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月見草オイル~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「月見草オイル」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

月見草オイルの成分

 月見草(Oenothera tetraptera)はアカバナ科マツヨイグサ属に属する二年草または多年草。同じマツヨイグサ属の「マツヨイグサ」(O. stricta)と「メマツヨイグサ」(O. biennis)を合わせて「ツキミソウ」と呼ぶこともあります。 ドッグフードの成分として用いられる「月見草オイル」  月見草オイルといった場合はメマツヨイグサの種子から抽出した油のことを指します。厳密な意味では「メマツヨイグサオイル」のはずですが、先述したとおりアカバナ科マツヨイグサ属の植物が総称的に「月見草」と呼ばれているため、便宜上「メマツヨイグサオイル→月見草オイル」と置き換えられています。恐らくそちらの方が耳に馴染みやすいからでしょう。

月見草オイルは安全?危険?

 月見草オイルを犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?
 γ(ガンマ)-リノレン酸を多く含む月見草オイルは古くから民間療法に用いられてきました。しかし人間を対象とした調査で有効性が確認されたものはありません。具体的には湿疹、関節リウマチ、月経前症候群、更年期症状、注意欠陥多動性障害(ADHD)、アトピー性皮膚炎などです。
 一方、てんかん患者にメマツヨイグサのオイルを用いると発作を引き起こす危険性が指摘されていますが、どのようなメカニズムで発症するのかに関してはよくわかっていません。あまりにも大量に摂取すると腹痛、吐き気、軟便などを引き起こす危険性があります。

アトピー性皮膚炎に効く?

 月見草オイルに関してはアトピー性皮膚炎を抱えた犬を対象とした給餌試験がいくつか行われています。改善が見られたという報告はあるものの、悪化したという報告はないようです。以下で一例をご紹介します。

Bond, 1992

 アトピー性皮膚炎を抱えた犬を対象とし、オリーブオイルとミックスオイル(月見草オイル+魚油)を8週間にわたって給餌するという試験が行われました出典資料:Bond, 1992
 その結果、ミックスオイルを給餌されていたグループ11頭中9頭においては、試験終了後の症状に変化は見られなかったといいます。一方、オリーブオイルを給餌されていたグループでは症状の悪化が見られ、特に抗炎症物質の前駆体であるジホモ-γ-リノレン酸の減少が確認されました。血漿中のリノール酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸濃度の平均値に関してはグループ間で格差を見られなかったとも。
 調査チームはアトピー性皮膚炎のコントロールにオリーブオイルは向いていないと結論づけています。

Scott, 1992

 アトピー性皮膚炎もしくは特発性のそう痒症を抱えた20頭の犬を対象とし、4種類の脂肪酸を含んだドッグフードを給餌するという試験が行われました出典資料:Scott, 1992。具体的に用いられたのは月見草オイル、冷水魚油、DVM Derm Caps(医薬品)、EfaVet(医薬品)です。
 各脂肪酸を2週間ずつ摂取し、それぞれの給餌期間における症状の度合いを評価したところ、月見草オイルを摂取していたフェイズにおいて、2頭(10%)の犬で「良好~とても良い」というレベルの大幅な改善が見られたと言います。

Scarff, 1992

 非季節性のアトピー性皮膚炎を抱えた35頭の犬を対象とし、月見草オイルが皮膚の状態に及ぼす影響が検証されました出典資料:Scarff, 1992
 その結果、月見草オイルを摂取していたグループにおいては、血漿リン脂質中、特にリノール酸とアラキドン酸の上昇が顕著で、紅斑の改善が見られたと言います。
ドッグフードに月見草オイルが含まれている場合、上記したアトピー性皮膚炎やそう痒症(かいかい)に対する効果を狙っているのかもしれません。しかし皮膚疾患を抱えていない健全な犬における安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていません。