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犬の幽門異常~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の幽門異常(ゆうもんいじょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の幽門異常の病態と症状

 犬の幽門異常とは、胃の出口に当たる幽門という部位が正常に機能しなくなった状態のことです。
 胃は入口である「噴門部」(ふんもんぶ)、胃本体、そして出口である「幽門部」(ゆうもんぶ)から構成されています。幽門異常とは、出口ゲートに相当する幽門が、何らかの理由によってふさがり、胃の内容物を十二指腸に送り出せなくなってしまった状態のことです。 正常な幽門と狭窄を起こした幽門の比較模式図  幽門が狭くなってしまう原因には、幽門部に分布している幽門括約筋が肥大してしまうパターン、幽門表面の粘膜が肥厚してしまうパターン、そしてその両者の混合という3パターンが存在しています。先天的に発症した場合は「筋肥大型」と相場が決まっていますが、後天的に発症した場合の型はまちまちです。いずれにしても胃袋の出口がふさがれた状態にありますので、入ってきた飲食物が胃の中で渋滞を起こしてしまいます。
 犬の幽門異常の主な症状は以下です。メスよりオスの方が2倍多く発症すると言われています。
犬の幽門異常の主症状
  • 未消化物の嘔吐(食後30~120分)
  • 脱水(度重なる嘔吐による)
  • 体重減少

犬の幽門異常の原因

 犬の幽門異常の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の幽門異常の主な原因
  • 幽門部の病変  幽門部に腫瘍、異物、胃潰瘍胃炎などの異常があると、出口が狭くなって幽門障害を発症することがあります。幽門部近くに存在し、「ガストリン」と呼ばれるホルモンを分泌する「G細胞」が、何らかの関わりを持っていると推測されています。
  • 遺伝  先天性の幽門狭窄は、ボクサーボストンテリアブルドッグといった短頭種に多いとされ、早ければ離乳後、遅くとも1歳までには発症します。後天性の幽門狭窄は、シーズーパグラサアプソトイプードルに多いとされ、好発年齢は10歳前後です。

犬の幽門異常の治療

 犬の幽門異常の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の幽門異常の主な治療法
  • 対症療法  症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的には吐き気止めを投薬したり、食事量を減らすなどです。
  • 外科手術  幽門障害は基本的に進行性で、自然治癒することは期待できません。対症療法でQOL(生活の質)が保てないと判断された場合は、積極的に外科手術が行われることもあります。具体的には、肥大した筋肉を切除してしまう「幽門筋層切開術」、幽門の形を変えてしまう「幽門形成術」、胃と十二指腸をくっつけて近道を作る「胃十二指腸吻合術」などがあります。