トップ2017年・犬ニュース一覧2月の犬ニュース2月13日

大卒以上の男性は犬に対する依存心が強い?

 犬の飼い主1,000人以上を対象とした調査により、犬に対する感情的な依存心が強い人の特徴が明らかになりました(2017.2.13/スペイン)。

詳細

 調査を行ったのは、スペイン・バルセロナ自治大学のチーム。2013年4月から2014年1月の期間、スペイン小動物獣医協会に所属している獣医師や匿名のオンライン調査を通じて犬の飼い主を募り、2つのアンケート調査に回答してもらいました。1つは28項目の質問を通じて「飼い主と犬との交流」、「犬との感情的親密性」、「飼育に伴う代償に関する認識」という3大因子を数値化する「MDORS」と呼ばれる調査、もう1つは「自分の人生にどの程度満足しているか?」という質問に対し0から10までの間で評価する「キャントリルの自己評価」(Cantril’s Self Anchoring Ladder)と呼ばれる調査です。
 スペイン在住で最低1年間犬を飼っている25歳以上の成人、合計1,140人(男性28.3%+女性71.7%/平均年齢39.86歳)から得られた回答を統計的に解析したところ、「犬と人間の関係に対する感情的な依存心が強い」という特徴を持つグループ1(56.1%)と、「犬からの感情的なサポートを経験したことがなかったり必要性をあまり感じない」という特徴を持つグループ2(43.9%)に大別できたと言います。さらに、飼い主の社会経済的なステータスと、犬との感情的な結び付きが強いグループ1に分類される確率を検証したところ、以下のような傾向が浮かび上がってきました。
飼い主のステータスと犬への感情的な依存心
  • 男性は女性の32.36倍
  • 最終学歴が大学レベルの人は標準の8.65倍
  • 最終学歴が高卒の人は標準の19分の1
  • 幸せの自己評価ポイントが1増えるたび確率が23.92%下がる
大卒以上の男性は犬に対する感情的な依存心が強い  こうした結果から調査チームは、犬と人間との感情的な結びつきは、主として飼い主の側のステータスによって大きく左右されるとの結論に至りました。今後はこの知見を生かし、飼育放棄につながるようなリスクファクターの解析につなげていきたいとしています。
Highly Educated Men Establish Strong Emotional Links with Their Dogs: A Study with Monash Dog Owner Relationship Scale (MDORS) in Committed Spanish Dog Owners.
Calvo P, Bowen J, Bulbena A, Tobena A, Fatjo J (2016) PLoS ONE 11(12): e0168748. doi:10.1371/journal.pone.0168748

解説

 犬に対する感情的な依存心が強い人の特徴としては、「男性である」、「大卒である」という項目が挙げられました。逆に感情的な依存心がそれほど強くない人の特徴としては、「高卒である」、「幸せの自己評価が高い」という項目が挙げられました。調査チームは、こうした関係性の裏には以下に述べるようなメカニズムがあるのではないかと推測しています。

性別と犬との関係性

 男性がグループ1に分類される確率は、女性の32.36倍に上ることが明らかになりました。この極端な格差の理由としては、調査に参加しようというモチベーション持った男性はそもそも犬に対する感情的な依存度が強いという点が挙げられます。回答者のうち女性の占める割合が71.7%だったのに対し、男性の占める割合はわずか28.3%でした。この事実から、男性は女性と比較して「犬を動物病院に連れてくる割合が低い」(犬との関わりが薄い)とか「アンケート調査にそれほど積極的では無い」(犬への興味が薄い)といった可能性が見えてきます。にもかかわらずアンケートに協力したということは、男性の側にそもそも「犬との関係が密で、人間との関係性に興味がある」という素地があったのかもしれません。

学歴と犬との関係性

 大学を最終学歴とする人がグループ1に分類される確率が標準の8.65倍だったのに対し、最終学歴が高卒の人の確率は標準の19分の1でした。教育レベルと飼い主の向上心や情報収集能力とが関係しているのだとすると、「教育レベルが高い→情報源が豊富で積極的に勉強する→犬に対して過剰な期待を抱かない→理想と現実の間のギャップが少なくなる→絆が深まる」といった背景が見えてきます。また大学の学費を工面できる人は経済的に裕福な家で育ち、幼少期からペットに囲まれて暮らしていた可能性が高いため、犬と良好な関係性を築くのがうまいということもあるでしょう。しかし飼い主の社会経済的なステータスと犬との間に、同様の関係性が認められなかった研究報告もあるため、国や文化による影響も十分考慮しなければなりません。

幸せの評価と犬との関係性

 幸せの自己評価ポイントが1増えるたび、グループ1に分類される確率が23.92%下がるという現象が確認されました。幸せに対する自己評価が経済力によって左右されるのだとすると、自己評価の高い人は収入や肩書、あるいは物質的な所有物(車・家など)によって既に自尊心や承認欲求が満たされているケースが多く、その分、犬に対して求める感情的・社会的サポートが目減りしてしまうのかもしれません。逆に、幸せに対する自己評価が低い人は「誰かから必要とされる・頼りにされる・注目される」といった社会的サポートへの欲求が強く、犬に対する感情的な依存心が強まってしまう可能性があります。
 「貧乏人はペットを飼うな!」という議論がたまに聞かれますが、裕福になりすぎて犬との感情的な絆が希薄になり、飼育がいい加減になってしまうのだとすると、一概に正論とも言えなくなります。