トップ2016年・犬ニュース一覧4月の犬ニュース4月18日

トイプードルの「進行性杆体錐体変性症」(PRCD)関連遺伝子

 夜盲症や失明を招くことで知られている「進行性杆体錐体変性症」(PRCD)のトイプードルにおける原因遺伝子保有率が明らかになり、この遺伝病を犬種の中から早急に駆逐する必要性が浮き彫りになりました(2016.4.18/日本)。

詳細

 「進行性杆体錐体変性症」(PRCD)は第9染色体の劣性遺伝で伝えられる遺伝病で、10以上の亜種がある「進行性網膜萎縮症」(PRA)の一つに数えられている病気。特にトイプードルに多く、3歳ごろから夜盲症の兆候を示し、早ければ5歳ごろから視力を失い始めるとされています。 正常な網膜と「進行性網膜萎縮症」(PRA)を発症した網膜の比較写真  鹿児島大学を中心とした研究チームはこのたび、日本国内で2003年から2014年の間ずっと人気犬種のTOP3を占めているトイプードルチワワミニチュアダックスフントの3犬種を対象に、上記遺伝病を生み出す「PRCD遺伝子」の保有率を調査しました。結果は以下です。なお「遺伝子頻度」とは、ある特定の対立遺伝子が含まれる割合のことで、数値が大きいほど出現頻度が高いことを意味します。
PRCD遺伝子保有率
  • トイプードル(200頭)保有率=16.5% | 遺伝子頻度=0.088
  • チワワ(57頭)保有率=3.7% | 遺伝子頻度=0.019
  • ミニチュアダックスフント(100頭)保有率=0% | 遺伝子頻度=0
 16.5%という高い保有率が見出されたことから研究チームは、トイプードルの繁殖を行っているブリーダーが責任を持って遺伝子検査を行い、関連遺伝子を保有していない犬だけを選択的に繁殖すれば、この遺伝病を犬種の中から駆逐することも十分可能であろうとしています。また、チワワで見出された3.7%という数字も決して無視できるものではなく、やはりブリーダーが責任を持って遺伝子検査をすべきとも。また、ミニチュアダックスフントでは「PRCD遺伝子」は見つからなかったものの、「RPGRIP1遺伝子」が「進行性杆体錐体ジストロフィ」という別の遺伝病を引き起こすことが知られているため、同様に事前の遺伝子検査によって繁殖犬を選別することが必要とのことです。 Real-time PCR genotyping assay for canine progressive rod-cone degeneration and mutant allele frequency in Toy Poodles, Chihuahuas and Miniature Dachshunds in Japan

解説

 「進行性杆体錐体変性症」(PRCD)の遺伝子検査は、今から10年前の2006年の時点ですでに開発されています。全てのブリーダーが責任をもって遺伝子検査を行い、原因遺伝子のキャリアを繁殖犬の中から除外する努力をしていれば、「16.5%」などという高い数字が出るわけがありません。ペットのオークション(せり斡旋)業者からなる「一般社団法人ペットパーク流通協会」は、「遺伝病の撲滅のため進行性網膜萎縮症の排除に向けた遺伝検査の啓発および実施、動物取扱業者向けにセミナーなどを開催することで知識や管理の向上への取り組みを行ってまいりました」と言っているものの、それが何の実行力も持たない上辺だけの言葉であることがお分かりいただけるでしょう。トイプードルにおける原因遺伝子の高い保有率を支えているのは、TV番組で紹介される子犬を見て衝動買いしてしまう消費者と、その需要につけ込んで無節操に繁殖を繰り返す無責任なブリーダーの存在です。
 ペットショップで安易に子犬を買う前に、まず「この子犬の親は、どのような遺伝子検査を受けていますか?」と聞いてみる必要があります。答えられない場合や、親犬がどこに住んでいるのかすら知らない場合は、もとより論外です。犬種の中から遺伝病を駆逐し、将来的な犬の苦痛を軽減してあげるためには、ブリーダーのみならず、飼い主も犬の健康に対して自覚と責任をもつことが求められます。 ペットショップで犬を買う前に Orivet(日本の遺伝子検査機関) Optigen(米の遺伝子検査機関) 商品として扱われるチラシの中の犬たち