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リクローニング(再クローニング)によって生み出された犬の寿命や健康に異常はあるのか?

 クローン技術によって生み出された犬を元にさらなるクローニングを行った場合、生まれてきた犬の健康や寿命に影響はあるのでしょうか?(2017.11.14/韓国)。

クローン個体の健康

 クローニングとは動物が保有する細胞を元に、全く同じ遺伝情報を有した別の個体を生み出す技術のこと。1997年2月、体細胞核移植によってヒツジのドリーが生み出されたことを皮切りに、さまざまな哺乳動物を対象としたクローン実験が行われてきました。
 犬に関しては2005年4月24日、ソウル大学のファン・ウソク(黄禹錫)教授が率いる45人からなるチームが世界で初めて犬のクローニングに成功しています。「スナッピー」(Snuppy)と名付けられたこの世界初のクローン犬は、「Tai」という名のアフガンハウンドから採取された細胞を元に生み出されました。 ファン・ウソク(黄禹錫)教授とスナッピー  クローン個体は先天的な障害を持って生まれる確率が高いとか、平均よりも寿命が短いといった報告がありますが、「スナッピー」に関しては10歳まで生き、アフガンハウンドの平均寿命とされる11.9歳と遜色ないと判断されました。また死因はT細胞リンパ腫でしたが、アフガンハウンドにおける癌による死亡率は30.8%と推計されていることから、「スナッピー」にとりわけガンを発症しやすい傾向があるとは認められませんでした。 クローン技術によって生まれた世界初の犬「スナッピー」

リクローン個体の健康

 では、クローン個体の細胞を元にもう一度クローニングを行う「リクローン」によって生み出された個体はどうなのでしょうか?ソウル国立大学のチームは、スナッピーが5歳のときに採取した脂肪細胞由来幹細胞(ASCs)を元にしてリクローン世代を生み出し、健康や寿命にどのような違いが見られるのかを検証しました。その結果、スナッピーを生み出したときの妊娠率が2.4%で出産率が0.2%だったのに対し、リクローン個体を生み出すときの妊娠率は42.9%で出産率4.3%という高い値が確認されたといいます。 スナッピーの脂肪細胞由来幹細胞を元にリクローンされた子犬たち  無事に出産した4頭のリクローン犬たちに奇形はなく、体重も正常範囲(410~500g)だったとのこと。そのうち1頭は新生子期に死亡したものの残りの3頭はすくすくと育ち、2017年5月の時点では健康に関して特記すべき異常は認められないとのこと。
 今後もモニタリングを続け、リクローン個体における加齢様式を調査すると同時に、ガンの発症因子に関する遺伝的な土台を提供していきたいとしています。
Birth of clones of the world’s first cloned dog
Min Jung Kim et al., Scientific Reports 7, Article number: 15235 (2017) doi:10.1038/s41598-017-15328-2