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調査を行ったのは、ニューヨーク・イサカにあるコーネル大学の獣医学チーム。呼吸をする時の空気の通り道となる声門がうまく開閉せず、酸素を十分に取り込めなくなる「喉頭麻痺」は、遺伝や外傷のほか、原因がよくわからない「特発性」という形でも多く発症します。
調査チームは2007年1月~2013年6月の期間、特発性の喉頭麻痺(ILP)を発症した7歳以上の大型犬90頭(平均年齢11.7歳)を対象とし、手術を施したときと施さなかった時とで、その後の生活の質や生存率にどのような影響を及ぼすかを追跡調査しました。その結果、以下のような傾向が見出されたと言います。
喉頭麻痺と手術の影響
- 手術を受けなかった犬の平均生存期間は3ヶ月、受けた犬は8.5ヶ月
- 手術を受けなかった犬の死亡率は、受けた犬よりも2.6倍高い
- 手術直後の生活の質は術前よりも4.1(±1.4)ポイント向上する
- 手術してから死ぬまでの生活の質は4.9(±0.9)ポイント向上する
- 48.6%(35/72頭)では広範性の神経系共存症を有していた
- 神経系共存症を有していない犬の合併症率は32%、有していた犬のそれは74%
- 神経系共存症を有している場合、何らかの合併症を併発する機会は4倍に高まる
- 神経系共存症を有している場合、再発性合併症を併発する機会は8倍に高まる
- 合併症・共存症
- 「合併症」とは、具体的には呼吸困難、咳をする、えづく、吐き戻す、呼吸性肺炎などのこと。単発で終わる場合は「個別性合併症」、2度3度と繰り返す場合は「再発性合併症」、両者を合わせて「何らかの合併症」とする。
「神経系共存症」とは、具体的に食道や骨盤筋の機能不全のこと。