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犬の被毛色と中に含まれるストレス物質の関係

 白と黒の被毛を持つボーダーコリーを対象とし、毛の色によって中に含まれるストレス物質が変わるのかどうかが検証されました(2017.1.5/スウェーデン)。

詳細

 調査を行ったのは、スウェーデン・リンショーピング大学のチーム。さまざまな動物を対象とした過去の調査では、「被毛の色によってストレスの指標となるコルチゾールのレベルが変わる」という報告と「被毛の色によってコルチゾールレベルが変わる事は無い」という報告が入り混じっており、毛の色と中に含まれるコルチゾールの量に相関関係があるのかどうかはよく分かっていません。 白と黒の2色からなるパイボールドのボーダーコリー  当調査の対象となったのは、白と黒両方の色を含むボーダーコリー20頭。年齢は17ヶ月齢~12歳で、メス犬9頭、オス犬11頭という内訳です。首筋付近にある白と黒の被毛が入れ替わる中間点から2種類の被毛を切り取り、解析サンプルとしました。コルチゾールを多く含むと言われる上毛(ガードヘアー)だけを取り出して濃度を調べた所、白い被毛と黒い被毛およびオスとメスの間でコルチゾールレベルに格差は見られなかったと言います。
 こうした結果から調査チームは、少なくともボーダーコリーにおいては、被毛の色や性別がコルチゾールレベルに影響を及ぼす事は無いとの結論に至りました。ただし、被毛の色の間で見られる格差には個体差があったため、ある特定の1頭を対象として長期的にコルチゾールレベルを計測する際は、白なら白、黒なら黒という具合に、どちらか一方の色に統一した方が良いとしています。
Does coat color affect cortisol levels in Border collie dogs?

解説

 被毛の色と中に含まれるコルチゾールレベルに関しては様々な研究が行われていますが、いまだに統一見解には至っていません。具体的には以下のような報告があります。
被毛色とコルチゾールの関係
  • Sauveら(2007年)人間を対象とした調査では、毛の色によってコルチゾールレベルが変わる事は無かった。
  • Bennetら(2010年)ジャーマンシェパードを対象とした調査では、黒い被毛よりも黄色い被毛の方がコルチゾールレベルが高かった。
  • Yamanashiら(2013年)飼育されているチンパンジーを対象とした調査では、黒い被毛よりも白い被毛の方がコルチゾールレベルが高かった。
  • Nicholsonら(2015年)様々な犬種に属する犬を対象とした調査では、黒い被毛と黒以外の被毛との間にコルチゾールレベルの格差は見られなかった。用いられた犬種はラブラドールレトリバー、スプリンガースパニエル、シーズー、キングチャールズスパニエル、ジャックラッセルテリア、ミックス種。
 ジャーマンシェパードを対象とした2010年の調査では、被毛の色によってコルチゾールレベルに違いが確認されました。一方、様々な犬種を対象とした2015年の調査では、同様の格差は確認されなかったようです。こうした事実から、被毛色とコルチゾールの関係性は犬種によって微妙に変わるのではないかと推測されています。少なくとも今回行われた調査だけから「毛の色が変わってもコルチゾールレベルは変わらない」と言い切る事は出来ないでしょう。
 過去の調査で共通しているのは、黒い毛と黒以外の毛があったとき、黒以外の被毛の方がコルチゾールを多く含んでいるという点です。「黒い被毛にはメラニン色素がたくさん含まれているため、コルチゾール分子を収容するスペースがない」といった仮説が立てられていますが、詳しい事はよくわかっていません。 犬の若白髪を測る際の目安  近年行われた調査では「犬の不安や衝動性の度合いが強いと、マズル周辺の若白髪が増える」という傾向が発見されました(→出典)。仮説としては「犬がストレスを感じる→メラニン細胞や色素に影響を及ぼして被毛が白くなる」といったものが想定されています。将来的にはこの説にコルチゾールを絡め「犬がストレスを感じる→メラニン細胞や色素に影響を及ぼして被毛が白くなる→ストレス物質であるコルチゾールが白い被毛に多く含まれるようになる」といった仮説を検証すると面白いかもしれません。 犬の長期的ストレスは被毛中のコルチゾールからわかる