詳細
報告を行ったのは、ニュージーランド・リンカーン大学のロレーラ・ナトーリ氏。研究室の小動物や人間などで確認されている糖質コルチコイドと行動変化の関係性が、犬に対しても当てはまるかどうかを確認するため、手法の異なる3つのリサーチを行いました。
調査1
過去6ヶ月間で糖質コルチコイドによる投薬治療を受けた経歴のある31頭の犬の飼い主に対し、投薬中と投薬後において犬の行動にどのような変化があったかを自由回答してもらったところ、11人が「変化あり」と回答したといいます。またそのうち9人は複数の行動変化を報告したとも。具体的な変化としては、以下のようなものが挙げられました。カッコ内は回答者数です(複数回答あり)。
- 神経質で落ち着きがなくなった(6)
- 怒りっぽくなった(4)
- 驚きやすくなった(3)
- 拒絶反応が増えた(3)
- 餌を頑固に守ろうとするようになった(3)
- 活動性が減った(2)
- 無駄吠えが増えた(2)
調査2
糖質コルチコイド(プレドニゾロンやメチルプレドニゾロン)による投薬治療を受けている44頭の犬の飼い主と、それ以外の薬(抗生物質やNSAIDs)による治療を受けている54頭の犬の飼い主に対し、12項目の質問に7段階で回答してもらいました。その結果、コルチコイドグループにおいて以下のような行動の変化が見られたといいます。
- 遊ばなくなった
- 神経質で落ち着きがなくなった
- 怖がりになった
- 自信なさげになった
- 食事中の攻撃性が増えた
- 吠えやすくなった
- 驚きやすくなった
- 邪魔されたときの攻撃性が増えた
調査3
問題行動の前歴がある345頭の犬を調べた所、16%の犬は過去に糖質コルチコイドによる投薬治療を受けていたといいます。この数字を統計的に計算したところ「有意」、すなわち「糖質コルチコイドと問題行動との間には関連性がある」と算定されました。
上記した諸々のデータから論文の筆者は、糖質コルチコイドは犬の行動を変化させ、「攻撃性の増加」や「活動性の低下」といった問題行動の増悪因子になりうるという結論に至りました。動物病院において糖質コルチコイドを処方する医師は、副作用情報とともに、犬の行動が変化する可能性があることを飼い主に説明した方がよいとしています。
Exogenous Corticosteroids and Dog Behaviour
解説
糖質コルチコイドは、腎臓の上にある「副腎」と呼ばれる小さな内分泌器で産生されるステロイドホルモンの一種です。人工の糖質コルチコイドとしては「プレドニゾロン」、「デキサメタゾン」、「ベタメタゾン」などがあります(→出典)。
今回の調査で用いられた「プレドニゾロン」の薬理作用は多岐にわたり、炎症性疾患や免疫系疾患に対して広く使用されています。具体的には急性・慢性炎症(潰瘍性大腸炎・心膜炎 etc)、自己免疫疾患(関節リウマチ etc)、アレルギー性疾患(アトピー・喘息 etc)、内分泌疾患(アジソン病 etc)などです。その一方、副作用の多さでも有名で、代表的なものとしては免疫機能低下と感染症、医原性クッシング症候群、胃潰瘍、骨粗鬆症、白内障、浮腫、食欲増進、脂肪の異常沈着などが挙げられます。またイライラ感や不眠といった精神症状を引き起こすことでも知られています。犬で見られた「攻撃性の増加」や「活動性の低下」といった行動の変化も、こうした精神症状の一端なのかもしれません。
糖質コルチコイドによる投薬治療を受けている犬の飼い主は、以下に述べるような行動の変化を覚悟しておいたほうが良いと思われます。
今回の調査で用いられた「プレドニゾロン」の薬理作用は多岐にわたり、炎症性疾患や免疫系疾患に対して広く使用されています。具体的には急性・慢性炎症(潰瘍性大腸炎・心膜炎 etc)、自己免疫疾患(関節リウマチ etc)、アレルギー性疾患(アトピー・喘息 etc)、内分泌疾患(アジソン病 etc)などです。その一方、副作用の多さでも有名で、代表的なものとしては免疫機能低下と感染症、医原性クッシング症候群、胃潰瘍、骨粗鬆症、白内障、浮腫、食欲増進、脂肪の異常沈着などが挙げられます。またイライラ感や不眠といった精神症状を引き起こすことでも知られています。犬で見られた「攻撃性の増加」や「活動性の低下」といった行動の変化も、こうした精神症状の一端なのかもしれません。
糖質コルチコイドによる投薬治療を受けている犬の飼い主は、以下に述べるような行動の変化を覚悟しておいたほうが良いと思われます。
活動性の低下
- 遊ばなくなる
- 神経質で落ち着きがなくなる
- ささいなことで怖がる
攻撃性の増加
- 食事中のうなりが増える
- ささいなことでよく吠える
- 邪魔されたときに反撃してくる