詳細
今回の調査を行ったのはハンガリーにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学のチーム。犬の睡眠の質と量に影響を及ぼす因子が何であるかを検証するため、睡眠中の犬に脳波計(EEG)、眼球運動計(EOG)、心電計(ECG)、筋電計(EMG)を非侵襲的に取り付けて生理学的な変化をモニタリングしました。
大学が保有する「Family Dog Project」のデータベースに登録されている犬の中から16頭(1.5~7歳 | オス10頭 | 10犬種+雑種)に協力を仰ぎ、眠る前の状況や眠る場所に4つのパターンを設けて日中睡眠(正午から午後6時までのどこか3時間)と夜間睡眠(午後10時から午前1時までのどこかからスタートする6時間)を観察しました。具体的には以下です。
Nora Bunford, et al., Scientific Reportsvolume 8, doi:10.1038/s41598-018-25546-x
睡眠パターン(各4頭)
- 活動的+家で眠る
- 通常の活動+家で眠る
- 活動的+家以外で眠る
- 通常の活動+家以外で眠る
✓活動的=競技会に参加したり上級トレーニングを行う観察の結果、以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。
✓家以外の場所=キャンプ場、友達の家大学に設けられた睡眠室など
犬の睡眠の質と量・影響因子
- 睡眠トータル時間✓夜間の方が長い
✓活動的な日の方が長い - 最初にウトウトしてから実際の眠りに落ちるまでの時間✓夜間の方が短い(早く眠りに落ちる)
✓軽度~重度の手間取りで大きい(眠りに落ちにくくなる)
✓活動的な日に家以外の場所で眠った時に限って短い(眠りに落ちやすくなる)
※手間取り=計測器を取り付ける時に手間取ったかどうか【 なし10分未満(n=24) | 軽度10分~30分(n=6) | 重度30分~60分(n=2)】 - 最初の非ウトウト睡眠後に見られた覚醒時間✓活動的な日+家以外で眠った時に限って短い
- 最初にウトウトするまでの時間✓活動的な日は短い
- 最初の非ウトウト睡眠までの時間✓活動的な日は短い
- ウトウト睡眠の時間✓活動的な日は短い
✓日中の方が長い - ノンレム睡眠の時間✓活動的な日は長い
✓夜間の方が長い
✓軽度~重度の手間取りがあった場合短い - レム睡眠の時間✓活動的な日は長い
✓夜間の方が長い - ウトウトしてからレム睡眠に落ちるまでの時間✓活動的な日+夜間睡眠で短い
- 非ウトウト睡眠から最初のレム睡眠までの時間✓家以外で長い
✓活動的+夜間睡眠で短い
Nora Bunford, et al., Scientific Reportsvolume 8, doi:10.1038/s41598-018-25546-x
解説
夜間や活動的な日におけるノンレム睡眠と睡眠のトータル時間が長いことが判明しました。「思いっきり遊んだ夜はぐっすり眠れる」といったところでしょうか。この傾向は私たち人間を対象として行われた実験データとも一致していますし、それ以前に経験を通して誰もが知っていることです。
過去に犬を対象として行われた調査では「日中の活動性がレム睡眠に影響を及ぼすことはなかった」と報告されています。こちらの調査では「活動的」という言葉に含まれる内容が6~8時間の歩行だったのに対し、今回の調査では競技会や上級クラスのトレーニングでした。身体的な疲労感と頭脳労働による疲労は、それぞれ睡眠に違った影響を及ぼすのかもしれません。2017年に行われた調査では、訓練した後によく眠った方が記憶力が高まるとされています。犬の睡眠には人間のものと同様、身体的な疲労の回復のほか神経ネットワークの成長を促進するという役割があるのでしょう。 睡眠に入る前、計測機器の装着で軽度~重度の手間取りがあった場合、最初にウトウトしてから実際の眠りに落ちるまでの時間が長くなり、ノンレム睡眠の時間が短くなる傾向が確認されました。思い切って言い換えると「眠りに落ちにくくなり、深い眠りの時間が減る」となるでしょう。犬にぐっすり寝てもらうためには身体に不要な刺激が入らないよう、ベッドやクッションのセッティングをしっかり行った方が良いと考えられます。 過去に行われた調査では、室内にいる犬の場合は夜間の80%、屋外(家の敷地内)にいる犬の場合は夜間の70%、そして屋外(家の敷地以外)にいる犬の場合は夜間の60%を睡眠に費やすと言われています(Adams, G. J. & Johnson, 1993)。五感に入ってくる情報が少ない分、家の中では安心して眠っていられるものと推測されます。
上記したような事実から、犬の睡眠の質を高めるためには以下のような点に注意すればよいと考えられます。
過去に犬を対象として行われた調査では「日中の活動性がレム睡眠に影響を及ぼすことはなかった」と報告されています。こちらの調査では「活動的」という言葉に含まれる内容が6~8時間の歩行だったのに対し、今回の調査では競技会や上級クラスのトレーニングでした。身体的な疲労感と頭脳労働による疲労は、それぞれ睡眠に違った影響を及ぼすのかもしれません。2017年に行われた調査では、訓練した後によく眠った方が記憶力が高まるとされています。犬の睡眠には人間のものと同様、身体的な疲労の回復のほか神経ネットワークの成長を促進するという役割があるのでしょう。 睡眠に入る前、計測機器の装着で軽度~重度の手間取りがあった場合、最初にウトウトしてから実際の眠りに落ちるまでの時間が長くなり、ノンレム睡眠の時間が短くなる傾向が確認されました。思い切って言い換えると「眠りに落ちにくくなり、深い眠りの時間が減る」となるでしょう。犬にぐっすり寝てもらうためには身体に不要な刺激が入らないよう、ベッドやクッションのセッティングをしっかり行った方が良いと考えられます。 過去に行われた調査では、室内にいる犬の場合は夜間の80%、屋外(家の敷地内)にいる犬の場合は夜間の70%、そして屋外(家の敷地以外)にいる犬の場合は夜間の60%を睡眠に費やすと言われています(Adams, G. J. & Johnson, 1993)。五感に入ってくる情報が少ない分、家の中では安心して眠っていられるものと推測されます。
上記したような事実から、犬の睡眠の質を高めるためには以下のような点に注意すればよいと考えられます。
犬にぐっすり眠ってもらうには?
- 運動のほか頭脳を使うトレーニングを行う
- 寝具のセッティングをしっかり行う
- 室内で眠らせてあげる
- 昼間は軽めにして夜間にがっつり眠る