詳細
包括レビューを行ったのは、イスラエル・ネタニヤにあるスポーツ複合施設「Wingate Institute」のGal Ziv氏。文献データベース「Google Scholar」、「PubMed」、「Scopus」の中から、2016年までに発表された研究報告のうち2つ以上の訓練法を直接的に比較したものを選び出し、犬の行動や福祉にどのような影響を及ぼしたのかを検証しました。調査対象として選抜された17の記事を「訓練法の比較検討」、「訓練法と犬同士の攻撃性」、「電気ショックのもたらす影響」、「嫌悪刺激が犬の身体にもたらす影響」といった観点でまとめていったところ、犬に苦痛やストレスを与える「嫌悪刺激」を用いた訓練法の特徴として、以下のような項目が浮かび上がってきたと言います。
Ziv, G., Journal of Veterinary Behavior (2017), doi: 10.1016/j.jveb.2017.02.004.
嫌悪刺激が犬にもたらす影響
- 犬の恐怖心、攻撃心、問題行動を増加させる
- 犬の行動や福祉に悪影響を及ぼし得る
- 他の方法より効果的であるという証拠は何ひとつ見つからない
- 訓練とは無関係な状況でもストレス関連行動を見せるようになる
- 身体に物理的な障害を与えうる
Ziv, G., Journal of Veterinary Behavior (2017), doi: 10.1016/j.jveb.2017.02.004.
解説
ペット動物の問題行動修正を職業とする人たちから成る「AABP」(アニマルビヘイビア協会)では、「倫理的ヒエラルキー」(LIEBIモデル)という考え方を用いて訓練法に優先順位をつけています。具体的には以下です(→出典)。
強化刺激を用いても嫌悪刺激を用いても、犬の行動を修正できる事は確かです。しかし「吠えるのをやめたらご褒美がもらえる!」というワクワクした心理状態と、「吠えると電気ショックが加えられる…」という戦々恐々とした心理状態とでは雲泥の差があります。犬の福祉を損なわない方法があるならば、そちらを優先的に選びたいものです。基本事項は以下のページにまとめてありますのでご参照ください。 なお以下は、今回のレビューで調査対象となった17の文献一覧です。残念ながら邦訳はありませんが、英語の基本文法さえ理解していれば読めないことはありません。簡単に言うと、時代は「知らなかった」とか「英語が苦手」ではもはや済まされない段階に来ているということです。
倫理的ヒエラルキー
- 遠くの先行条件を調整する「遠くの先行条件」とは、ある問題行動を誘発する間接的なきっかけのこと。例えば郵便配達人に吠えてしまう犬にとっての「バイクの音」など。
- 近くの先行条件を調整する「近くの先行条件」とは、ある問題行動を誘発する直接的なきっかけのこと。例えば、郵便配達人に吠えてしまう犬にとって「窓の外に見える郵便配達人の姿」など。
- 正の強化「正の強化」とは、犬にとってご褒美となるようなものを与えて行動頻度を高めること。例えばお座りをしたらジャーキーを与えるなど。
- 分化強化「分化強化」とは、問題行動以外の行動をとったときにご褒美を与えることで、「問題行動をとるとご褒美はお預けになる」ことを学習させること。例えば、無駄吠えを止めたタイミングで褒めてあげるなど。
- 負の弱化「負の弱化」とは、ある問題行動をとったタイミングでそれまで与えていたご褒美を取り去ること。例えば、かまってほしくてワンワン吠え始めたタイミングで無視するなど。
- 正の弱化「正の弱化」とは、ある問題行動をとったタイミングで、犬にとって苦痛やストレスとなる嫌悪刺激を与える事。例えば、かまってほしくてワンワン吠え始めたタイミングで首輪から電気ショックが流れるなど。
強化刺激を用いても嫌悪刺激を用いても、犬の行動を修正できる事は確かです。しかし「吠えるのをやめたらご褒美がもらえる!」というワクワクした心理状態と、「吠えると電気ショックが加えられる…」という戦々恐々とした心理状態とでは雲泥の差があります。犬の福祉を損なわない方法があるならば、そちらを優先的に選びたいものです。基本事項は以下のページにまとめてありますのでご参照ください。 なお以下は、今回のレビューで調査対象となった17の文献一覧です。残念ながら邦訳はありませんが、英語の基本文法さえ理解していれば読めないことはありません。簡単に言うと、時代は「知らなかった」とか「英語が苦手」ではもはや済まされない段階に来ているということです。
訓練法と犬への影響
- Roll and Unshelm, 1997
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→原文リンク - Blackwell et al., 2008
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→原文リンク - Herron et al., 2009
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→原文リンク