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飼い犬の目の前でライバル犬におやつを与えると嫉妬する?

 犬の目の前で飼い主がこれ見よがしに人形の犬におやつを与えたところ、人間の脳内で確認されている嫉妬(ジェラシー)部位が活性化することが明らかになりました(2018.6.1/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのはアメリカにあるエモリー大学のチーム。13頭の犬を対象とし、脳内の変化をリアルタイムでモニタリングできる「fMRI」と呼ばれる医療機器を用いて犬の嫉妬心に関する実験を行いました。 脳の活性をリアルタイムでモニタリングするfMRI  犬の右側に実物大のラブラドール人形(Sandicast)、左側に9.5リットルバケツを置き、「犬におやつを与える」「人形におやつを与える」「バケツにおやつを入れる」という3パターンをランダムで各30回ずつ繰り返しました。犬の視点で言い換えると「自分がおやつをもらう」「人形がおやつをもらう状況を見る」「おやつがバケツに入れられる状況を見る」となります。犬の飼い主に対する事前調査(C-BARQ)でわかった「犬同士の攻撃性」の度合いと実験結果を照合したところ、以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。
犬の気質と脳内の変化
  • 攻撃性が高い犬ほど両側扁桃体の活性度が高い
  • 扁桃体の活性は初回が最も大きく2回目以降は減っていく
 人間を対象とした調査により、扁桃体は「不安、怒り、恐れ、嫉妬」といった感情の生成と関わっていることが判明していることから、犬の脳内で見られた扁桃体の活性化は人間で言う嫉妬心(ジェラシー)に近いものなのではないかと推測されています。
Jealousy in dogs? Evidence from brain imaging.
Cook, Peter; Prichard, Ashley; Spivak, Mark; and Berns, Gregory S. (2018) Animal Sentience 22(1)

解説

 過去に行われた調査では「飼い主が犬のロボットを褒める状況」と「非生物を褒める状況」を犬に見せたところ、前者の状況において犬の興奮度が高まり、なおかつロボット犬に対する攻撃性を示したといいます(Harris and Prouvost, 2014)。こうした結果から研究者は犬にも嫉妬心のプロトタイプのようなもの(プロトジェラシー)があるのではないかという結論に至っています。今回の調査は「飼い主がライバルにおやつを与える」という少し違った状況でしたが、やはりプロトジェラシーに近いものが脳神経学的に確認されました。
 嫉妬心の脳神経学的なメカニズムは完全には解明されていません。サルを対象として行われた調査では、オスがつがいのメスと他のオスがイチャイチャしている現場を目撃すると、扁桃体、島皮質、上側頭溝に活性化が見られると報告されています(Rilling, Winslow & Kilts, 2004)。また人間の男性がパートナーの不貞を認識したとき、扁桃体と視床下部の活性化が見られるとも(Takahashi et al., 2006)。さらに人間、人間以外の霊長類、及びげっ歯類では怒りや攻撃反応に視床下部、扁桃体、分界条、水道周囲灰白質が関わっているとされています。
 今回、犬の脳内で見られた「扁桃体の活性化」という現象をダイレクトに「嫉妬心」に結びつけることはできませんが、怒りと嫉妬心が入り混じった複雑な感情を抱いていると想定することは、必ずしも擬人化とは言えないでしょう。 嫉妬に似た感情を抱いているとき、犬の脳内では扁桃体が活性化する  人間の場合、嫉妬心を抱くとふくれっ面になったりしますので、外野から観察していても比較的簡単に感情を推し量ることができます。一方、犬は表情筋が少ないため顔を見ただけでは何を感じているから今一つわかりません。鼻の上にシワを寄せて歯をむき出しにしてくれれば一目瞭然ですが、「嫉妬心」のような微妙な感情の場合、どのようなサインを出してよいのかはわからずムカムカが潜在化してしまう危険性があります。「何の前触れもなく噛みつかれた!」という咬傷事故の中には、ひょっとすると嫉妬心を原因とするものがいくらか含まれているのかもしれません。
 C-BARQで「犬同士の攻撃性」が強いと評価された犬では、初回に限って扁桃体の強い活性が見られましたが、2回目以降はそれほど顕著な活動を見せませんでした。調査チームは同じ刺激を繰り返し与えることにより慣れが生じたのではないかと推測しています。馴化トレーニングによく反応する可能性が高いので覚えておいて損はないでしょう。ただし嫉妬心の馴化が人間にも当てはまるとは限りませんので、「不倫は文化」と開き直るとえらい目に遭うことがあります。 犬にも人間と同じ感情がある? 犬の攻撃行動