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キャノーラオイル(菜種油)~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「キャノーラオイル」(菜種油)。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

キャノーラオイルの成分

 キャノーラオイル(canola oil)はセイヨウアブラナから採取した植物油脂の一種。菜種油の一種ですが、カナダで開発された「キャノーラ」と呼ばれる品種を原料としたときは特に「キャノーラオイル」(カノラ油)と呼ばれます。 ドッグフードの成分として用いられる「キャノーラオイル」  キャノーラオイルの特徴は、不飽和脂肪酸のうちではオレイン酸が約60%と最も多く、後述するエルカ酸が2%未満という点です。

キャノーラオイルは安全?危険?

 キャノーラオイルを犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはキャノーラオイルに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

エルカ酸

 エルカ酸(erucic acid, エルシン酸とも)はオメガ9脂肪酸の一種。
 人では証明されていないものの、エルカ酸を大量に摂取した動物では心筋リピドーシスを発症し、心臓の組織が損傷を受けることが確認されています。幼若ラットや子豚を対象とした給餌試験により、リピドーシスの無毒性量(NOAEL)が体重1kg当たり1日0.7gと推計されるため、EFSA(欧州食品安全機関)では人間におけるエルカ酸の耐容一日摂取量(TDI)は7mgと設定しています出典資料:EFSA
 なおエルカ酸の含有量が2%に抑えられたキャノーラオイルにおいては、通常の食事を通して摂取量がTDIを超える心配はないとのこと。

グルコシノレート

 グルコシノレート(glucosinolates)はアブラナ科の植物に多く含まれる代謝産物の一種。辛味を有していることからカラシ油配糖体とも呼ばれます。菜種油にはほとんど含まれていませんが、油を搾り取った後のミールの方には高濃度で含まれています。 グルコシノレートを高濃度で含むキャノーラの絞りカス  酵素の働きによりイソチオシアネートやゴイトリンといった物質に転換され、甲状腺におけるヨウ素の取り込みを阻害します。その結果、長期間摂取すると甲状腺ホルモンの合成を抑制して甲状腺腫を発症する危険性が指摘されています。ウサギにおける摂取量の上限値はエサ1kg当たり8mmolまで、単胃動物は1~1.5mmolまでとされています出典資料:EFSA

オレイン酸

 オレイン酸(oleic acid)はラード(豚脂)やタロー(牛脂)などの動物性脂肪やオリーブオイルを始めとする植物油に多く含まれている脂肪酸の一種。必須脂肪酸であるリノール酸やα-リノレン酸の前駆物質です。
 一般的に「悪玉コレステロール」と称されるLDLコレステロールを減らし、逆に「善玉コレステロール」と称されるHDLコレステロールを増やす効果があるとされていますが、完全には証明されていません。またオリーブオイルが持つ降圧作用の原因物質として想定されていますが、こちらも証明はされていません。
オレイン酸を皮膚に直接塗りつけた場合、表面にある角質層の脂質構造が崩れ、バリア機能が弱まる危険性が指摘されています。