犬の新型コロナ感染率・東京版
調査を行ったのは東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部を中心としたチーム。一般的に「新型コロナウイルス」の俗称で知られるSARS-CoV-2の表面にあるスパイクプロテインをターゲット抗原としたELISA(酵素結合免疫吸着法)を開発し、日本国内に暮らしている犬たちにおける感染率を推計しました。
ELISAベースの陽性率
解析対象となったのは2020年7月から2021年1月の期間、東京大学付属の動物病院を様々な理由で受診した東京近郊に暮らしている一般のペット犬、および供血犬の血液サンプル。アニコム損保が設立した預かり施設においてウイルス感染が確認された犬の血漿サンプルを陽性の見本、パンデミックの前の段階で採取された8つの血漿サンプルを陰性の見本とし、合計494頭分の血液をELISAと吸光度で比較検討したところ、陽性率は0.6%(3サンプル)だったといいます。
中和抗体検査での陽性率
上記した事実は犬がSARS-CoV-2に感染している(もしくはしていた)ことを即座に意味しているわけではなく、あくまでもウイルス表面の棘状のタンパク質を認識できると言うだけです。
そこで調査チームはELISAで陽性判定を受けた3サンプルを用い、PCR陽性だった犬の中和抗体価(細胞変性効果を100%抑制するぎりぎりの濃度)と比較することで、血液が実際にウイルスを抑制する能力を有しているかどうかを調べ直しました。その結果、ELISAで最高値を示していた3歳のチワワでだけ陽性が出たといいます。この患犬は整形外科的な理由で動物病院を受診しており、医療記録上では呼吸器系の症状は示していませんでした。また飼い主の感染有無も不明とのこと。
こうした事実から調査チームは、東京近郊に暮らす犬たちにおける新型コロナウイルスの感染率は、ELISAベースの陽性率で0.6%、中和抗体検査ベースの陽性率で0.2%程度と推計するに至りました。 Seroprevalence of antibodies against severe acute respiratory coronavirus 2 (SARS-CoV-2) in household dogs in Japan
Genta Ito, Yuko Goto-Koshino, Yudai Kuroda et al., J. Vet. Med. Sci.83(11): 1722?1725, 2021, DOI:10.1292/jvms.21-0338
そこで調査チームはELISAで陽性判定を受けた3サンプルを用い、PCR陽性だった犬の中和抗体価(細胞変性効果を100%抑制するぎりぎりの濃度)と比較することで、血液が実際にウイルスを抑制する能力を有しているかどうかを調べ直しました。その結果、ELISAで最高値を示していた3歳のチワワでだけ陽性が出たといいます。この患犬は整形外科的な理由で動物病院を受診しており、医療記録上では呼吸器系の症状は示していませんでした。また飼い主の感染有無も不明とのこと。
こうした事実から調査チームは、東京近郊に暮らす犬たちにおける新型コロナウイルスの感染率は、ELISAベースの陽性率で0.6%、中和抗体検査ベースの陽性率で0.2%程度と推計するに至りました。 Seroprevalence of antibodies against severe acute respiratory coronavirus 2 (SARS-CoV-2) in household dogs in Japan
Genta Ito, Yuko Goto-Koshino, Yudai Kuroda et al., J. Vet. Med. Sci.83(11): 1722?1725, 2021, DOI:10.1292/jvms.21-0338
犬は罪なき媒介動物?
犬は動物種として呼吸器表面に発現しているACE2(酵素の一種)が少なく、猫に比べてウイルスに感染しにくく、また仮に感染したとしても症状を示すことは稀であるとされています。
今回の調査で陽性の見本となった犬も、飼い主がコロナに感染したことをきっかけにアニコムの施設に預けられましたが、ウイルスのDNAを検出するPCRテストで陽性反応が出たものの、新型コロナに特有の呼吸器系症状は示していませんでした。また中和抗体テストで陽性と出たチワワも、少なくとも医療記録ベースでは無症状でした。
重症化しないということは犬たちにとって朗報ですが、犬と接する機会がある人間にとっては必ずしもそうではありません。人医学の分野では、感染しているにも関わらず症状を示さない不顕性感染者が病原体の伝播に寄与していることが確認されています。症状が出ないため「健康だ!」と思い込み、マスクもせず周囲の人間に細菌なりウイルスなりを移してしまうという図式です。 たとえウイルスに感染していてもほとんど症状を示さない犬を「不顕性感染者」と考えると、犬たちに全く罪はないものの、ウイルスのベクター(媒介動物)として機能してしまう危険性を完全には否定できません。
最近はペット向けのPCR検査サービスも登場したようです。それよりも実際的な対策は、飼い主が検査を受け、感染が確認されたらペットとの濃厚接触を避けるという方になるでしょう。東京都獣医師会の言葉を借りれば「ペットを守るために大切なことは、飼い主であるあなたが感染しないことなのです」となります。
今回の調査で陽性の見本となった犬も、飼い主がコロナに感染したことをきっかけにアニコムの施設に預けられましたが、ウイルスのDNAを検出するPCRテストで陽性反応が出たものの、新型コロナに特有の呼吸器系症状は示していませんでした。また中和抗体テストで陽性と出たチワワも、少なくとも医療記録ベースでは無症状でした。
重症化しないということは犬たちにとって朗報ですが、犬と接する機会がある人間にとっては必ずしもそうではありません。人医学の分野では、感染しているにも関わらず症状を示さない不顕性感染者が病原体の伝播に寄与していることが確認されています。症状が出ないため「健康だ!」と思い込み、マスクもせず周囲の人間に細菌なりウイルスなりを移してしまうという図式です。 たとえウイルスに感染していてもほとんど症状を示さない犬を「不顕性感染者」と考えると、犬たちに全く罪はないものの、ウイルスのベクター(媒介動物)として機能してしまう危険性を完全には否定できません。
最近はペット向けのPCR検査サービスも登場したようです。それよりも実際的な対策は、飼い主が検査を受け、感染が確認されたらペットとの濃厚接触を避けるという方になるでしょう。東京都獣医師会の言葉を借りれば「ペットを守るために大切なことは、飼い主であるあなたが感染しないことなのです」となります。
ペットからペット、ペットから人への感染性に関しては十分なデータがありません。一方「人→ペット」への感染ルートは複数の調査から強く示唆されていますので、少なくとも飼い主が犬に移すことだけは防ぎましょう。