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犬と猫のマイクロチップ・完全ガイド~仕組みやメリットから副作用リスクまで

 犬や猫の皮膚に埋め込んで個体識別に利用するマイクロチップ。いったいどのような仕組みで動くのでしょうか?また副作用のリスクはないのでしょうか?詳しく解説します。

マイクロチップの仕組み

 マイクロチップ(microchip)とは動物の個体識別を目的とした電子標識器具のこと。鉛を含まない生体適合ガラス(bioglass)の中に超小型の集積回路(IC)とコイルアンテナが封入されています。 一般的な犬猫用マイクロチップの大きさは米粒を一回り大きくした程度  基本的な仕組みは、リーダー(読取器)から発信された電波をマイクロチップ内のコイルアンテナが受け取り、電磁誘導によって電力を発生させるというものです。発生した電力でICが起動し、電磁誘導電波(応答電波)をリーダーに送り返します。応答電波に含まれている15桁の数字をリーダーが認識することにより、個体識別が可能となります。 マイクロチップの内部構造模式図  電池を内蔵したマイクロチップが「アグレッシブ(能動的)マイクロチップ」と呼ばれるのに対し、リーダーから電波を受け取って初めて電力を発生することから「パッシブ(受動的)マイクロチップ」とも呼ばれています。
NEXT:チップの入れ方は?

マイクロチップの入れ方

 マイクロチップは専用の埋め込み器を用いて皮膚の下に挿入します。チップを封入している生体適合ガラス(bio active glass)は、ひとたび体内に入ると周囲にある軟部組織と自然結合し、ずれにくくなります。

マイクロチップの種類

 マイクロチップの多くは海外からの輸入物です。いくつかの種類がありますが、共通しているのは「大きさが12mm×2.1mm程度」「ISO規格に準拠している」「識別番号は15桁」「書き換えは不可」という点です。
 マイクロチップとリーダーがISOの規格に準拠してさえいれば互換性があり、製造メーカーが異なっていても読み取ることができます。日本国内では10社を超える企業がマイクロチップの輸入と販売を手がけています。代表的なものは以下です。
日本国内におけるマイクロチップの種類一覧
  • AVID社→AVIDマイクロチップⅡ
  • DATAMARS社→アイディール
  • DIGITAL ANGEL社→ライフチップ
  • TROVAN社→ペットスキャン
日本国内で流通しているマイクロチップインジェクターの外観  マイクロチップは多くの場合、注射器を大きくしたような専用の埋め込み器(インジェクタ)の中に装填されています。針の太さは12ゲージ前後で使い捨てです。

どこに埋め込む?

 世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインでは「背中の肩甲骨間よりやや頭側の正中線上」もしくは「左頚部の中央部」が望ましいとしています。図で示すと以下です。 標準的なマイクロチップの埋め込み場所模式図  たびかさなる炎症反応が腫瘍の形成を促す危険性があるため、ワクチン接種の場所とは違う場所に埋め込むことが推奨されます。
【動画】マイクロチップを入れる場所
 以下でご紹介するのはマイクロチップを入れる瞬間をとらえた動画です。入れる前と入れる後にリーダーを当てしっかり機能していることを確認しなければなりません。痛みは少ないとされていますが、針を刺し込むのですから全く痛くないわけはないでしょう。 元動画は⇒こちら

誰が埋め込む?

 マイクロチップの埋め込みは基本的には獣医師が行います。
 日本の薬機法では注入針が動物用医療機器と規定されているため、マイクロチップのインジェクタを使用できるのは必然的に獣医師だけということになります。また獣医師法第17条が定める飼育動物(牛, 馬, めん羊, 山羊, 豚, 犬, 猫, 鶏, うずら等)に対してマイクロチップを埋め込む行為は診療に該当するため、皮下に埋め込むという施術も獣医師にしかできません。
 逆の言い方をすると、獣医師の資格を持たないブリーダーやペットショップの店員が業務としてマイクロチップを埋め込んだ場合、獣医師法違反となる可能性があるということです。
 なお日本の業者が海外から注射器型のマイクロチップを輸入する際は、農林水産省から薬機法に基づく動物用医療機器製造販売業の許可を取り、なおかつインジェクターについては品目ごとに承認を得る必要があります。

いつ埋め込む?

 マイクロチップの埋込みは犬では生後約2週齢(8日齢)頃、猫では生後4齢(22日齢)頃から可能であるとされています出典資料:日本獣医師会
 ただし血液凝固に問題がある場合、皮膚に病変を抱えている場合、極端に体が小さい場合などは埋め込みが保留されることもあります。また動物が激しく抵抗する場合なども、少し成長しておとなしくなるまで先延ばしにされることがあります。これは2000年代初頭、暴れる子猫に無理やりマイクロチップを埋め込んだ際、誤って脳幹にインジェクタを差し込んで死亡させるという痛ましい事故が起こったためです(BSAVA)

リーダーの種類

 マイクロチップを読み込むリーダー(読取器)の方も、各社が独自の製品を発売しています。
 ハンディタイプは小型で軽量なリーダーです。動物病院、行政機関、動物愛護団体等で利用されています。体の表面に接触するくらい近づけてチップに信号を送ります。価格は3~5万円程度です。
 スティックタイプは檻などに入った動物のマイクロチップを読むためのリーダーです。スティックの先端にアンテナが付いているため、読み取りを行う人間と動物が近づく必要がありません。 ハンディタイプとスティックタイプのマイクロチップリーダーの外観  固定タイプは動物が通り抜けるだけでマイクロチップの個体識別番号を読み取ることができるリーダーです。動物数が多い場合などに利用されます。ほとんどは家畜動物向けですので、犬や猫には無関係でしょう。
NEXT:チップのメリットは?

マイクロチップのメリット

 マイクロチップで個体識別が可能になることにより、以下のようなメリットがもたらされると考えられています。これはとりもなおさずマイクロチップを装着する目的でもあります。

迷子・負傷犬猫の所有者を発見する

 首輪やリードを装着しており、飼い主がいることが明らかな迷子犬猫は相当数にのぼります。また路上で交通事故などに遭い、負傷動物として収容される犬猫も同様です。
 マイクロチップによって飼い主の情報をスムーズに取り出すことができれば、迷子や負傷で収容された犬猫たちの返還率が高まります。

動物収容施設の効率化

 迷子犬や負傷犬を速やかに飼い主に返還することができれば、動物愛護センターや保健所における収容動物の数が減ります。収容動物の数が減れば、スペースに空きができると同時に職員たちのリソースを他の業務に振り分けることができますので、殺処分の軽減につながると期待されます。
 例えば、犬の収容数が減ったので1頭に投資できる時間と労力が増え、今まで7日間だった公示期間を2週間まで伸ばし、人間と触れ合う時間を長くするなどです。公示期間が伸びて人慣れが促進できれば、新しい飼い主が見つかる可能性も高まるでしょう。

災害時の迅速な対応

 災害時においてはペットの同行避難が基本とされていますが、大地震などで飼い主と生き別れになってしまうこともあります。被災地において屋外を放浪している犬にマイクロチップが埋め込まれていれば、飼い主のもとにスムーズに送り返されるようになるでしょう。
 放浪犬のスムーズな返還は、犬を収容しておくスペースの削減につながると同時に、保護した犬の世話に投資される人的リソースの削減にもつながります。

動物の盗難抑止

 転売を目的として動物を盗む人がいるかもしれません。犬猫にマイクロチップが埋め込まれていると、新しい購入者が不審に思って犯罪が発覚する可能性が高まります。またマイクロチップが入った犬猫を盗んでも転売できないことが分かっていれば、そもそも動物を盗もうとする犯罪者の数自体が減ってくれることも考えられます。盗まれた動物の所有者を証明するときにも有効でしょう。

遺棄の防止

 飼っていた犬や猫の首輪を外し、路上に放り出して知らん顔をする「遺棄」という犯罪を行う飼い主がいます。首輪や鑑札を外しても、犬猫にマイクロチップが埋め込まれている限り元の飼い主まで辿ることができますので、動物愛護法で定められた罰則を適用しやすくなります。
 実際はそれよりも「マイクロチップが埋め込まれている以上、遺棄はできない」という抑止力としての効果の方が強いかもしれません。
NEXT:チップのデメリットは?

マイクロチップのデメリット

 マイクロチップはメリットばかりではありません。以下に述べるような様々なデメリットも併せ持っていますので、両者のバランスを取りながら是非を考えていく必要があります。

外から見えない

 マイクロチップは体の外から装着の有無を確認できないという特徴を持っています。この特徴がマイナスに作用する可能性がゼロではありません。
 例えば犬が路上をうろついていたとしましょう。首輪などを装着しており、外見だけから飼い犬であることが明白な場合は、見つけた人が積極的に警察や動物愛護センターなどに連絡してくれるかもしれません。一方、単なる野良犬と判断されると、関わることが面倒だからという理由でそのまま放置されてしまう危険性があります。
 マイクロチップは見た目だけから装着の有無を確認できませんので、首輪などその他のIDタグがない場合、単なる野良犬と判断されてしまう確率が高まります。その結果、迷子犬として飼い主に返還される確率も下がってしまうでしょう。

専用の読取り装置が必要

 マイクロチップは専用の読取器(リーダー)がないと中に含まれている個体識別情報を取り出すことができません。リーダーを備えている場所は、マイクロチップの埋込みを行っている動物病院、地方自治体の動物愛護相談センター、環境省の自然保護事務所などです。
 これまでは、マイクロチップを装着していてもリーダーを備えている施設が少なくて個体情報を取り出せないという問題がありました。マイクロチップの装着が法律で義務化されれば、間接的にリーダーの常備も義務化されるでしょうから、上記したような問題は軽減してくれるでしょう。

埋め込みの副作用

 犬の体内に異物を埋め込むということに対し強い抵抗感を示す人がいます。そうした反感の源にあるのは、世界中でちらほらと報告されている副作用の事例です。具体的には当ページ内「マイクロチップの安全性・危険性」のセクションをご参照ください。

費用がかかる

 マイクロチップの装着には、マイクロチップそのものの値段の他、獣医師に支払う埋込み施術費用、データベース管理会社に支払う登録・管理費用が発生します。トータルの料金は数千円から1万円程度です。マイクロチップの装着が「義務」ではなく「努力義務」という位置づけでは、当然パスする人も出てくるでしょう。

情報管理者への不信感

 マイクロチップのIC自体に個人情報は含まれていませんが、個体識別番号と紐付けされたデータベースの方にはある程度の個人情報が記録されています。個人情報漏洩事件が頻発している日本においては、情報を管理している会社に対して不信感を抱くというのはむしろ健全な反応です。
NEXT:チップの危険性は?

マイクロチップの安全性・危険性

 マイクロチップを原因とする副作用やリスクの正確な疫学はよく分かっていません。チップが生体にもたらす長期的な影響が完全には分かっていないため、装着を条例や法律等で義務付けることは控えるべきであると提案している人もいます出典資料:Albrecht, 2010

副作用の割合は?

 2016年4月から生後8週齢未満の犬に対するマイクロチップの装着が義務化されたイングランドにおいては、「Ani-base」「PETtrac」「Petlog」「Pet Protect」という4つのデータベースがあり、「Petlog」だけで580万頭の犬が登録されています。それに比べマイクロチップが確実に原因と考えられる有害事象の報告数が極めて少ないことから、「飼い主がスムーズに見つかることで殺処分を免れる」というメリットを上回るデメリットをもたらすことはないと考えられています。
 また1997年から2001年の期間、イギリスを含むヨーロッパ全体でマイクロチップに関わる有害事象について147の自主的な報告があったと言います。そのうち60%は「迷入・位置ずれ」(89件)で、「紛失・消失」(24%=35件)、「チップの不具合」 (10%=15件)がそれに続きました。懸念される健康上の報告は「感染」が4%(6件)、「腫れ」が1.3%(2件)だけで、命に関わるような深刻なもの一件もなかったとのこと。
 上記データは「自主的な報告」に基づいたものでしたが、「VMD」(獣医療総局)が有害事象の報告を獣医師に義務付けた上で収集したデータでは、2014年4月から2015年末までの期間で1,420件の報告がありました出典資料:VMD。内訳はマイクロチップの不具合が44.3%(630件)、マイクロチップの移動が51.3%(729件)、マイクロチップに対する副反応が4.3%(61件)です。 英国内におけるマイクロチップ装着後のトラブル統計  VMDは最終的に、850万頭の犬と750万頭の猫が飼育されているイギリス国内においては、マイクロチップに関連した問題が極めて少なく、また問題の中でも健康を害するタイプのものは更に少ないため、懸念材料にはならないと結論づけています。

副作用の具体症例

 以下は世界中で散発的に報告されている副作用や有害事象の具体例です。世界レベルで見ると、マイクロチップは数千万頭レベルで装着されていますが、報告されている症例の数は数十レベルで死亡例を含むものはほぼありません。とは言え、この種のネガティブなデータは国が都合よく隠蔽する可能性がありますので、数は少なくてもしっかり把握しておく必要があります。

脂肪肉腫(犬)

 2000年4月、イタリア国内でマイクロチップを装着された11歳になる雑種犬が、翌年の11月に腫瘤を発症し、組織学的な検査の結果、マイクロチップを中心とした悪性の脂肪肉腫(ローグレード)と診断されました。マージンを大きく取った外科的な切除術によって回復しています出典資料:Vascellari, 2004

線維肉腫(犬)

 2003年9月、カナダでマイクロチップを装着した9歳になるオスのフレンチブルドッグが翌年の4月に皮下の腫瘤を発症し、マイクロチップを中心とした浸潤性の線維肉腫(ハイグレード)と診断されました。2cmのマージンを取った外科的な切除術が施されています出典資料:Vascellari, 2006

四肢不全麻痺(犬)

 イギリスに暮らす生後6週齢のチベタンテリア(1.6kg)が、うなじにマイクロチップを装着してから急性の四肢不全麻痺を発症しました。神経学的な検査により脊髄C1~C5領域の病変が疑われたためレントゲン撮影を行なったところ、第2頚椎あたりにマイクロチップの存在が確認されました。片側椎弓切除術が行われ、手術から7日後には歩行能力を回復したと言います。18ヶ月後のフォローアップでは、やや頭が右側に傾くということを除き健康体に戻りました出典資料:Smith, 2009

進行性荷重不全(犬)

 生後まもなくマイクロチップを装着された3歳になるメスのヨークシャテリアが、左前足の進行性荷重不全と2週間前から続く四肢不全麻痺で来院しました。レントゲン撮影では第5頚椎と第6頚椎の関節面あたりにマイクロチップが確認され、CTスキャンによる精密検査では左脊柱管背後側への異物迷入と第6頚椎椎弓板の骨溶解が確認されました。マイクロチップを外科的に取り除いたところ2週間後には運動性を取り戻し、四肢の不全麻痺も回復しました出典資料:Joslyn, 2010

肉芽種性の炎症(犬)

 生後まもなくマイクロチップを装着された8歳になるスプリンガースパニエルが頚部背側に大きくて硬い腫瘤を発症しました。レントゲン撮影やスキャニングにより腫瘤の中にマイクロチップが止まっていることが確認され、外科的に切除されました。組織学的に検査したところ、破損したマイクロチップを中心とした肉芽種性の炎症病変だったそうです出典資料:Legallet, 2017

注射部位関連肉腫(猫)

 イタリアに暮らす9歳のオス猫が首筋にできた皮下腫瘤で受診しました。外科的に切除したところ腫瘤の中からマイクロチップが見つかり、組織学的な検査で注射部位関連肉腫と診断されました。ワクチンの接種は後ろ足にしていたことから、マイクロチップの装着が原因だったのではないかと考えられています出典資料:Carminato, 2011

線維肉腫(猫)

 14歳になるメス猫が肩甲骨間の腫瘤を主訴としてアメリカにあるジョージア大学獣医病院を受診しました。CTスキャンなどで精密検査を行った結果、マイクロチップを核とする線維肉腫の疑いが強いと判断されましたが、ワクチンも同じ場所に射っていたため、最終的な因果関係は断定できませんでした出典資料:K.Daly, 2008

脊髄障害(猫)

 イギリス国内に暮らす2歳のオス猫がマイクロチップ装着後、急に四肢の不全麻痺を発症しました。神経学的な検査とミエログラフィーの結果第6頚髄~第2胸髄の左側にマイクロチップが認められたため、背側から椎弓板切除術を行いこれを除去。11ヶ月後には歩行能力を取り戻し大きな後遺症は残らなかったといいます出典資料:Platt, 2007
NEXT:装着の義務化は必要?

マイクロチップの義務化は必要?

 マイクロチップの装着を義務化しても殺処分問題の根本的な解決にはなりません。根本的な解決法は日本国内で気軽に売買されている犬や猫の数を減らし、責任ある動物の飼養を推進することで動物保護施設に収容される犬や猫の数自体を減らすことです。
 日本国内におけるマイクロチップの義務化は、生体販売業界との関わりが深いとされる自民党の「どうぶつ愛護議員連盟」が強く推し進めたとのこと。「不適正な飼い主でもお金を払えばペットを購入できる」という殺処分問題の一次的な原因から目をそらすため、「マイクロチップを装着していないから動物保護施設の業務が増える」という二次的な原因を前面に持ってきたと見ることもできるでしょう。
 先述したように収容される犬猫の数を減らしたいのなら、生体販売業に規制をかけて流通量自体を減らすという第一選択肢があります。国がこうした根本的な問題になかなかタッチしようとしない理由は、ペット産業がすでに1兆円を超える巨大市場を形成しているからです。 日本のペット産業 日本におけるペット関連総市場規模推移と予測 NEXT:チップQ & A集

マイクロチップQ & A

 以下はマイクロチップについてよく聞かれる疑問や質問の一覧リストです。思い当たるものがあったら読んでみてください。何かしら解決のヒントがあるはずです。

マイクロチップにGPS機能はあるか?

GPS機能はありません。

 マイクロチップにできるのはリーダー(読取器)からの信号を受け取って登録されている15桁の数字を返すことだけです。衛星からの信号を受け取って位置情報を返す機能は付いていませんので、犬や猫の居場所の特定はできません。

マイクロチップの規格とは?

ISO規格が採用されています。

 1996年、ISO(国際標準化機構)がマイクロチップのコード体系(ISO11784)と通信方法(ISO11785)に関する規格を定めました。コード体系は15桁で、日本国内では「国番号(3桁)+動物種(2桁)+販売会社コード(2桁)+個体番号(8桁)」から構成されています。ちなみに日本の国番号は「392」、ペット動物の番号は「14」です。
 なお少数ながらISO規格に準拠していないマイクロチップも流通しています。これらのチップはISO規格のリーダーでは読み取れませんので、専用のリーダーが必要です。

電池交換は必要か?

マイクロチップに電池は入っていません。

 マイクロチップはリーダーからの信号を受け取って発電する仕組みになっており、電池などによって自力で発電する能力は備えていません。PITタグ(受動的集積トランスポンダタグ)と呼ばれているのもそのためです。

耐用年数は?

犬の寿命よりは長いと考えられます。

 正確なデータはありませんが数十年(25~30年)の耐用年数があると考えられていますので、犬が産まれてから死ぬまでの20年間くらいは故障せずに使えるでしょう。

マイクロチップは動く?

ずれて他の場所に移動することがあります。

 埋め込む時の手技が下手くそでマイクロチップが安定しなかった場合、全く別の場所に移動してしまうことがあります。多いのは肩の前や胸元に迷入してしまうパターンです。ひどい例では下半身に移動してしまうというものもあります。
 マイクロチップをスキャンするときは、面倒でも全身くまなく行うことが推奨されている理由は、こうした移動のパターンがあるからです。なお移動したマイクロチップがどうしても見つからない時は、レントゲン撮影すれば見つかります。

マイクロチップは壊れる?

壊れることもあり得ます。

 マイクロチップにかなり強い力がピンポイントで加わったり、かなり激しい温度の上下動があった場合、マイクロチップの外側を構成しているカプセルが破損してしまうことがあります。世界的に見てもほとんど報告されていませんので、あまり気にしなくてよいでしょう。

電磁波は出すのか?

出しません。

 リーダーから発信された電波をマイクロチップが受け取り変調するだけです。

取り出しは可能か?

不可能ではありませんが皮膚ごと切除する必要があります。

 マイクロチップを封入している生体適合ガラスの表面は、体内で組織と結合するようにできていますので、一度埋め込んでしまうと取り出す際はかなり大掛かりな手術が必要となります。ですから英国では、マイクロチップを医療的な目的以外で取り出すことは不必要な解剖行為という動物虐待とみなされます。

MRIに干渉しないか?

しませんが診断の邪魔にはなります。

 マイクロチップがMRIに影響を及ぼすことも、逆にMRIがマイクロチップの機能に影響を及ぼすこともありません。ただ埋め込み場所が頚部に近いことから、この周辺に病変を抱えた犬や猫においては画像診断する時の邪魔になってしまいます。
 頚部のMRI撮影が必要な場合は、埋め込み場所を正中線からやや脇にずらすか、背中側にずらすという方法もあります。ただし一度埋め込んでしまってから位置を変更することはできません。

発がん性はないのか?

腫瘍を発症させる可能性はあります。

 体内に入り込んだ異物が原因となって形成された腫瘍は「異物誘発性腫瘍」などと総称されます。マイクロチップの外側は生体適合ガラスで覆われており、 比較的腫瘍の発生率が低いとされていますが、リスクが全くゼロというわけではありません。指摘されている危険性としては「挿入時の炎症」「チップに含まれている未知の腫瘍源物質」「電波による刺激」などがあります出典資料:Albrecht, 2010
 世界中で数千万頭の犬や猫にマイクロチップが装着されているにもかかわらず、悪性腫瘍(がん)を発症したとする症例が数えるほどしかないことから、懸念材料にはならないというのが現在主流となっている考え方です。とはいえ数十年単位で見た時の疫学に関しては確認されていませんので今後のモニタリングは必要でしょう。
 なお発がん性で言えば、国際がん研究機関(IARC)によって「赤身の肉」が2A、すなわち「おそらく人に対して発がん性がある」 食材としてリストアップされています。マイクロチップの発がん性を心配するのだったら、焼肉を食べている自分の心配もあわせてした方が良いでしょう。

体温を計れるというのは本当か?

一部のマイクロチップは体温感知機能を持っています。

 デジタルエンジェル社が開発した「バイオサーモ」というマイクロチップには体温測定機能がついており、専用のリーダーがあればスキャンするだけで体温を計測することができます。日本における販売は大日本住友製薬です。
 しかし直腸温と比較した場合、首筋の皮下温度は深部体温をそれほど正確には反映しませんので、マイクロチップ計測を臨床におけるスタンダードにはしないほうがよいとの見解もあります。
 なおまだ登場していませんが、血糖値をモニタリングする機能を有したマイクロチップも開発が進んでいるようです。

マイクロチップの装着率は?

2~4割程度と推計されます。

 「ペットフード協会・全国犬猫飼育実態調査」(2018年度版)では、犬もしくは猫を飼っている飼い主1,307人におけるマイクロチップの装着率は21.5%でした(犬17.4%+猫4.1%)。
 一方「東京都における犬及び猫の飼育実態調査の概要」(H29)によると、犬の飼い主424名のうち31.8%、猫の飼い主365名のうち9.9%が装着していたとのこと。
 地域によってばらつきがありそうですが、普及率は2~4割程度と推計されます。

行政から補助金は出る?

補助金を出している自治体もあります。

 地方自治体の中にはマイクロチップの装着に対して助成金を出しているところがあります。例えば神奈川県茨城県常総市などです。

登録データの管理者は誰?

AIPOです。

 AIPO(アイポ=動物ID普及推進会議)は2002年12月、5つの公益法人によって設立された団体。マイクロチップによる動物個体識別の普及推進とデータ登録、管理、照会を主な業務としています。実際のデータ管理を行っているのは委託を受けた外部の会社で、獣医師等がマイクロチップを読み取った後、インターネットを通じてデータ照会ができるようにデータベースシステムの構築を行っています。
 その他ではジャパンケネルクラブ(JKC)が独自のデータベースを保有して個体管理を行っています。なお大日本製薬がかつて運営していた独自のデータベースは、2006年にAIPOと統合されていますので今はありません。

どのような情報が記録されている?

動物に関する情報のほか飼い主の情報や担当獣医師の情報が記録されます。

 マイクロチップに入っているのは15桁の個体識別番号だけですが、番号と紐付けされたデータベース情報には以下のようなものがあります。
データベースに記録される情報
  • 登録情報 個体識別番号 | 注入年月日 | 新規登録年月日 | 登録変更年月日
  • 飼主情報氏名 | 住所 | 連絡先(電話, FAX, E-mail)
  • 動物情報動物種(犬, 猫, その他) | 品種 | 性別 | 年齢 | 毛色 | 不妊去勢の有無
  • 獣医師情報埋め込みを行った獣医師の氏名 | 住所 | 診療施設名 | 獣医師免許登録番号 | 連絡先(電話, FAX)

登録データの変更方法は?

ハガキ、FAX、メールなどで知らせます。

 登録したデータに変更がある場合は、「データ登録完了通知書」や申込書の「飼育者控」をコピーし、余白部分に変更事項を記入した上で、日本獣医師会に郵送したりFAXを送ります。コピーの代わりに写真で撮影し、画像をメール添付するという方法も可です。
 上記通知書や控えを紛失した場合は、本人確認のため直接電話をかける必要があります。なお登録データの変更に際して改めて費用がかかるということはありません出典資料:日本獣医師会

登録データの更新をしないとどうなる?

迷子になった時の返還率が下がります。

 2012年1月から2013年12月の期間、オーストラリア・クイーンズランドにある保護施設(RSPCA)に収容された犬7,258頭と猫6,950頭を対象とした調査では、マイクロチップの装着率は犬が28%で猫が9%だったと言います出典資料:Lancaster, 2015
 またマイクロチップ全体の37%では登録情報に不備があったとも。「新しい飼い主がデータを更新していない」が最も多くて47%、その他では「電話番号が古いもしくはつながらない=29%」、「紐付けされたデータ自体が存在しない=14%」などがありました。
 マイクロチップの有無やデータ不備による飼い主への返還率は以下です。
マイクロチップと返還率
マイクロチップの装着と返還率の関係
  • ✓データに不備がない→87%
    ✓データに不備がある→69%
    ✓マイクロチップなし→37%
  • ✓データに不備がない→61%
    ✓データに不備がある→33%
    ✓マイクロチップなし→5%
 マイクロチップを装着していない場合に比べ装着している場合の方が圧倒的に高い返還率を示しました。しかしデータに不備があると返還率が統計的に有意なレベルで下がってしまうため、最新情報に更新するといった基本メンテナンスが重要であると指摘されています。
 書き換えが必要なタイミングは、飼い主が変わったとき、引っ越しで住所が変わったとき、犬が死亡したときなどです。

誰でもデータ照会できるのか?

照会できる人は限られています。

 マイクロチップの番号がわかったからと言って、それに紐づけされている個人情報を誰でも照会できるわけではありません。照会できるのは動物愛護センターや保健所の職員、そして獣医師です。AIPOに直接紹介する方式と、間に地方獣医師会を挟む方式とがあります。

リーダーの感度は100%か?

100%ではありません。

 別々のメーカーから発売されている4種類のリーダー(読取器)を用いて、6種類のマイクロチップを読み取るという実験が行われました。その結果、最初のスキャンだけで100%の確率で反応してくれたものは、ただの一つもなかったと言います出典資料:Lord, 2008
 皮膚の下に埋め込まれているという関係上、信号の授受がスムーズにいかないこともありますのでマイクロチップを読み取る際はゆっくりと円を描くようにスキャンすること、複数回スキャンすること、全身をくまなくスキャンすること、金属を遠ざけることが推奨されています。

自宅でチップを確認できる?

リーダーを購入すれば可能です。

 日本国内で使用されているマイクロチップはほぼ100%ISO規格に準拠していますので、ISO規格に準拠したリーダーをもっていれば確認することはできます。ただしマイクロチップに記録されている15桁の番号だけで、そこに紐づけされた登録情報までは確認できません。

スマホアプリでチップを読める?

読めません。

 マイクロチップに対して質問信号を発する機能を有したスマートフォンはありません。またアプリをダウンロードすればスマホがスキャナーに変身するということもありえません。マイクロチップのデータを読み込むには、ISO規格に準拠した専用のリーダーが必要となります。

結局、利権なんでしょ?

その可能性は否定できません。

 1頭にかかるマイクロチップ情報の登録費用1,000円は日本獣医師会に入ります。またマイクロチップの装着義務化に際しては、自民党の「どうぶつ愛護議員連盟」に属する一部の議員が強く主張したようです。こうした事実から、利権を絡めた陰謀論を想像する人もいることでしょう。
 日本国内で毎年新たに生み出される子犬の数が50万頭と仮定すると、単純計算で登録料は年間5億円に上ります。データ管理にかかる実費用はたかが知れていますので、残りはどこに行くのでしょうか?わかりません。
マイクロチップの義務化は、一部の無責任な飼い主とそこに犬猫を供給している生体販売業界の尻拭いをするためのもの。殺処分問題の根本的な解決策ではありません。 犬の殺処分問題 猫の殺処分問題