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犬は人間と同じくらいの割合でスギ花粉症にかかっているかも

 季節性アレルギーとして人間の生活の質を著しく低下させる花粉症。異なる環境に暮らしている犬の血液を調べたところ、人間と同じ割合でスギ花粉に対する抗体を保有していることが明らかになりました(2018.9.19/日本)。

詳細

 調査を行ったのは麻布大学が中心となったチーム。異なる環境に暮らしている犬から血液サンプルを採取し、どの程度の割合でスギ花粉に対する抗体を保有しているを検証しました。調査対象となったのは2つの研究施設で飼育されているビーグル71頭と、2つの県(神奈川+兵庫)にある動物病院を受診した犬87頭の血液。後者の飼育環境は様々です。
 ELISAと呼ばれる手法を用いてスギ(Cryptomeria japonica)の抗原として同定されている「Cry j 1」および「Cry j 2」に対する血清IgE抗体を調べました。Cry j 1の抗体価ボーダーラインを「2.159」、Cry j 2のそれを「1.586」と設定して陽性と陰性を判定したところ、統計的に「施設Aよりも施設Bの犬の方がCry j 1とCry j 2両方に対する抗体価が高い」「神奈川県よりも兵庫県の犬の方がCry j 1とCry j 2両方に対する抗体価が高く陽性率も高い」と判断されました。
スギ花粉の血清抗体陽性率
神奈川と兵庫における犬のスギ花粉(Cry j 1および2)血清抗体陽性率
  • 神奈川(64頭)Cry j 1=4.7% | Cry j 2=17.2%
  • 兵庫(23頭)Cry j 1=60.9% | Cry j 2=73.9%
Seroprevalence of Immunoglobulin E Antibodies against Japanese Cedar Pollen Allergens Cry j 1 and Cry j 2 in Dogs Bred in Japan
Kuribayashi et al.,, Vet. Sci. 2018, 5(3), 79; doi:10.3390/vetsci5030079

解説

 犬の中には、血液中にコナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニに対する抗体を保有しているにもかかわらず、症状を示さない個体がいます。今回の調査でも、スギ花粉に対する抗体を保有しているにも関わらず無症状の犬が少なからず見られましたので、アレルギー発症には二次的な要因があるものと推測されます。
 閉鎖された研究施設内部で飼育されているビーグル犬においてもなぜか抗体が検出されました。閉鎖されているとはいえ除菌ルームのような隔離された部屋ではないため、室内の換気やエアコンのフィルターを通して花粉が部屋の中に入ってきたものと推測されます。施設間で抗体価に格差が見られた理由としては、エアコン設備や空気清浄機の性能に違いがあったからだと考えられています。
 地域によって血清陽性率に格差が見られるという現象は、「杉の植林が多い高知県で花粉症の患者数が多い」など人間界においても確認されています。神奈川県よりも兵庫県における犬の方が抗体価も血清陽性率も高かった理由は、おそらく兵庫県の方が緑地が多く、スギの相対量と花粉の飛散量が神奈川県を上回ったからでしょう。 スギ・ヒノキ林に関するデータ(林野庁) 日本国内における都道府県別杉と檜の人工林面積(2012年度版)  スギの樹齢が30年を超えるとともにアレルギー性鼻炎や花粉症(目の充血や皮膚のかゆみなど鼻炎以外の炎症反応も含む)を訴える人の割合が増えてきました。前者の割合は23.4%、後者の割合は26.5%との推計もあります。スギ花粉による犬の花粉症は獣医療の分野でも確認されており、アトピー性皮膚炎を示す犬のうちおよそ10~20%はスギ花粉に感作されているとの報告もあります。今回の調査では神奈川県と兵庫県とを合わせた犬の血清抗体陽性率が19.5%(17/87)でしたので、人間と犬はほぼ同じ割合でスギ花粉に感作されていると推測されます。
 外に出て散歩をする限り、犬の花粉症を予防することは残念ながらほぼ不可能です。発症した場合は涙目、くしゃみ、アトピー性皮膚炎といった形で現れます。飼い主としてまず注意すべきは、症状が現れたからといって自己判断で人間用のアレルギーを投与しないと言うことです。その他空気清浄機をHEPAフィルターにすることで、室内における症状を緩和できるかもしれません。スギとヒノキの花粉量が増える2~4月にかけては、特に犬の様子を注意して観察してあげましょう。 犬との生活・季節別の注意