トップ犬の食事ドッグフード成分・大辞典サプリメントビフィズス菌

ビフィズス菌(アニマリス・シュードロンガム・ブレーベ)~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「ビフィズス菌」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?

ビフィズス菌の成分

 ビフィズス菌(Bifidobacterium)は動物の腸管内に生息する偏性嫌気性菌の一種。乳酸や酢酸を大量に生成することで知られており、ヨーグルトの製造工程に利用している商品もあります。名前の由来がラテン語で分岐を意味する「bifid」であることから分かる通り、電子顕微鏡で見た形はV字やY字に分岐しています。 ドッグフードの成分として用いられる「ビフィズス菌」の電子顕微鏡拡大写真  ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム)はドッグフードの中に含まれていたり、サプリメントとして個別に売られていたりします。フードのラベルでよく見かける株(系統)はいくつかありますが、全てに共通しているポイントは以下です。
  • さまざまな系統(菌株)が含まれる
  • 菌株によって作用が異なる
  • 菌株によって胃酸や胆汁酸への抵抗性が違う
  • 適量や使用基準はほとんどわかっていない
 微妙に作用が異なるにも関わらず、多くの場合ドッグフードのラベルには菌株も含有量も記載されていません。どの系統がどのくらい含まれており、どのような作用が期待できるのかに関してはメーカーに問い合わせる必要があります。また離乳直後まで検出できるものの、その後は加齢とともに腸管内からいなくなるという奇妙な現象が確認されています。犬においてそもそも「善玉菌」なのかどうか自体がイマイチよくわかっていません。 犬の腸内細菌叢は加齢とともに変化する  ドッグフードや犬向けサプリメントに用いられているのは「アニマリス」「シュードロンガム」「ブレーベ」「サーモフィラス」です。どのような作用や効果を持っているのかを学術論文とともに具体的に見ていきましょう。

ビフィズス菌は安全?危険?

 ビフィズス菌を犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはビフィズス菌に関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

ビフィドバクテリウム・アニマリス

 ビフィドバクテリウム・アニマリス(B.animalis)はグラム陽性嫌気性菌の一種。人間を含むほとんどの哺乳動物が腸管内に保有しています。一部のドッグフードに含まれている「ビフィドバクテリウム・ラクティス」もアニマリスの亜種に含まれます。胃酸や胆汁酸に触れても生きたまま大腸まで届くことから、マウスだけでなく犬においても数多くの給餌試験が行われている菌の一つです。

アニマリスAHC7

 アイルランド国立大学のチームは「ビフィドバクテリウム・アニマリス AHC7」(B.animalis AHC7)がもつプロバイオティクスとしての効果を検証しました。その結果、少なくともマウスにおいては腸管上皮細胞に接着しやすく、サルモネラ菌の移動を抑制する効果が見られたといいます。次いで、11頭(メス4+オス7 | 平均年齢8.4歳)の犬を対象とし、1日150億CFUの錠剤を6週間に渡って給餌するという試験を行ったところ、糞便中のビフィズス菌に増減は見られなかったものの、クロストリジウム属(特に下痢症の原因となりうるディフィシル)の減少が確認されたとのこと出典資料:Mahony, 2009)
 アイルランド国立大学のチームはサルモネラ菌に感染して4時間が経過したタイミングでマウス体内におけるNF-κB(炎症応答の中核で機能する転写因子)の活性度を比較したところ、何も与えていないグループとエンテロコッカス・フェシウムを与えられたグループでは著名な変化が見られなかったのに対し、「AHC7」を給餌されたグループではNF-κB反応の減弱化が見られたといいます。また腸管のパイエル板を用いた実験では腫瘍壊死因子(TNF-α)とインターフェロン(IFN-γ)の分泌が抑えられたとも。こうした結果から、「AHC7」は病原体によって引き起こされるNF-κBの反応を抑える効果があるのではないかと結論づけています出典資料:Mahony, 2010)
 急性の下痢症を患う犬を対象とし、プラセボを18頭、「AHC7(1日2000億CFU)」を13頭に給餌した比較試験が行われました。その結果、症状の改善に要した日数に関し、プラセボが6.6日だったのに対しAHC7グループでは3.9日で、統計的に有意な短縮化だったといいます出典資料:Kelly, 2009)
 安全性・使用基準に関しては、20頭(オス11頭)の犬を対象とし「AHC7」を5000億CFU含んだ錠剤を12週間に渡って給餌した試験において副作用は確認されませんでした出典資料:Mahony, 2010)。またEFSA(欧州食品安全機関)でも「AHC7」を主成分とした「Prostora Max®」と呼ばれるサプリメントを検証し、1日100億CFUまでなら安全性に問題はないという見解を示しています。だたし効果に関しては保留的な態度を取っています出典資料:EFSA, 2012)

アニマリスB/12

 スロバキア科学アカデミーの調査チームは犬たちをランダムで10頭ずつ2つのグループに分け、49日間の給餌試験中、一方にだけ「B/12(100億CFU)」系統を14日間に渡って給餌しました。その結果、糞便中における乳酸菌増加と大腸菌群減少が確認されたといいます。また血液生化学検査ではトリグリセリドと濃度の減少、ALTとアルカリフォスファターゼ濃度の増加、白血球(特に好中球)による食作用の活性化が見られたとも。こうした変化は給餌終了から数週間は持続したそうです出典資料:Strompfova, 2014)

ラクティスLKM512

 「ラクティスLKM512」と呼ばれる系統を犬に対して1日1000億CFU、14日間に渡って給餌したところ、生きた状態で腸管を通過することが確認できたといいます。ただしこの調査では「消化管内で死滅しない」ことがわかっただけで、どのような効果があるのかまでは確認されていません出典資料:Nakamura, 2015)

ビフィドバクテリウム・シュードロンガム

 ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(B.pseudolongum)はウシやブタの腸管に生息しているビフィズス菌の一種。人間の腸管から単離されたことがないことから、種特異性が高いのではないかと考えられています。
 米国では「シュードロンガム」が犬向けのプロバイオティクス特許が取得されており、実験室レベルの調査ではサルモネラ菌、リステリア、大腸菌の増殖抑制効果が示唆されています出典資料:Boileau, 2017)。また日本においても犬の腸管から培養したシュードロンガムはペットフードメーカーが特許を取得しているようです出典資料:特開2010178753)。家畜用のほか犬猫向けのサプリメント(ビヒラクチン®)としても国内ですでに販売されています。

VBP(生きた菌)

 日清製粉の調査班は下痢症を患う犬を10頭ずつ2つのグループに分け、一方にだけシュードロンガム生菌(※株は不明)を給餌して300日間に及ぶ長期的な観察を行いました。その結果、下痢を示した日数に関し比較対照グループが14日だったのに対しシュードロンガムグループでは6日と、統計的に有意なレベルで少なかったといいます。また29頭の犬にシュードロンガムを870日間給餌し、プラセボを与えられた28頭の対照グループ(840日間)と比較したところ、下痢日数に関して24日と7日という大きな格差が見られ、シュードロンガムグループで少なかったとも出典資料:Kimura, 1982)

シュードロンガムJBP01

 岐阜大学の調査チームは5頭のオスのビーグル(3~6歳)を対象とし「シュードロンガム」(JBP01株)を腸溶性カプセルという形で経口的に摂取させたところ、30日後の末梢血検査においてCD4陽性リンパ球とCD3陽性リンパ球の数、およびCD4/CD8比率が統計的に有意なレベルで高かったといいます。免疫機構を特殊な物質で刺激したところ、CD25陽性リンパ球の数が増えたとも。こうした結果から「シュードロンガム」には免疫応答を増強する作用があるのではないかと結論づけています出典資料:Fukata, 2005)
 岐阜大学の調査チームは9頭(オス5頭 | 5ヵ月~5歳齢)のペット犬を対象とし、「シュードロンガム」(JBP01株=30億CFU)を含む腸溶性カプセル製剤を犬に経口投与して糞便中の細菌叢および便臭に及ぼす影響を検討しました。2週間投与した結果、糞便中のビフィズス菌数は投与2週間目に有意に増加し、レシチナーゼ陽性クロストリジウム属に関しては9頭中2頭において検出されなくなったといいます。また投与期間中の糞便臭は有意に減少したとも出典資料:Fukata, 2002)

ビフィドバクテリウム・ブレーベ

 ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)は細く短い形態が特徴のビフィズス菌の一種。人間の乳児の大腸内に多く含まれており、ヨーグルトなどの発酵乳製品の製造に使用されています。
 安全性や使用基準に関しては、日本の森永乳業が米国・食品医薬品局よりGRAS(一般的に安全とみなされる食品)認証を受けています出典資料:森永乳業)。しかし給餌試験はマウスや人間がメインで、犬を対象としたものは確認できません。

ブレーベA1

 森永乳業の調査チームはアルツハイマー型認知症を発症したマウスを対象とし、「ビフィドバクテリウム・ブレーベA1」がもつプロバイオティクスとしての効果を検証しました。その結果、給餌されたマウスにおいては迷路内において迷う頻度が減り、また受動的な回避テストにおける反応時間が短縮したといいます。さらに菌の代謝産物であるアセテート(酢酸塩)が認知機能を部分的に改善した可能性が確認されたとも。海馬における炎症および免疫反応性の遺伝子の発現を抑制する作用が見られたことから、認知症の予防に寄与するかもしれないとしています出典資料:Kobayashi, 2017)

ブレーベUCC2003

 マウスを対象とした調査では、「ブレーベUCC2003」系統が胃酸や胆汁酸によって死滅せず、大腸まで届くこと、および全身性感染症の罹患頻度が下がる可能性が確認されています出典資料:Sheelan, 2007)
 別の調査では、ブレーベ(株不明)がインターロイキン-10を産生するTr1細胞を消化管内に誘引することで炎症を抑制するのではないかと推測されています出典資料:Jeon, 2012)

ブレーベM-16V

 予定日よりも速く産まれた人の子供を対象として行われた「B.ブレーベM-16V」の投与試験を後ろ向きにメタ分析したところ、遅発性の敗血症や死亡率のリスクが低下する可能性が示されているものの、エビデンス強度(信憑性の度合い)という観点からは「低い」と結論づけています出典資料:Gayatri, 2017)

ビフィドバクテリウム・サーモフィラス

 ビフィドバクテリウム・サーモフィラス(B.thermophilum)はウシ腸管や動物の糞便(ブタ・ウシ・人間の赤ちゃん)などから分離されるビフィズス菌の一種。低酸素、pH4.0、47℃といった環境でも増殖が可能です。マウスやニワトリに対する給餌試験は行われているものの、犬の体内でどのように振る舞うのかまではわかっていません。

ペプチドグリカン

 マウスを2つのグループに分け、一方にだけナチュラルキラー細胞の早期崩壊、サーモフィラス(※系統不明)由来のペプチドグリカンを3週間に渡って給餌するという試験が行われました。その結果、給餌グループでだけ細胞傷害性Tリンパ球およびコンカナバリンAによる活性を受けたリンパ球の活性が高くなったといいます出典資料:Sasaki, 1994)
 大腸菌に感染したマウスを対象とし、サーモフィラス(※系統不明)由来のペプチドグリカンを1回だけ投与するという試験が行われました。その結果、給餌グループにおける生存率が統計的に有意なレベルで高かったといいます。また末梢血、肝臓、脾臓中の大腸菌数が有意に少なく、また肝臓の重量、脾臓における芽球様細胞が増加したとも出典資料:Sasaki, 1994)

サーモフィラスRBL67

 「RBL67」と呼ばれる系統がブタの腸管内でサルモネラ菌の増殖を抑制する効果が確認されています。SPI1と呼ばれる遺伝子の発現を引き起こし、エネルギー消費量が増えることでサルモネラ菌と競合しているのではないかと推測されています。出典資料:Tanner, 2016)
ビフィズス菌の系統(菌株)や含有量が記載されていない場合、安全性や期待できる効果の検証ができません。そもそも犬の腸管に届くのかどうかや影響がわからないまま、実験的に使用されている菌株(ブレーベやサーモフィラス)もあるようです。腸内細菌に関する詳細は「犬の腸内細菌(フローラ)」をご覧ください。