を1℃高めるのに要する熱量を比熱といいます。水や水分を多く含む植物は比熱が大きいため熱を吸収しやすく、結果として周辺外気温が低くなります。
  • 日光の遮蔽日陰<日向
    直射日光が当たる場所の方が外気温が高くなります。同じ理屈で曇りの日より晴れの日の方が暑くなります。
 コンクリート、アスファルト、砂、石といった素材は正午以降に50~60℃にまで高まることが明らかになりました。哺乳動物の皮膚は44℃を超える温度に長時間耐えることができませんので、日中の散歩を避け、日陰や緑地を選びながら歩くよう努めて犬の熱中症や肉球の火傷に気をつけていきましょう。
まっとうな飼い主がいる一方、カンカン照りの真夏日に長毛のシェルティーを散歩に連れ出し、自分だけ日傘をさしてすまし顔をしているような飼い主もいます。明白な動物虐待ですので、もし見かけたら声をかけたいところです。犬の熱中症はこう防ぐ!