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犬の白内障は「未熟」の段階で予防するのがベスト

 犬の白内障は症状が進行すればするほど治療が難しくなる病気。では一体どのタイミングで外科手術を始めとした医療的な介入を行うのがベストなのでしょうか?検証が行われました(2018.8.30/ドイツ)。

詳細

 調査を行ったのはドイツにあるルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのチーム。動物病院において白内障と診断された犬たちの医療データを後ろ向きに調査し、病気のステージによってどの程度進行度に違いが見られるのかを検証しました。合計250頭の447眼を精査したところ、以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。
白内障のステージ
犬の白内障は初期→未熟期→成熟期→過熱期の順で進行する
  • 初期白内障水晶体の一部がうっすらと濁っている状態。
  • 未熟白内障水晶体の一部が白濁している状態。
  • 成熟白内障水晶体全体が完全に白濁した状態。
  • 過熱白内障水晶体の白濁が進行し、融解が起こった状態。眼球の中に融けた残存物を見ることができる。
白内障の原因
犬の白内障~原因の定義と割合
  • 老年性小型犬10歳以上、大型犬6歳以上をボーダーラインとする
  • 糖尿病持病として糖尿病がある
  • 二次性ブドウ膜炎緑内障、原発性水晶体不安定、網膜変性が先行している
  • 先天性水晶体の肥厚性血管膜、肥厚性の硝子体、水晶体欠損症、円錐水晶体、球形円錐水晶体など
  • 外傷性眼球全体に強い力が加わったものは「打撲性」、眼球に穴が空いてしまったものは「穿孔性」
  • 放射線悪性腫瘍の治療など頭部に放射線を照射した
  • 遺伝性上記したどれにも当てはまらない
白内障の進行度
  • 遅い進行「未熟」「成熟」「過熱」という各ステージをさらに「前期」「中期」「後期」というサブステージに細分したとき、1年でサブステージ1つ進行する状態
  • 中等度の進行1年でサブステージ2つ進行する状態
  • 早い進行1年でサブステージ3つ以上進行する状態
犬の白内障の病因と「進行なし」の割合 犬の白内障の病因と「遅い進行」の割合 犬の白内障の病因と「中等度の進行」の割合 犬の白内障の病因と「早い進行」の割合
Progression and complications of canine cataracts for different stages of development and aetiologies
M.C. Fischer et al., Journal of Small Animal Practice (2018), DOI: 10.1111/jsap.12910

解説

 全体平均で見たとき、半数を超える55.4%は非進行型、遅い進行が37.5%、中等度の進行が4.4%、早い進行が2.7%という内訳になりました。また白内障に伴う合併症はおよそ10%で確認され、最も多かったのはブドウ膜炎だったといいます。

遺伝性白内障

 全体のおよそ半分にあたる48.9%を占めていた遺伝性白内障は、その半数(52.9%)が非進行型でしたが、残りの半数では大なり小なりの進行が見られました。ブドウ膜炎を始めとする合併症を予防するため、外科手術に備えておくことが重要だと推奨されています。

外傷性白内障

 外傷性白内障に関しては、打撲よりも穿孔の方が合併症につながりやすいことが明らかになりました。眼球に穴が空くことによって内部のタンパク質が漏れ出し、水晶体が崩壊してブドウ膜炎、水晶体の不安定化、網膜剥離などにつながると推測されています。放置すると最悪のケースでは失明してしまうため、長期にわたる慎重なモニタリングが必要とされています。

糖尿病性白内障

 糖尿病性白内障は79.5%が成熟もしくは過熱状態で、その多くは早急な水晶体除去が必要だったといいます。また水晶体が残された15眼のうち13.7%が早い進行を見せたとも。過去の報告では糖尿病と診断された犬のうち50%が170日以内、80%が470日以内に白内障を発症するとされています。高血糖状態をコントロールできていれば進行を抑えられるという報告もありますので、糖尿病の犬においては飼い主による血糖コントロールが重要となるでしょう。進行が早いため、ひとたび発症した場合は水晶体除去を含めた外科的な介入を覚悟しなければなりません。

網膜変性白内障

 網膜変性に伴う白内障では水晶体脱臼(3/35)や緑内障(7/35)など痛みを伴う合併症が見られました。網膜変性によって水晶体の透過性が増加し、酵素が漏出して水晶体脱臼や緑内障を引き起こしているものと推測されます。長期的モニタリングと外科手術を含めた医療的介入が望ましいとされています。

病期ステージ別

 病期ステージ別に比較した場合、成熟や過熱期よりも初期や未熟期における合併症が少ない傾向を見せました。さらに未熟期を前中後の3期に細分したとき、前期のブドウ膜炎が最も軽症だったといいます。こうした事実から調査チームは、医療的介入を行うタイミングは硝子体の変性や水晶体脱臼緑内障といった合併症に至る前段階の未熟前期からスタートするのがよいと推奨しています。
 飼い主が毎日同じ場所+同じ時間に犬の眼球を写真で記録しておけば、黒目部分の微妙な濁りにもいち早く気づくことができるでしょう。 犬の白内障