トップ2016年・犬ニュース一覧11月の犬ニュース11月17日

犬用のストレス軽減アイテム「Pet Remedy®」(ペットレメディ)の効果は本物か?

 犬のストレスを軽減するという名目で売られている商品「Pet Remedy®」が、本当に有効かどうかを確かめるための検証実験が行われました(2016.11.17/イギリス)。

詳細

 調査を行ったのは、イギリス・ハートプリー大学とエクセター大学からなる共同チーム。見知らぬ環境で不安の兆候を示すことが飼い主によって報告されている犬28頭を対象とし、抗ストレス効果があるとして英国内で市販されている「Pet Remedy®」が漂っている部屋と、犬に対して何の効果もない揮発性物質だけが漂っている部屋における行動の変化を観察しました。犬および商品に関する基本情報は以下です。
調査対象犬
  • 平均年齢4.64歳(12ヶ月齢~11歳)
  • オス犬13頭(去勢済10頭)
  • メス犬15頭(避妊済12頭)
  • ミックス犬5頭
  • 小型から大型の純血種23頭
  • 保護施設出身16頭
Pet Remedy®
 イギリスの「Unex Designs Ltd.」が発売している商品で、有効成分はユーラシア原産のオミナエシ科カノコソウ属「バレリアン」(valerian)。この成分は、抑制性の神経伝達物質GABAの生成を促したり、分解を阻害することで抗ストレス効果を示すと推測されている。少なくともげっ歯類においてはGABAレセプターとバレレニン酸およびバレニノールとの親和性が確認されている。 Pet Remedy Pet Remedyには有効成分としてバレリアンが含まれている
 調査チームはエクセター大学心理学部の施設内に3m²の部屋と木製の檻(2.43m²)、プラスチック製のベット、毛布を用意し、犬に対するストレッサーとしました。犬にとってなじみのない物品や空間が、恐怖心や不安感をあおってくれるという狙いです。そして2013年3月から7月までの12週間を利用し、およそ7日間の間隔をあけて犬が施設を2回訪問するというシチュエーションを設けました。各訪問における設定は以下です。
二重盲検試験
  • 偽薬回揮発性物質MMB(3-Methoxy-3-Methyl-1-Butanol)だけがディフューザーによって空気中に放散されている。
  • レメディ回抗ストレス効果を有するとされるエッセンシャルオイル(バレリアン・ベチバー・バジル・セージ)を5.37%含んだ液体が、ディフューザーによって空気中に放散されている。
 犬が入室する30分前にディフューザーのスイッチを入れ、入室してから30分間の様子を録画観察し、事前に決められた基準に則って犬が見せる行動を23のカテゴリーに分類しました。その結果、「Pet Remedy®」は犬の行動頻度や持続時間に何の影響も及ぼしていないことが明らかになったといいます。ただ唯一、「ため息をつく」という行動だけが「レメディ回」において減少傾向を示したとも。
 こうした結果を受け調査チームは、「Pet Remedy®」には少なくとも見知らぬ環境に置かれた犬のストレスを軽減する効果は無いようだとの結論に至りました。
The Effect of Pet Remedy on the Behaviour of the Domestic Dog (Canis familiaris)
Sienna Taylor, Joah Madden, Animals 2016, 6(11), 64; doi:10.3390/ani6110064

解説

 「レメディ回」において唯一見られた特徴は「ため息をつく回数が減った」というものでした。人間における「ため息」はストレスや不満の現れと解釈されますが、この解釈を犬の世界に持ち込むのはやや早計なようです。ため息の多さをストレスの指標とする見方がある一方(→出典)、深い呼吸の増加をリラックスモードの指標とする見方があるため(→出典)、「ため息が減った→犬のストレスが軽減した」という単純な図式で解釈することには疑問が残ります。そもそも「レメディ回で減少傾向が見られた」というだけで、統計的に有意とまではいかなかったため、ストレスの増減とは無関係とみなした方が妥当なのかもしれません。
 今回の調査を支援したのは、「Pet Remedy®」を販売している「Unex Designs Ltd.」自身でした。お金を払ってわざわざ商品の有効性を否定するという結果になってしまいましたが、お金を払って商品の広告記事を書かせたり、御用学者から好意的な意見を引き出そうとする会社よりはいくらか好感が持てます。ちなみに「レメディ」(※Pet Remedy®とは別物)と呼ばれる成分を用いる民間療法「ホメオパシー」に関しては、日本獣医師会が明確に反対の姿勢を示しています。詳しくは以下のページをご参照ください。 犬のホメオパシーについて