トップ2017年・犬ニュース一覧2月の犬ニュース2月2日

犬の3大感染症に対する抗体価を病院内でチェックできる検査キットが登場

 犬の3大感染症に対する抗体価を病院内でチェックできる検査キットが登場したことにより、「毎年接種」以外の選択肢が生まれました(2017.2.2/日本)。

犬用ワクチチェック®

 2017年2月1日から国内での販売が開始されたのは「犬用ワクチチェック®」(VacciCheck)と呼ばれる動物用・体外診断用医薬品。ジステンパーウイルスイヌアデノウイルス(ケンネルコフ)、イヌパルボウイルスに対するIgG抗体価を、23分という短時間で判定することができるという代物です。 犬の3大感染症に対する抗体価を病院内で検査できる「犬用ワクチチェック」(VacciCheck)のコームカード  この検査キットが登場したことにより、これまで理論的根拠が薄いまま慣習化していた「コアワクチンを毎年1回接種する」という選択肢以外に、「抗体価検査を行う」という選択肢が生まれました。検査キットの基本情報は以下です(→出典)。
犬用ワクチチェック®基本情報
  • 開発イスラエルの「Orgenics LTD.」が特許を所有している「Dot-blot ELISA変法」という技術を元に、同じくイスラエルの「Biogal」社が2006年に開発。2016年時点で、北アメリカ、カナダ、オーストラリア、EUなど世界30ヵ国以上で使用されている。
  • 検査方法必要な検体血液量は、血清・血漿なら5μL、抗凝固剤処理全血なら10μL。判定までに要する時間は23分。
  • 判定方法陰性(抗体価が少ない)と陽性(抗体価が十分ある)の基準値は、コーネル大学や米国動物病院協会(AAHA)が採用しているものと同じ。具体的には「中和試験抗体価でCDVは32倍、CAVは16倍」、「赤血球凝集抑制試験抗体価でCPVは80倍」。検査キットではコームカードの色調から0~6のスコアを出し、「0~2」が陰性、「3~6」が陽性と判定される。陰性と判定された場合はワクチンの追加接種が推奨される。
  • 対応病院販売元の公式ホームページ上では対応病院を公開している(→こちら)。検査価格については要問い合わせ。
 以下でご紹介するのは「犬用ワクチチェック®」の使用手順を示した動画です。23分という短時間で3大感染症(ジステンパーウイルス・イヌアデノウイルス・イヌパルボウイルス)に対する抗体価をチェックできます。 元動画は⇒こちら
目次へ

毎年1回接種の根拠は?

 日本国内では「コアワクチンは毎年1回接種する」という慣習があり、多くの飼い主はさしたる疑問も抱かないままこの慣習を受け入れているというのが現状です。しかしこの頻度は必ずしもエビデンス(医学的な証拠)に基づいたものではなく、一部の人からは「頻回なワクチン接種によって犬に不要な副作用を引き起こしているのではないか?」とか「医薬品メーカーと獣医師による詐欺ではないか?」といった批判の声が上がっていました。
 一方、海外においてはワクチンの持続期間に関する研究が熱心に行われており、近年は「コアワクチンの有効期間は3年以上持続する」という結論に落ち着いています。こうした知見は2015年に公開された世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチン接種ガイドラインにも反映されており、「ブースター接種の間隔は最低3年空けること」という形で明確に推奨されています(→詳細)。
目次へ

毎年1回以外の選択肢は?

 「毎年1回接種する」という選択肢以外では、「そもそもワクチンを打たない」というものと「外注で抗体価検査をする」というものがあります。前者に関しては、ワクチン接種による副作用がゼロになる代わりに、感染症にかかったとき重症化してしまうという危険性が高まります。後者に関しては、検査結果が出るまでのプロセスが煩雑というデメリットがあります。具体的には犬から採取した血液をいったん検査会社に外注し、数日後に検査結果を受け取るというものです。こうした手続きは獣医師にとっても飼い主にとっても煩わしく、時として必要なはずのワクチン接種がスキップされてしまうという事態もしばしば起こります。
目次へ

検査キットの存在意義は?

 検査キットが登場したことにより、「ワクチンを打たない」とも「外注で抗体価検査をする」とも違う「病院内で抗体価検査行う」という第三の選択肢が生まれました。
 病院内での抗体価判定が可能となったことにより、「毎年接種」で懸念されている過剰なワクチン接種による副作用の危険性を回避することができるようになりました。また30分程度で検査結果が出るという特徴を有していることから、「外注検査」でネックとなる医師と患者双方の煩わしさを解消することにもつながりました。あとは「ワクチンよりも料金が安い」という特典がついてきたら完璧ですが、恐らくそうはいかないでしょう。 母犬からの受動免疫(移行抗体)の消失とワクチンの接種時期  世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチン接種ガイドラインでは、具体的な商品名までは明記していないものの、「子犬の最後の接種が終わってから4週間以降のタイミングで抗体テストを行い、ネガティブだったときだけブースターを接種した方がよい」としています(→詳細)。しかし、その後どのくらいの頻度で抗体検査を行うかに関してはあいまいな態度を取っており、「毎年行ってもいいですけど、それほど根拠はないですよ」という意味深な表現をしています(→P42参照)。それに対して販売元は、初年度以降は定期的な健康診断とともに行うことを推奨しているようです(→出典)。暗に「年1回行ってください」と読み取ることもできますが、この辺はエビデンスベースというより、ビジネスベースの提案なのかもしれません。
 近年日本国内では、化血研、日生研、微生物化学研究所といった動物用ワクチン製造メーカーによる耳を疑うような不祥事が相次いでいます。消費者心理としては「こんな奴らの作ったものは信用できない!」とか「こんな奴らの売り上げに貢献したくない!」といった感じではないでしょうか。このタイミングでワクチン接種以外の選択肢が生まれたことは、犬の飼い主にとっては朗報といえるでしょう。以下は関連資料です。
資料