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犬は言葉の意味と口調を同時に理解できる

 犬を褒めて伸ばす時は、ただ単に言葉をかけるだけでなく、しっかりと賞賛の念を込めなければ効果が薄いことが明らかになりました(2016.9.1/ハンガリー)。

詳細

 調査を行ったのは、ハンガリーにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物学チーム。チームはまず13頭の犬を訓練し、脳内の様子をリアルタイムでモニタリングできる「fMRI」と呼ばれる医療機器の中で、麻酔なしの覚醒した状態で数十秒間静止できるようにしました。 犬の脳をモニタリングするためには、数十秒間MRIの中で静止する必要がある  次に、ある特定の言葉とイントネーションを以下のような組み合わせで犬に聞かせ、脳内でどのような変化が起こるかを観察しました。
言葉とイントネーション
  • 褒め言葉+陽気なイントネーション
  • 褒め言葉+中性的なイントネーション
  • 無意味な言葉+陽気なイントネーション
  • 無意味な言葉+中性的なイントネーション
言葉の意味とイントネーションの組み合わせにより、犬の脳内の活性部位が変わる  その結果、左脳の活性化は「褒め言葉+陽気なイントネーション」と「褒め言葉+中性的なイントネーション」という組み合わせのときにだけ見られたと言います。また、右脳はイントネーションを区別するときに活性化したとも。さらに、「褒め言葉+陽気なイントネーション」という組み合わせの時だけ、心地よい刺激と接したときに活性化する報酬中枢の発火が見られたそうです。
 こうした事実から調査チームは、犬は人間と同じように、言葉の意味を左脳で、言葉に付随するイントネーションを右脳で処理しているという可能性を突き止めました。 Neural mechanisms for lexical processing in dogs Dogs understand what we say AND how we say it: Researchers find canine brains are far more capable than thought

解説

 人間同士のコミュニケーションにおいては、言葉の意味を介した「言語的コミュニケーション」と、言葉に付随した身振り、表情、口調などを含む「非言語的コミュニケーション」から成り立っているといいます。今回の調査では、犬も人間と同様に「言語」と「非言語」両方の情報を理解し、またそれらを処理するときの脳の使い方も似ているという可能性が示されました。 犬も人間と同様に「言語」と「非言語」両方の情報を理解できる  「褒め言葉とイントネーションが合致した時だけ報酬中枢が活性化した」という知見は、犬を褒めて伸ばそうとするときに役立ちそうです。例えば、高いピッチの声で犬を褒める時はあらかじめ決めておいたセリフをかけるなどです。その場のアドリブで考え出した適当な言葉より、「よーし」、「いいこ」、「グッド」など固定化した褒め言葉を発した方が、犬の報酬中枢が活性化しやすくなり、結果としてしつけ効果も高まると推測されます。犬を褒めるにしても、人間の子供を褒めるにしても、音声的な言葉だけでなく、心の底からの賞賛もなければ効果がないということです。 犬のしつけの基本