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犬の歯根膿瘍~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の歯根膿瘍(しこんのうよう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の歯根膿瘍の病態と症状

犬の歯の歯冠部と歯根部の模式図  犬の歯根膿瘍とは、歯の根元に当たる「歯根部」(しこんぶ)に炎症が生じ、局所的に膿が溜まってしまった状態のことです。
 犬の歯は、表に出ている「歯冠部」(しかんぶ)と歯茎の中に埋まっている「歯根部」とから成り立っています。通常であれば、最外層にある硬いエナメル質が保護しているため、歯根部に炎症が生じる事はありません。しかし歯に大きな力が加わってヒビが入ったり折れてしまったりすると、そこから病原菌が入り込み、一番奥にある歯根部で炎症を引き起こしてしまうことがあります。このようにして歯の根元に膿がたまった状態が「歯根膿瘍」です。 歯根膿瘍の模式図~病原体の侵入口と歯根部における炎症  犬の歯根膿瘍の症状としては以下のようなものが挙げられます。歯根部から隣接する歯槽骨(しそうこつ)にまで膿が広がった状態が「歯槽膿漏」(しそうのうろう)、歯槽骨の骨髄内で炎症を引き起こした状態が「歯槽骨髄炎」、そして歯槽骨に穴が開き、骨を覆っている皮膚にまで膿が溜まってしまった状態が「皮下膿瘍」(外歯瘻)です。
犬の歯根膿瘍の主症状
歯槽骨に穴が開いて膿が漏れ出し、眼窩下の皮膚が盛り上がった犬
  • 歯に傷がついている
  • 食事を拒む
  • 歯の片側だけに歯石がついている
  • 口から腐ったような臭いがする(歯槽膿漏)
  • 歯槽骨の骨髄炎
  • 顔が腫れている
  • 皮下膿瘍(外歯瘻)

犬の歯根膿瘍の原因

 犬の歯根膿瘍の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の歯根膿瘍の主な原因
  • 歯についた傷 硬いものが強く歯の表面に当たったり、硬いものをガジガジと噛んでいると、歯にヒビが入り病原体の侵入口になってしまいます。また布やロープを用いた激しい引っ張りっこなども原因になりえます。その他の可能性は、虫歯歯周病、電気コードによる火傷、歯牙骨折、ケージバイトなどです。
 最後に挙げた「ケージバイト」とは、ケージに閉じ込められた犬がストレスから檻をガジガジと噛んでしまう現象のことです。歯根膿瘍の原因になりますので飼い主は予防に努めなければなりません。好発部位は特に力が加わりやすい犬歯と裂肉歯(上顎第四前臼歯と下顎第一後臼歯)です。原因となるのは長時間の留守番、屋外飼育、ストレスなどですので、犬の留守番のしつけ犬を庭や外で飼う犬の幸せとストレスといったページが役に立つでしょう。

犬の歯根膿瘍の治療

 犬の歯根膿瘍の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の歯根膿瘍の主な治療法
  • 外科手術 歯根部に溜まっている膿を除去します。症状が長期化し、歯根部が著しく破壊されているような場合は、歯根部もろとも歯を抜いてしまうこともあります。
  • 投薬治療 病巣部から全身に病原体が広がるのを防ぐため、抗生物質の投与が行われます。また手術の前後3日~4日間は鎮痛剤が必要となります。