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セルロース~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「セルロース」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?

セルロースの成分

 セルロース(cellulose)は植物細胞の細胞壁を構成している炭水化物の一種。β-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した構造をしています。糖質と食物繊維からなる炭水化物のうち、生体内で消化されないことから後者の「食物繊維」の方に分類されます。化学構造式は以下です。 ドッグフードの成分として用いられる「セルロース」  日本では厚生労働省によって数種類の「メチルセルロース」が指定添加物として認可されており、「糊料」として利用されています。使用基準は2%までです。また同時に「微結晶セルロース」が既存添加物として認可されており、増粘安定剤や製造用剤として利用されています。こちらの使用基準は特に設定されていません。
 海外ではJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)でもEFSA(欧州食品安全機関)でも一日摂取許容量(ADI)や使用基準は設定されておらず、国際がん研究機関(IARC)によって発がん性も確認されていません。

セルロースは安全?危険?

 セルロースを犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはセルロースに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

腸内細菌の発酵を受けない

 セルロースは動物の体内で消化されない食物繊維の一種ですが、腸内細菌叢の発酵を受けるわけでもないようです。
 犬の糞便を採取して実験室内に腸内環境を再現し、食物繊維が持つ発酵性を有機物消失率(OMD)と呼ばれる指標を用いて調べました。その結果、ビートパルプのOMDが33~38%だったのに対し、セルロースのそれは2~4%止まりだったと言います。
 また犬に実際に給餌した時の発酵性を全消化管消化率という指標を用いて調べたところ、ビートパルプでは29%だったのに対し、セルロースでは11%だったとも出典資料:Godoy, 2013
 これらのデータが示しているのは、セルロースが腸内細菌による発酵作用をほとんど受けないということです。腸内細菌の数を増やしたり細菌の代謝産物である短鎖脂肪酸の量を増やしたりするのではなく、糞便の水分含有量を増やして便通を良くする効果が強いと考えられています。

糞便のクオリティを高める

 一口にセルロースと言っても繊維の長さには様々なバリエーションがあります。そしてこの繊維の長さが糞便のクオリティに大きな影響を及ぼすようです。
 10頭のビーグル犬に対し繊維の長さが異なる6種類のセルロースを給餌するという実験が行われました。給餌量はフードの乾燥重量中10%という割合です出典資料:Wichert, 2002
 10日間の給餌期間が終了したタイミングで糞便を採取し、様々な角度から検証したところ、pHはほとんど変化しなかったといいます。この事実から、セルロースは腸内細菌の発酵作用はほとんど受けないことが追認されました。
 食物繊維を加えられていなかった犬に比べ、セルロースを添加されていた犬においては、糞便中の乾燥物重量が増えたといいます。しかしこの傾向はセルロースの繊維長が長くなるほど消えてゆき、最も長い300μmセルロースと無添加フードとの間に格差は見られなくなりました。
 セルロースの添加により見られた大きな特徴の一つは、硬さという観点において糞便のクオリティが上がったという点です。 この傾向は繊維が長くなればなるほど増大しました。棒グラフの下に記載してある数値が繊維長です。最も短い「32~75μm」のものは微結晶セルロースとも呼ばれます。
セルロースの繊維長と糞便クオリティの相関関係
犬の糞便クオリティはセルロースの繊維長が長くなるほど改善する  セルロースは基本的に腸内細菌叢の発酵を受けず、水分と結合しつつ固形成分の「つなぎ」として機能することにより糞便の形状維持に役立っているようです。 糞便のクオリティを高める効果は、セルロース繊維が長い方が強まると言う可能性も示されました。
セルロースを便秘気味の犬に給餌した場合、水分含量が増えるので便通が良くなるかもしれません。日本では肥満犬向けのドッグフードによく含まれています。