トップ2016年・犬ニュース一覧5月の犬ニュース5月18日

犬の酔い止めには耳ツボ鍼治療が有効

 車酔いする犬を対象とした調査により、耳ツボを鍼で刺激すると症状が軽減するという可能性が示されました(2016.5.18/日本)。

詳細

 報告を行ったのは、鹿児島大学と麻布大学の共同チーム。車に乗って移動する機会が多い犬では、人間と同様「流涎」(よだれ)、「嘔吐」、「元気消失」といった乗り物酔いの症状を示すことがよくあります。従来の対処法としては、乗り物に慣れさせる、車内臭を消す、乗車前の食事を控える、酔い止め薬を処方してもらうといったものが主流でしたが、「犬によって効果が一様ではない」とか「副作用の危険性がある」といった難点を抱えていました。そこで今回の調査がターゲットとしたのが、副作用をほとんど伴わない鍼治療がもつ酔い止め効果の可能性です。
 調査チームは、乗り物酔いしやすい犬11頭(犬種バラバラ・4ヶ月~11歳・オス5+メス6)に対して「円皮鍼」と呼ばれる貼り付けタイプの鍼を、耳の先端にある「耳尖」(じせん)というツボに装着し、治療の前後における症状の有無を比較しました。その結果、すべての犬において症状の改善が見られ、悪化したものは1例もなかったと言います。
 こうした結果から研究チームは、犬に対する耳ツボ鍼刺激は、副作用を招くことなく酔い止めを防止することができる優れた治療法であるとの可能性を示しました。今後は偽薬効果の検証やストレスマーカーのモニタリングを行い、さらにエビデンスを蓄積していきたいとしています。 犬の輸送ストレス軽減のための新規鍼治療の試み

解説

 「円皮鍼」とは、直径0.20mm、長さ1.5mmのステンレス鋼でできた極小の鍼です。粘着テープで貼り付け、ツボ(経穴)に対して持続的な刺激を与えることができるとされています。 セイリン円皮鍼「バイオネックス」 セイリンから発売されている円皮鍼「バイオネックス」  鍼治療の理論的根拠としては、耳介に鍼刺激を加えることにより、第五脳神経(三叉神経)を介した求心性刺激が視床下部や迷走神経に連動し、消化管の活動を抑制したり、リラックス効果を生んだものと想定されています。
 今回の調査では、犬が耳を掻いたり気にする素振りを見せなかったため、人間と同様、ほとんど痛みを引き起こしていないと推測されました。また耳ツボの場所さえ分かっていれば簡単に施術できることから、今後は投薬治療に代わる酔い止めのスタンダードとして定着していくかもしれません。 犬とのドライブ 犬の耳尖は耳介尖端の外面血管上の1~3穴