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ココナッツオイル~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「ココナッツオイル」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

ココナッツオイルの成分

 ココナッツオイル(ココナツ油)は乾燥させたココヤシの実から胚乳層を取り出し、それを圧搾して採取する植物油のこと。99%が脂質で構成されており、さらに脂質のうち48%はラウリン酸です。その他の成分としてはミリスチン酸(16%)、パルミチン酸(9.5%)、カプリン酸(7%)などが挙げられます。 ドッグフードの成分として用いられる「ココナッツオイル」  健康食品業界においては一般的に「ダイエットによい」「便秘によい」「認知症を予防する」などと言われていますが、人間を対象とした調査では実証されていません。アメリカでは「一般的に安全と認識される物質」(GRAS)に分類されています。

ココナッツオイルは安全?危険?

 ココナッツオイルを犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはココナッツオイルに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

ラウリン酸

 ラウリン酸(lauric acid)は炭素数12の飽和脂肪酸の一種。ココナッツオイルの飽和脂肪酸中、およそ半分を占めています。人間を対象とした調査では、パームオレインやオリーブオイルと比較した時、HDL(高比重リポタンパク)とLDL(低比重リポタンパク)を高める可能性が示されています。しかし実際に心血管系の疾患につながるかどうかまではわかっていません。
 なお犬を対象として行われた給餌試験がないため、安全性、危険性、および適正量に関しては不明です。

コカミドDEA

 コカミドDEAはココナッツオイルとジエタノールアミンから生成される物質。起泡剤や親水性増粘剤としてシャンプーやハンドソープなどに用いられます。国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類リストでは「2B」、すなわち人に対する発がん性を否定できないと分類されていますが、食品に用いられることはありませんので大丈夫でしょう。

血清コレステロール値の上昇効果

 ココナツオイルに含まれるラウリン酸が血清コレステロール値やリン脂質値を上昇させる効果が確認されています。
 脂質の組成をいろいろに変えたフードを給餌し、前後における血清コレステロール値を調べたところ、以下のような特徴が見られたと言います出典資料:Grande, 1962
さまざまな脂質と血清コレステロール値の上昇
  • ココナツオイル上昇幅は146mg/100 mL | 主成分は炭素数12のラウリン酸
  • 炭素数12ミックス上昇幅は137mg/100 mL | 成分はココナツオイル60%とオリーブオイル40%
  • 炭素数18ミックス上昇幅は76mg/100 mL | 成分はオレオストック80%とコーンオイル20%
  • 中鎖脂肪酸ミックス上昇幅は21mg/100 mL | 中鎖脂肪酸とオリーブオイル6%および紅花油2%の混合
 コレステロール上昇効果は、炭素数が12もしくは14の飽和脂肪酸において強いことが明らかになりました。また後に行われた調査により、上昇幅は甲状腺切除術を受けた犬においてさらに大きくなる現象も確認されています出典資料:Grande, 1968
犬においては血清コレステロール値とアテローム硬化症との間に因果関係が認められていないため、この現象が望ましいのか望ましくないのかに関してはよくわかっていません。