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5月の犬ニュース

 2015年5月の犬に関するニュースをまとめました。一番上が最新で、下にスクロールするほど記事が古くなります。記事内にリンクが貼られていることもありますが、古い記事の場合はリンク切れの時がありますのでご了承下さい。

5月29日

 犬の吠え声をパターン分析したところ、かなり高い確率で、声だけから性別や置かれている状況、年齢といったステータスが予測可能であることがわかりました。
 実験を行ったのはCIG(計算知能グループ)とUPM(マドリード工科大学)の共同研究チーム。ハンガリーのブタペストで牧羊犬として働く「ムディ」と呼ばれる犬8頭(1歳~10歳/オス3+メス5)から、ある特定の状況において発せられる吠え声のサンプルを合計800セット採取しました。「特定の状況」とは、「飼い主が犬を木にくくりつけてその場から立ち去る」、「ボールで遊ぶ」、「飼い主が第三者に襲われそうになる」、「餌を貰う」、「見知らぬ人が側にいる」、「飼い主と外出の用意をする」などです。
 その後、採取したボイスサンプルをコンピューターで29の側面に分割して解析したところ、かなりの高確率で犬のステータスを予測できたといいます。具体的な正答率は、「性別→85.13%」、「若齢か老齢か→80.25%」、「置かれている状況→55.5%」、「8頭のうちどの犬の声か→67.63%」だったそうです。
 こうした実験結果から研究者たちは、犬の吠え声には非常に多くの情報が含まれており、さらに研究を進めれば、性別や年齢のみならず、犬の抱いている感情までも、音声解析から予測することができるだろうとしています。 Animal Cognition 犬の声から心を読む
声の解析実験に用いられたムディ(Mudi)

5月28日

 道端に生えているキノコは有毒である可能性があります。誤食による中毒事故にご注意ください。
 アメリカ・オレゴン州ベンドにある動物救急病院では、春先から夏にかけて急性キノコ中毒による患犬数が増えたため、急きょ飼い主に警告を出す事態となっています。道端に生えているキノコは見た目が似ているため、いったいどれに毒が含まれているのかが、素人目にはよく分からないのが原因だとか。
 一方日本では、厚生労働省が「毒キノコによる食中毒に注意しましょう」というページを設けて注意を呼び掛けています。呼び掛けは人間に対するものですが、そっくりそのまま犬に当てはめてもよいでしょう。キノコ毒の作用機序に関しては不明な部分はあるものの、人間に毒なものは、犬や猫にも毒と考えたほうが無難です。以下は毒性の強いキノコの外見ですが、基本的に犬がキノコ全般に近づかないよう注意を払っておいた方がよいと思われます。 厚生労働省 よく見かける毒キノコの外見

5月26日

 イタリアで行われた実験の結果、短頭種と長頭種の間には、ある特定の状況におけるリアクションに違いがあり、これが訓練のしやすさに影響を及ぼしているという可能性が示されました。
 実験を行ったのはイタリア・ピサ大学獣医学部の研究チーム。17頭の犬をマズルの短い「短頭種」とマズルの長い「長頭種」とに分け、「蓋付き容器の中に入ったエサを見つけた時」と「金網の中に入ったエサを見つけた時」という2つの状況におけるリアクションを観測しました。その結果、短頭種の方が概して飼い主の方を見る頻度が低く、また飼い主の方を見るまでの時間が長かったといいます。
 こうした事実から研究者たちは、「幼稚性を残したまま成熟するネオテニーという特性が犬のリアクションに変化を持たせ、これが人間との協調性や訓練性に影響を及ぼしている」という可能性を見出しました。 Dog attention and cooperation with owner

5月26日

 ワシントン州シアトルに本拠地を持つペット保険会社「Trupanion」は、2014度における保険の請求額を基に、誤飲誤食の治療費を視覚化しました。やはりのど元を過ぎると高くついてしまうようです。 犬が異物を飲み込んだ Source---Trupanion
インフォグラフ~犬の誤飲・誤食の治療費

5月25日

【アメリカ】目が不自由な仲間のため、まるで盲導犬のように付き添ってあげている2匹の犬が話題です。
 今年で10歳になる秋田犬のカイヤは、緑内障のため2013年7月に左目の視力を失いました。飼い主であるジェシカ・ヴァンハッセンさんを驚かせたのは、同居犬であるキャス(8歳)が見せた行動です。彼は絶えずカイヤに付き添い、まるでボディガードのようにカイヤの死角である右側に陣取るようになったといいます。
 それから1年ほど経過した2014年11月、カイヤの緑内障が悪化したため、今度は右目の摘出術を受けることとなりました。すると、完全に盲目になったことを察してか、カスの弟分であるケラー(2歳)もカイヤのサポートに加わるようになったといいます。2匹の犬は、フードボールに近づくときや車に乗り込むときなど、カイヤが道からそれそうなときは脇に立って動きをリードし、まるで盲導犬のように生活を補助してあげているということです。 Source---Blue Pearl Vet
カイヤに寄り沿うキャスとケラー

5月22日

 ロシアで発見された太古のオオカミの骨をDNA解析した結果、少なくともこの地のオオカミがイヌへと分化していったのが、今から4万~2万7000年前である可能性が浮上しました。
 研究を行ったのは、スウェーデン自然史博物館や米ハーバード大などからなる共同チーム。ロシア北部タイミル半島で発見された約3万5000年前のオオカミの骨からDNAを抽出し、現代の犬のものと比較解析したところ、オオカミと犬の分化が、今からおよそ4万~2万7000年前である公算が大きいことを突き止めました。また、この当時のオオカミと比較的近い遺伝子を保有しているのは、現代のそり犬やシベリアン・ハスキーだったとも。
 当研究に先立つ2013年、米カリフォルニア大などの国際チームは、犬とオオカミの分化時期に関して「3万2100~1万8800年前」との見積もりを出しています。今回の研究と数値が異なる理由は、「犬とオオカミの分化はそもそも複数箇所で起こったから」か、「どちらか一方の研究チームが間違っているから」かのどちらかです。なお、犬とオオカミの分化が一ヶ所で起こったのか複数箇所で起こったのかという疑問に関しては、まだ答えが出ていません。 犬の祖先と進化 Source---Phys.org
ロシア北部タイミル半島で発見された約3万5000年前のオオカミの骨

5月19日

 カメラの製造販売を行うNikonは、犬の心拍数が一定レベルを超えたタイミングで自動的にシャッターを切ってくれるカメラ「Heartography」の開発に成功しました。
 首輪に取り付けられた特殊なセンサーが、常時犬の心拍数をモニターし、そのデータをワイヤレスでコンピューターに飛ばします。ホストコンピューターの方で基準となる心拍数を設定しておけば、センサーが心拍数の上下動を感知し、基準値を超えたタイミングで自動的にシャッターを切ってくれるという仕組みです。撮影された写真を見れば、犬が一体何に対して興奮するのかがより鮮明に分かるようになっています。

5月18日

 イギリスのBBCで19日、ペット生体販売の闇に迫るドキュメンタリー番組「The Dog Factory」(犬生産工場)が放映される予定です。
 覆面調査官サマンサ・ポーリングが、およそ半年間に渡る潜入取材でつかんだ情報は、見る人をうんざりさせる内容のようです。番組内では、劣悪な環境で子犬を繁殖する「パピーミル」、売買を禁止されているにもかかわらず偽名を使って子犬を売る「悪徳トレーダー」、ライセンスがないにもかかわらず繁殖を行う「違法ブリーダー」など、ペット売買の裏に潜む闇が次々と明らかにされます。
 OAは5月19日(火)、チャンネルは「BBC ONE」、番組タイトルは「The Dog Factory」です。なお、残念ながら日本のテレビでは、子犬や子猫を登場させて「かわいい~!」を連発させるだけの番組が多いようです。 日本のペット産業
BBCドキュメンタリーの一場面

5月15日

 500頭の犬から集めたDNAサンプルを解析した結果、「ベルジアンマリノア」が特異的に保有している染色体上の特定部位が、糖尿病の発症抑制に関わっているらしいことが明らかになりました。
 本研究を行ったのは、スウェーデン大学とウプサラ大学の共同研究チーム。ヨーロッパ5か国から9種500頭のDNAサンプルを集め、血中フルクトサミン濃度との関連性を精査しました。「フルクトサミン」とは、血液中の糖とタンパクが結合してできる化合物で、長期にわたる血糖コントロールの指標として用いられる物質です。
 その結果、ベルジアンマリノアの染色体上に存在する特定の2ヶ所が相互作用し、糖尿病の発症を抑えている可能性があるという事実に突き当たったいいます。明確なメカニズムまでは分からなかったものの、高い身体能力を発現するよう選択繁殖されてきた中で、この2ヶ所が染色体内に偶発的に固定されたものと推測されています。研究チームは今後さらに調査を進め、新たな治療法の開発につなげていきたいとしています。 ベルジアンマリノア The Shepherds' Tale(PLOS ONE)
アジリティちゅうジャンプするベルジアンマリノア

5月14日

 アメリカ・ジョージア州アセンズで、密閉された車の中に閉じ込められた犬を救出した男性が、不法侵入の罪で逮捕されるという出来事がありました。
 複数のメディアが伝えたところによると、逮捕されたのは退役兵のマイケル・ハモンズさん。彼は12日、地元のショッピングセンターの駐車場で、1匹の小型犬が熱い車内に取り残されているのを見つけます。その他の通行人も犬の存在に気づき、素早く警察に通報しましたが、一刻を争う事態と判断したハモンズさんは、迷うことなく車の窓ガラスを破壊し、中の犬を救出しました。
 これに対し、匿名希望の車の所有者は激怒。ハモンズさんは不法侵入の罪で逮捕されるはめになってしまいました。今は釈放されたものの、訴えられた場合、最高で1,000ドルの罰金、もしくは1年の懲役刑を課せられる可能性があるとのこと。
 しかしハモンズさんは「壊れたガラスは交換できる。けれど死んでしまった犬は取り換えがきかない」とし、自分の行為を悔いている様子はないようです。なお法律上、子供や老人を救うためであれば、他人の所有物を破壊することが例外的に認められる場合があり、このケースにも適用される可能性があるそうです。また仮に裁判になったとしても、彼を罪に問う陪審員はいないだろうと見られています。 犬との生活・夏の注意 Source---BuzzFeed News
車内に取り残された小型犬

5月12日

 アメリカ・テネシー州で6日、火事の現場で意識を失っていた犬を、駆けつけた騎馬隊員が人工呼吸で蘇生させるという出来事がありました。
 火事があったのはテネシー州ラザフォード郡マーフリーズボロにあるティモニーとパムのカーリー夫妻の家。危険を察知した夫妻はいち早く逃げ出しましたが、気が動転していたせいもあり、ガレージの犬小屋にいたビションフリーゼの「アビー」を連れ出すだけの余裕はありませんでした。
 そこに駆けつけたのが、地元の騎馬隊員ジョン・レヴィさん。危機的な状況を察知したジョンさんは、急いでガレージに入って意識朦朧としたアビーを犬小屋から引きずり出し、犬や猫に対して人工呼吸を行う時のセオリーである「マウスツーノーズ」を行いました。その結果アビーは息を吹き返し、急いで動物病院に搬送して一命をとりとめることができたそうです。
 一躍ヒーローになったジョンさんは「いいタイミングで駆けつけることができてよかった」と語っています。 犬の心肺蘇生術 Source---The Murfreesboro Post
マウスツーノーズを行ったジョン・レヴィさんと一命をとりとめたアビー

5月9日

 前足にハンデを抱える犬の飼い主が、自宅で安価に車いすを作れるよう、 3Dプリンタ用の設計データがオープンソース化されました。
 設計を手がけたのは、 デンマークに本拠地を持つ3Dプリンタ販売企業「Multec」。動物保護団体から引き取った「ルイーザ」という名の前足がない犬を試験モデルとし、数ヶ月かけて汎用性車いすの製作に成功しました。サイズには「大」と「小」がありますが、家庭にある小型3Dプリンターでも製作できるよう、各パーツは分解・微調整が出来るようになっています。価格はおよそ150ドルあればできるとのこと。今のところ前足専用ですが、3Dプリンタの建設的な活用法として注目を浴びています。オープンソース化された設計データは以下のリンクから。 Adaptable Wheelchair for handicapped Dogs
前足が不自由な犬のために作られた汎用性車いす

5月7日

 4日、人命救助に貢献した動物を表彰する「ピュリナ動物の殿堂」が開催され、新たに4頭の犬が殿堂入りを果たしました。
 「ピュリナ動物の殿堂」(Purina Animal Hall of Fame)は、1968年から毎年開催されている恒例行事。カナダオンタリオ州にある都市トロントで開催された表彰式では、2014年に人命救助で活躍した「バジャー」、「ベラ」、「サコ」、「ネットル」という4頭の犬が、新たに殿堂に加えられました。
Purina Animal Hall of Fame 2015
  • バジャー(Badger) 骨折して動けなくなった飼い主を、自らの首輪を使って400m以上引きずり、無事に山小屋まで送り届けた。
  • ベラ(Bella) 心臓発作で倒れている人を発見し、命令に背いてまで飼い主にその存在を知らせた。
  • サコ(Sako) 車の横転事故で崖を転がり落ち、身動きが取れなくなった飼い主の為、2日間寄り添い、森の中で見張りに立ってくれた。
  • ネットル(Nettle) 糖尿病患う双子の姉妹のため、低血糖探知として付き添い、低血糖発作を何度も救ってくれた。
Purina Animal Hall of Fame

5月7日

 コロラド州の本拠地を置く非営利組織「Morris Animal Foundation」が行っている、ゴールデンレトリバーを対象とした長期的な医学調査の参加頭数が、目標としていた3000頭を超えました。
 「Golden Retriever Lifetime Study」と名付けられたこの調査は、ゴールデンレトリバーにおいて発症率が高い骨肉腫、リンパ腫、血管肉腫といったガンの発症メカニズムを解明しようというもの。今年に入り、2012年から募集し始めた被験動物の数が目標としていた3000頭を超えたため、一旦募集を打ち切りました。
 調査に参加した飼い主は、気候の変動、タイムゾーン、家族のメンバー構成の変化、エサや行動の変化を事細かに記録する必要があります。一方、犬のメディカルチェックを担当する獣医師は、血液、排泄物、被毛、爪といった体組織を採取するほか、気温、血圧、活動、食事内容、睡眠パターンといった項目もチェックし、ガンやその他の病気を暗示するような手がかりがないかどうかをモニタリングします。
 調査によって十分な量のデータが収集された暁には、「ゴールデンレトリバーにおいてガンの発症率が高い」という謎を解くヒントが見つかるものと期待されています。また犬はDNAの95%を人間と共有しているため、獣医学の分野において得られた知見が、人医学の分野でも十分役立ってくれるだろうと考えられています。 Study aims to uncover why cancer plagues golden retrievers 犬のガン

5月4日

 盲導犬とペット犬の飼い主を対象とした調査により、盲導犬と暮らす目が不自由な人の方が、ペット犬の飼い主よりも運動量が多くなるという傾向が確認されました。
 人と動物の関係を科学的に検証する「Anthrozoos」誌で発表された調査によると、盲導犬と共に外出する目が不自由な人は、大型犬(23kg以上)や小型犬(23kg未満)の飼い主よりもはるかに運動量が多く、週150分という推奨運動量を満たす傾向があったといいます。特に大型犬の飼い主との運動量格差は顕著で、10倍近いの開きがあったとも。こうした事実から調査チームは、「盲導犬は自由が少ないと思われがちだが、少なくとも運動という側面においてはペット犬と何ら遜色がなく、むしろ充実している」との結論に至りました。 Physical Activity and Welfare of Guide Dogs and Walking Activity of Their Partners 犬との散歩

5月3日

 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は1日、かつて黒死病として恐れられた人獣共通感染症の1つ「ペスト」の、犬から人への感染例を報告しました。
 ペストは通性嫌気性のグラム陰性桿菌「Yersinia pestis」によって引き起こされる感染症。非常に致死性が高く、14世紀の頃のヨーロッパでは、人口の三分の一程度に相当する2,000万~3,000万人の命を奪ったとされる恐ろしい病気です。
 2014年6月24日、アメリカ・コロラド州で最初に発症したのは、ある男性に飼われていたオスのアメリカンピットブルテリア(2歳)。発熱、咀嚼筋の硬直、右前足の麻痺などの症状で動物病院に運ばれましたが、急激に症状が悪化したため、翌日には安楽死処置が施されました。次に発症したのが犬の飼い主である男性。6月28日、発熱と咳が現れ始めたため地元の病院で治療を受けていましたが回復せず、別の病院へ転院させられました。そこで行われた精密検査によりペスト菌に感染していることが発覚。さらにその後の調べで、男性や犬と接触を持った合計114名のうち、3名の女性がペストに感染していることが判明しました。
 こうした事実を受けた「Tri-County Health Department」(TCHD)は追跡調査を行い、このケースを1924年以来となる「犬から人へのペストの感染例」として報告をまとめました。またアメリカ疾病予防管理センター(CDC)でも、発症例は少なくなったとはいえ、ペストをパンデミック(全国的流行病)を引き起こしうる恐ろしい病気として扱うよう呼びかけています。
 なお、日本においては1926年(大正15年)以来、ペストの報告例はありません。しかし厚生労働省では、保菌動物として知られるプレーリードッグが、検疫の目を逃れて国外から違法に持ち込まれる可能性があるため、「注意を怠らないようにする必要がある」としています。 CDC 国立感染症研究所(NIID)