詳細
報告を行ったのはノースカロライナ州立大学の医療チーム。2015年、オーストラリアンシェパードミックス(3歳 | 22.3kg | 去勢済み | オス)が、犬用マットに含まれている高吸水性ポリマーの一種「ポリアクリル酸」を大量(350g | 最大で15.7g/kg)に誤飲した24時間後、精神作用の悪化(ちょっとしたことで高ぶる | 音に対する過敏性)、小脳性運動失調(踏ん張るように立つ | 測定過大)、脊柱胸腰部の不快感、嘔吐、企図振戦、高窒素血症、血尿といった症状を示したため、大学附属の動物病院を受診しました。
犬が直後に吐き出したものにハイドロゲルが含まれていたことや、感染症や悪性腫瘍の可能性が否定されたことから考え「ポリアクリル酸ナトリウム中毒」であることが確実だったため、中毒に対する対症療法が施され、患犬はその後96時間かけて緩やかに回復していき、2週間後には完全に回復しました。 ポリアクリル酸が比較的安全で食品添加物として使用されることもあることを懸念したチームは、この物質の毒性に関する検査を改めて行いました。対象となったのはメスのSDラット9匹。給与量を2.6~19.2 g/kgに変動させて経口投与試験を行ったところ、以下のような毒性が量依存的に確認されたと言います(=多ければ多いほど症状も重い)。
David C. Dorman et al., Journal of Veterinary Diagnostic Investigation, DOI: 10.1177/1040638718782583
犬が直後に吐き出したものにハイドロゲルが含まれていたことや、感染症や悪性腫瘍の可能性が否定されたことから考え「ポリアクリル酸ナトリウム中毒」であることが確実だったため、中毒に対する対症療法が施され、患犬はその後96時間かけて緩やかに回復していき、2週間後には完全に回復しました。 ポリアクリル酸が比較的安全で食品添加物として使用されることもあることを懸念したチームは、この物質の毒性に関する検査を改めて行いました。対象となったのはメスのSDラット9匹。給与量を2.6~19.2 g/kgに変動させて経口投与試験を行ったところ、以下のような毒性が量依存的に確認されたと言います(=多ければ多いほど症状も重い)。
ポリアクリル酸の毒性
- 神経症状開放フィールドにおける運動性の低下 | ハンドリングに対するリアクションの減少 | 筋トーヌスの低下 | 平面立ち直り反応の悪化
- 消化器症状うずくまり姿勢 | 歩様変化
David C. Dorman et al., Journal of Veterinary Diagnostic Investigation, DOI: 10.1177/1040638718782583
解説
ポリアクリル酸は水を大量に吸収する高吸水性ポリマーの一種。自重の10倍以上の水を吸着する力があり、外圧をかけても水が離れていかないという性質を持っているため、数多くの工業製品に応用されています。以下は一例です
LD50が5g/kg~40g/kgとは随分と幅がありますが、今回中毒を示した犬では最大で15.7g/kgのポリアクリル酸を摂取したと推定されていますので、死ぬ事は無いものの「15g/kg」程度の量を摂取してしまうと何らかの神経症状を示す事はあるかもしれません。幸いなのは、ラットにおいても犬においても神経系に解剖学的な病変部分は確認されず、症状は一時的だったという点です。
ポリアクリル酸は犬用マットのほか、気温が高まる夏に用いられる冷却マットや保冷枕などにも「高吸水性ポリマー」もしくは「高分子ポリマー」という形で含まれています。犬がガジガジかじっていると部分的に破損して中身が出てきてしまうかもしれません。大量に誤飲すると、今回の症例で見られたように足元がふらつくとか嘔吐するといった症状を見せますので、マットや枕は常にチェックするようにしましょう。ハイドロゲルを飲み込んで死んでしまった鳥の症例報告もあります。飲み込んだ高吸水性ポリマーをうまく吐き出せないと、胃袋や腸の中で膨張して閉塞を起こすことがありますので要注意です。
ポリアクリル酸含有製品
- 紙おむつ
- 生理用品
- ローション
- 結露防止剤
- 芳香剤
- 携帯簡易トイレ
- 増粘剤
- 保冷剤

