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鶏を原料としたドッグフードの成分~製造工程から安全性まで

 ドッグフードのラベルに記された「鶏肉粉」(チキンミール)。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

鶏を原料としたドッグフードの成分

 ペットフードのラベルに記載されている「チキンミール」「鶏脂」「フェザーミール」とは、基本的に不要部位を加工したものです。ここで言う「不要部位」とは、鶏を食肉に加工する過程で発生する膨大な量のいらない部分のことを指します。具体的には羽根(フェザー)、骨(ガラ)、皮膚、脂肪、内臓、血液、足(モミジ)、頭部(とさか)などです。
 食肉用に飼育されている通称「ブロイラー」と呼ばれる鶏を例に取ると、体重の約50%が食肉(もも肉 | むね肉 | ささみ | きも | すなぎも | 手羽もと | 手羽さき)となりますので、残りの50%が不要部位ということになります。全体重のうち22%が骨(ガラ)、17.5%が内臓、7.5%が羽毛(フェザー)や血液という内訳です。
 ドッグフードのラベルでよく見られる具体的な表記例は以下です。「エキス」は煮詰めて取り出した抽出液、「パウダー」や「ミール」(meal)は粉々に砕いた状態を指します。
鶏を原料とした成分一覧
  • ささみパウダー
  • チキン
  • チキンエキス
  • チキンハート生肉
  • チキンボーン
  • チキンミール
  • チキンレバーパウダー
  • チキンレバー生肉
  • チキン肝臓
  • チキン正肉
  • チキン生肉
  • ディハイドレート鶏肉
  • ドライチキン
  • フレッシュチキン
  • 鶏レバー
  • 鶏心臓
  • 鶏肉
  • 鶏肉(ささみ)
  • 鶏肉粉
 なお「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」によると魚や動物(牛・豚など)の不要物がと畜場や食鳥処理場から生じた場合は「動物系固形不要物」、その後の製造業から生じた場合は「動植物性残渣(ざんさ)」として区別されます。しかし混乱を避けるため、当ページ内では便宜上「不要部位」と統一して表現します。

鶏肉粉・鶏脂のレンダリング

 食肉に加工する過程で生じた鶏の不要部位は「FAMIC」(独立行政法人農林水産消費安全技術センター)による審査に適合した製造基準適合確認事業場 に送られ、「チキンミール」「鶏脂」「フェザーミール」といった形に加工されます。これが「レンダリング」(rendering)と呼ばれる工程で、レンダリングを行う業者は「レンダラー」(renderer)とも呼ばれます。
 以下はチキンミールや鶏脂が製造されてペットフードに使用されるまでの一般的な流れです。

養鶏場

 養鶏場(ようけいじょう)とは、食肉に加工する肉用鶏(ブロイラー)や卵を採取することを目的として採卵鶏を飼養している業者のことです。
 牛や豚の畜産業者が家畜を食肉として出荷する場合はと畜場法の規制を受けますが、養鶏農家が鶏を食肉として出荷する場合は、「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」という別の法律による規制を受けます。
 食鳥処理場に送り出された鶏たちは、上記した法律の定める手順に則って屠鳥(とちょう=処分すること)された後、食品衛生法によって許認可を受けた食肉処理施設において食肉加工されます。
 一方、家畜伝染病予防法で定められている家禽コレラ、家禽ペスト(一部の鳥インフルエンザ含む)、ニューカッスル病、家禽サルモネラ感染症が養鶏農家内で発生した場合は、都道府県知事の判断による殺処分が命じられることがあります。これが「法令殺」です。それに対し、上記した感染症以外や空調の故障による熱中症で鶏が大量死してしまうことがあり、こちらは「自主淘汰」と呼ばれます。
 いずれにしても、日本国内ではペット向けに使用できる原材料が「人間の食用としてと畜された獣畜や食鳥の副産物」と規定されていますので、上記したような理由で死亡したり殺された鶏が原料として用いられることは、理論上はありません。

食鳥処理場

 食鳥処理場とは、食鳥検査に合格した鶏から食用に適する可食部分を供給する施設のことです。法律により、年間処理数が30万羽を超える大規模処理場の場合は公的機関の食鳥検査員(獣医師)による検査が必要と規定されています。一方、30万羽未満の処理場は「認定小規模食鳥処理場」として扱われ、公的検査は不要となりますが、管理者が実施した異常確認の結果を都道府県知事に報告しなければなりません。
 規模にかかわらず食鳥処理場で行われる検査は、鶏が生きている時に行う「生体検査」、羽根を除去した後に行う「脱羽後検査」、屠鳥・解体した後に行う「内臓摘出後検査」などです。具体的には抗菌性物質が残っていないか、食中毒菌に汚染されていないかなどが検査され、合格したものだけが加工に回されます。
 加工された後の食肉に対しては厚生労働省がポジティブリスト制度に則り「食品中の残留農薬等検査」を行って食肉の品質管理をしています。もし基準値を超えた場合は食品衛生法違反で廃棄処分となります。

鶏のレンダリング業者

 レンダリング業者とは、国から肉粉、食用油脂、フェザーミールを製造する許可を受けた業者のことです。レンダリング業者は食鳥処理場やカット場から回収した鶏の不要部位から以下のような製品を製造します。
鶏副産物を原料とする製品
  • 鶏脂・鶏油鶏脂とは鶏(肉用鶏および採卵鶏)の脂身から生成される食用油のことです。鶏油やチキンオイルなどとも呼ばれます。基本的には人間やペットの口に入りますが、化粧品の原料に転用されることもあります。
  • チキンミール・鶏肉粉チキンミールとは、不要部位や脂身から脂を抽出したあとに残るかすを粉砕し、粗脂肪8~12%程度に調整したものです。豚を原料とした肉粉と混ぜ合わせたときは「ポークチキンミール」などとも呼ばれます。ペットフードの原料となりラベルでも頻繁に見かけますが、原料は肉ではありませんので、誤解を避けるため本来は「脂粉」とか「脂かす」と呼ぶべきでしょう。
  • フェザーミールフェザーミールとは鶏の羽を粉々に砕いてできる粉末状のタンパク源のことです。羽粉とも呼ばれます。チキンミールとは全く別の製造ラインで加工されます。
 牛、ヒツジ、ヤギなどの反芻(はんすう)動物のレンダリングを行う場合は、ブタ、ニワトリ、魚などの製造ラインとは明確に分けなければなりません。もし製造ラインをごちゃごちゃにすると、飼料安全法違反となり営業停止処分を喰らいます。また、製造された加工製品は家畜の飼料としても、ペットフードの原料としても特別な許可がない限り出荷できなくなります。

調製加工業者

 調製加工業者とはチキンミールなどを収集し、プレス、粉砕、成分調製を行う業者のことです。ペットフードの原料として出荷するためには、業者がFAMICによる審査に合格し、なおかつ加工製品に肉骨粉等供給管理票を添付しなければなりません。

ペットフード製造業者

 ペットフード製造業者とは、成分調整されたチキンミールやフェザーミールを原料として仕入れ、ペットフードを製造する業者のことです。事前にFAMICに申請を出し、現地見分による審査に合格しなければ営業はできません。ここを経てようやく一般の飼い主の手元にペットフードが届きます。
 なお日本国内ではペット向けに使用できる原材料が「人間の食用としてと畜された獣畜や食鳥の副産物」と規定されています。ですから必然的に「4D」と呼ばれる「病死した動物」「食鳥検査で不合格となった動物」「安楽死薬で死亡した動物」などがペットフードに混入することは、ルール違反がない限りありません。

輸入された鶏肉粉等のリスク

 国内においてはチキンミールやフェザーミールの原料が厳密に規定されていることがわかりました。では海外で製造された製品はどうなのでしょうか?
 国外からチキンミール等を輸入しようとする場合も規制がかかります。まずどんな国からでも輸入できるわけではありません。輸入が許されているのは、農林水産省との間で「家畜衛生条件」が締結されている国だけです。「家畜衛生条件が締結されている」とは、日本国内で実行されているリスク管理と同等以上の管理が相手国側でも行われていることを意味します。具体的には「人間の食用としてと畜された獣畜や食鳥の副産物」だけを用いたチキンミールやフェザーミールとなるでしょう。
 国家間で家畜衛生条件が締結され、海外の輸出国から製造施設が具体的に指定されると、日本国内の輸入業者はFAMICが定める手続を行い、指定された製造施設だけからペットフード用原料としてチキンミール等を輸入することが可能となります。要するに適当な国にあるよくわからない会社から、日本国内に好き勝手に輸入できるわけではないということです。
 ちなみに「動物の骨粉、肉粉、肉骨粉、血粉、皮粉、羽粉、蹄角粉及び臓器粉」は家畜伝染病予防法によって指定検疫物、すなわち輸出国と輸入国双方の検査と許可が必要なものに指定されていますので、密輸入することは容易ではありません。

輸入されたペットフードのリスク

 海外で製造されたペットフードはどうなのでしょう?実は最もリスクが高いのはこのパターンだと考えられます。
 先述したとおり、日本国内でペットフードを製造しようとすると、原材料に一定に規制がかかり、汚染物質が製造工程から排除されるような仕組みになっています。しかし海外において同様の仕組みが機能しているとは限りません。例えば、安楽死薬で殺した家畜の肉をペットフードに転用するなどです。実際に2017年と2018年には、アメリカ国内で犬用のウェットフードに安楽死薬の一種「ペントバルビタール」が混入し、食べた犬1頭が死亡するという事件が起こっています。
 日本の法律では、すでに製造されたペットフードは家畜伝染病予防法が定める指定検疫物にはなっていませんので、検査の対象にはなりません。また日本のペットフード安全法が定める有害物質の基準項目や上限値も、国が変われば変動してしまうことがあります。要するに海外製のペットフードには何が入っているのかわからないということです。
 2017年、人間や動物の食品の安全性を客観的に評価する「Clean Label Project」は、アメリカ国内で流通している85のペットフードブランドを対象とし130種近くの化学物質(重金属など)の含有率調査を行いました。その結果、鉛、水銀、ビスフェノールA、カドミウムを無視できないレベルで含有しているフードが数多く発見されたといいます。こうした製品をそのまま輸入することは、ちょうどトロイの木馬を国内に持ち込むようなものです。 さまざまな工場のフェザーミール一覧  なお「フェザーミール」に関しては、鶏の羽根に高濃度で含まれるヒ素による健康被害が懸念されています。成長促進薬に含まれるヒ素がケラチンを多く含むフェザーに蓄積し、それを原料としたフェザーミールを介して犬の体内に入っているのではないかというものです。詳しくは姉妹サイト「子猫のへや」内にある以下のページで詳しく解説してありますのでご参照ください。 犬や猫のペットフードに含まれるフェザーミール(鶏の羽根)とヒ素の危険性
輸入業者が受入規格を設けており、フードメーカーの生産工程や海外から輸入したフードをしっかりとチェックしているかどうかは直接問い合わせて確認する必要があります。