トップ2021年・犬ニュース一覧11月の犬ニュース11月26日

犬向け療法食に密かに含まれるアレルゲンの危険性

 アレルギー用療法食として売られているにも関わらず、ラベルに記載されていない成分を含む詐欺まがいの商品があることは海外で報告されています。残念ながら日本でも同じ状況があるようです。

療法食に含まれるアレルゲン

 調査を行ったのは大阪にあるアフロ動物病院。アレルギー療法食(いわゆる除去食)として日本国内で市販されているドッグフード5種類(各1ロット)をランダムで選び出し、 犬における主要アレルゲンである「小麦」「卵」「乳」がどの程度の割合で検出されるかを調べました。
 微量を超えるアレルゲン混入の基準として、人医学において採用されている「アレルゲンの総タンパク質量が2種類のキットそれぞれにおいて試料重量1gあたり10μg(10ppm)以上であった場合」を採用した結果が以下です。小麦Gは「小麦グリアジン」、卵A「卵アルブミン」は、乳Cは「乳カゼイン」を意味しています。
犬療法食中のアレルゲン(ppm)
アレルゲンABCDE
小麦G11.820-201.5
小麦2018.8-201.7
卵A-12.4---
-11.2---
乳C-----
-1.1---
 乳はどの製品からも検出されなかった一方、卵は1製品、小麦は3製品から基準値以上が検出されました。20ppm超の製品に関しては、実際どの程度のアレルゲンが含まれているのかわかりません。
イヌの食物アレルギー用療法食における原材料表記のないアレルゲン混入の実態
ペット栄養学会誌(2021), 第24巻(第2号)107-111, DOI:10.11266/jpan.24.2_107

療法食で犬が死ぬ?

 即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果報告(平成23年)によると、人間においてはアレルギー反応の原因の41.9%(1228例/2934例)が誤食であり、そのうちの6.1%(75例/1228例中)が表示ミスと報告されています。今回の調査結果から考えると、犬においても同様のパターンによってアレルギー反応が引き起こされてしまう危険性は十分あるでしょう。

「療法食」というラベル詐欺

 一般社団法人獣医療法食センターによる定義では、食物アレルギー又は食物不耐症用の療法食は「アレルギー又は食物不耐症の原因として認識されにくい原材料を使用する」「アレルギー又は食物不耐症の原因となる特定の原材料の不使用及び製造管理による混入防止」という基準のうち少なくとも1つを満たすこととされています。
 今回の調査により、アレルギー療法食であるにも関わらず、ラベルに表記されていないアレルゲンが混入していることが判明しました。もし製造ラインの使い回しが原因なのだとすると、上記した基準のどちらも満たしておらず、「療法食」を名乗るのは詐欺行為に近くなります。

犬の健康を損なう危険性

 ラベル詐欺の問題は実は海外でもすでに報告されています。例えばイタリアにあるローマ・ラサピエンツァ大学のチームはアレルギー用の除去食として市販されているペットフード40商品(14メーカー)をランダムで選び出し、中に含まれている動物性タンパク質をマイクロアレイ(Microarray)という技術を用いて検出した上で、ラベルに記載されている内容と合致するかどうかを検証しました。
 その結果、ラベルと実際の含有成分が完全に合致していたまともな商品はわずか10商品(ドライ1+ウェットフード9)しかなく、残りはラベルに記載されていた成分が検出されなかったり、逆にラベルに記載されていない成分が検出されたりしたまがいものだったといいます。
 一部の商品に関しては、詐欺行為に等しいだけでなく、動物の健康を損ないうる危険なものであるため処罰の対象となって然るべきだと警告しています。 アレルギー用の除去食として売られているペットフードのラベルは75%が嘘っぱち?!
特にアナフィラキシーという重篤なアレルギー反応では死亡することもありますので、「犬が療法食に殺された」という最悪の事態が起こりうる可能性も否定できません。犬の食品アレルギー