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サーコウイルス感染症が犬の脅威になりつつある

 今までは豚だけが感染するはずだった病原性のサーコウイルス。これからは、犬への感染も心配しなければならないようです(2016.7.6/アメリカなど)。

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新興感染症としてのサーコウイルスが犬に脅威を与えつつある  「サーコウイルス」は、エンベロープ(膜状の構造)を持たない12~27nmの球状粒子で、環状(circule conformation)のDNAを特徴としていることからこの名(cir-co)が付けられました。哺乳類に感染するものとしては「豚サーコウイルス1型」(PCV-1)と「豚サーコウイルス2型」(PCV-2)だけが知られていましたが、2012年6月にアメリカのニューヨークで犬に感染する新種が発見されて以来(→出典)、世界各国から感染報告が上がってくるようになりました。具体的には以下です。
犬サーコウイルス症例
  • 2013年・アメリカ サーコウイルスの陽性率は、胃腸炎、血管炎、肉芽腫性リンパ節炎、下痢症状を示す犬で11.3%(19/168)、健康な犬で6.9%(14/204)、血小板減少症、好中球減少症、原因不明の発熱、ダニの刺咬歴がある犬で3.3% (19/409)だった。また他の病原菌を保有している率は下痢犬で68%(13/19 )と高率だった。サーコウイルスは単独もしくは他のウイルスとの複合型で宿主の健康を脅かす可能性がある(→出典)。
  • 2013年・アメリカ 2013年3月から2014年2月の期間、パピヨンの繁殖施設で2度のサーコウイルス・アウトブレークが起こった。最初のアウトブレークでは成犬1頭と8ヶ月齢の子犬2頭が、そして2度目のアウトブレークでは生後10週齢の子犬2頭が死亡した。子犬の死後解剖を行ったところ、小腸リンパ節、脾臓からパルボウイルス2型のほか、高濃度のサーコウイルスが検出された。パルボウイルスの感染がサーコウイルスの感染を招き、結果として症状が重篤化した可能性が高い(→出典)。
  • 2014年・イタリア ダックスフント繁殖施設において6頭のサーコウイルス感染が確認され、そのうち2頭が死亡した。遺体から分離されたウイルスは、アメリカ国内で検出された系統(Bari/411-13)と近似していた(→出典)。
  • 2016年・イタリア イヌ科動物の消化管389サンプルを調べた所、サーコウイルスの感染率は狼が26.4%(9/34)、犬が3.8%(8/209)、キツネが0%、アナグマが10%(1/10)だった。感染が認められた動物では、ジステンパーやパルボウイルス2型など、少なくとも1つ以上の共存ウィルスが検出された(→出典)。
  • 2016年・台湾 2012年~2014年の期間、下痢を主症状とする犬207頭と健康な犬160頭のサーコウイルス感染率を調べた所、前者が28.0%(58頭)、後者が11.9%(19頭)で、陽性率の格差は統計的に有意だった。サーコウイルスは下痢を引き起こす病原菌として、すでに台湾国内に蔓延していると推測される(→出典)。
 サーコウイルスに関する詳しい生態については十分に解明されていませんが、これまで集められてきた情報から類推すると、概ね以下のようにまとめられると考えられます。 Circovirus in Dogs FAQ(AVMA)
犬サーコウイルスの特徴
  • 感染経路 感染経路に関しては定かではないが、おそらく感染動物との接触、嘔吐物や排泄物との接触によって伝播するものと推測される。また寝具や用具の共有、犬と接触する人間を仲介した感染の可能性もある。
  • 症状 胃腸炎、血管炎、肉芽腫性リンパ節炎、下痢がメインで、まれに膵炎、副腎炎、間質性腎炎、尿細管壊死を引き起こすと考えられる。
  • 病原性 感染した犬のすべてが症状を示すわけでは無いことから、病原性はそれほど強くないと推測される。基本的には宿主の免疫力低下につけ込む「日和見感染症」だが、他の病原菌と共存していると症状を重篤化させる可能性がある。なお犬から人間に感染するという証拠は今のところ無い。
  • 治療 確立された治療法は存在しない。またワクチンも存在しない。

解説

 サーコウイルスの検出に関しては現在北米において、外注検査機関「Idexx」が「Canine Circovirus RealPCR™」という名でサービスを提供しています(→出典)。日本の「アイデックス」ではまだ未対応ですが、国内におけるサーコウイルスの蔓延が確認され、臨床における重要度が認識されてくると、検査項目として追加される可能性があります。国内における感染報告はまだほとんどないものの、この事実が「ウイルスが蔓延していない」ことを意味するのか、それとも「ただ単に見過ごされているだけ」なのかは定かではありません。今後の調査が待たれます。
 飼い主として出来る確実な予防法は、以下に示すような常識的なものです。混合感染する病原菌としては「犬腸コロナウイルスクリプトスポリジウムジアルジア・サルモネラ・カンピロバクター・ウェルシュ菌」などが指摘されています。
犬サーコウイルス予防法
  • 病院内で他の動物に接触しない
  • 散歩中の食糞や拾い食いを避ける
  • 他の病原菌を保有しないようにする
  • 犬の免疫力を落とさない