トップ2016年・犬ニュース一覧7月の犬ニュース7月18日

別離、ルーチンの変化、トラウマといったストレスは犬のガン発症率を高める

 ガンと診断された犬と健康な犬とを対象とした比較調査により、ストレスがガンの発症因子になっているという可能性が再確認されました(2016.7.18/イタリア)。

詳細

 調査を行ったのは、イタリア・ミラノ大学を中心とした獣医学チーム。2006~2009年の期間、健康な犬69頭とガンと診断された犬69頭を募ると同時に、飼い主に対するアンケート調査を行い、両者の相違点を明確化するためのデータ収集を行いました。その結果、ガン発症グループにおいては、診断が下される前の段階で生活環境や習慣の変化、および規則正しい生活の欠落が多く見られたと言います。また以下に示すような、ストレスに関連した様々な行動を示す機会が統計的に多かったとも。
犬のストレス関連行動
  • 飼い主の注目を集める
  • 理由もなく隠れる
  • 家の中で飼い主につきまとう
  • 過剰な警戒心
  • 花火や銃声への恐怖心
  • 人への攻撃
  • 他の犬への攻撃
  • 自分の体を過剰に舐めたりかじる
犬の過剰な警戒心やグルーミングはストレスの指標と考えられる  こうしたデータから調査チームは、人間や実験室内のラットで確認されているストレスとガンとの因果関係が、どうやら犬にもあるようだとの結論に至りました。ストレスが免疫力を低下させ、体内にあるガン細胞の増殖を抑えきれなくなることが発症メカニズムだと推測されています。 Stress and cancer in dogs: Comparison beween a population of dogs diagnosed with cancer and a control population
Simona Cannas, Greta Veronica Berteselli, et al.

解説

 ガン発症グループでは、78%の犬が「家庭内における何らかの変化」を経験していたといいます。具体的には、家族との永続的な別離(死別など)、新しいメンバーの登場(結婚や出産など)、引っ越し、ルーチンの変化(散歩時間の変更など)です。また84.4%の犬では、「規則正しい習慣の欠落」が見られたといいます。具体的には、食餌、散歩、飼い主との交流などです。さらに63.5%の犬では、ガンの診断前にトラウマになるような出来事や手術を経験していたとのこと。 何が起こるかわからない「予測不能性」は、薬にも毒にもなる諸刃の剣  上記した全てに共通しているのは、何が起こるかわからない「予測不能性」という要素です。「予測不能性」には二面性があり、退屈な日常に刺激を与えてくれる薬にもなれば、ストレスを引き起こしてガン細胞の増殖を助長する毒にもなります。例えば、「散歩ルートを変える」という事象には予測不能性が含まれますが、しっぽを振りながら楽しそうにクンクン匂いを嗅ぎまわっている犬にとっては「刺激」ですので、人における「テーマパークのアトラクション」のように楽しいものだと推測されます。一方、しっぽを後ろ足の間に巻き込んでその場から動こうとしない犬にとっては「ストレス」の域に達していますので、人における「過去に死亡事故を起こしたジェットコースター」のように胃がキリキリと痛くなるものだと推測されます。
 重要な事は、犬のボディランゲージをしっかり捉えながら、予測不能性が犬にとっての適度な刺激になるよう、飼い主がしっかりと調整してあげることです。犬の表情や動作から心の中を読み取る方法や、一般的な犬のストレス管理法に関しては以下のページにまとめてありますので、ご参照ください。「予測不能性」が薬になるのか毒になるのかは、飼い主次第です。 犬の心を読む訓練 犬の幸せとストレス