しいたけ（椎茸）～安全性と危険性から適正量まで

　レンチナン（lentinan）はしいたけの子実体から抽出した多糖体を精製した物質のことです。人医学の分野では、抗がん剤の一種として静脈内注射または点滴静脈注射という形で用いられます。作用はマクロファージ、T細胞、NK細胞といった免疫細胞の賦活化です。
　ペットフードのラベルに「しいたけ」と記載されているからといって、レンチナンが含まれているわけではありません。また仮にレンチナンが含まれていたとしても、犬が摂取したときの健康増進効果、および健康被害に関してはまったくデータがありません。ですから安全とも危険とも言えず、適正量もわかっていないのが現状です。

　エリタデニン（eritadenine）はシイタケから単離されたアルカロイドの一種。S-アデノシル-L-ホモシステイン加水分解酵素の強力な阻害剤として機能し、血中コレステロールを下げる効果があるとされています。
　日本獣医生命科学大学の調査チームは臨床上健康な12頭のビーグル犬（オス7＋メス5頭 | 平均2歳 | 10.5kg）をランダムで4頭ずつからなる3つのグループに分け、しいたけパウダーを体重1kg当たり1日0mg＜100mg＜800mgの割合で含んだフードを4週間給餌しました（:Kusaba, 2022）。高用量グループのエリタデニン含有量は犬の体重1kg当たり1日0.60～0.65mg、低用量グループのそれは0.075～0.080mgです。
　試験の結果、高用量を給餌されたグループではスーパーオキシドディスムターゼ（SOD＝細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素）の活性度が高まったほか、総コレステロール濃度の低下、末梢白血球中におけるSIRT1（長寿に関連するヒストン脱アセチル化酵素Sir2に近似したSIRT1を生成する遺伝子）のmRNA増加が確認されたといいます。また血漿ALPとLDHは低下傾向（非有意）を示したとも。
　こうした結果から調査チームは、高用量のしいたけパウダー（体重1kg当たり1日800mg）を給餌することでエネルギー代謝と肝機能が改善する可能性があるとしています。

　しいたけに含まれる未知の成分がアレルギー症状を引き起こす危険性があります。その代表格がしいたけ皮膚炎と呼ばれる症状です。
　しいたけ皮膚炎とはしいたけを食べた後、皮膚に炎症が生じる現象のこと。症例は生しいたけ、焼きしいたけ、煮出し汁、スナック菓子の全てで報告されていますので、熱によっては容易に分解されない「何か」が原因になっていると推測されます。
　よくある症状はかゆみ、紅斑、発疹、丘疹などです。1974～2004年の30年間に日本国内でしいたけ皮膚炎を発症した105名（平均50.9歳）を調査した所、4月に発症のピークがみられたといいます。またしいたけパウダーに関しては、薬用目的で1日4gを10週間以上摂取すると、好酸球増加症を引き起こす危険性が指摘されています（Nakamura, 1991）。
　しいたけをアレルゲンとしたしいたけ皮膚炎の犬における症例報告はありません。ただしこれは「犬や猫がしいたけに対してアレルギー反応を示さない」という意味ではありませんので要注意です。皮膚のかゆみや赤みの原因は、ひょっとするとフードに含まれている微量のしいたけ成分かもしれませんので、「しいたけ皮膚炎」というキーワードは覚えておいて損はないでしょう。