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環境省が販売業者における犬や猫の平均死亡率を通知

 環境省が販売業者における犬や猫の平均死亡率を算出し、これを上回るような業者を厳しく取り締まるよう、各都道府県に通知を出しました(2016.2.3/日本)。

詳細

 2016年1月5日、環境省自然環境局総務課長から、各都道府県・指定都市中核市動物愛護管理主管部(局)長あてに「第一種動物取扱業者に対する監視、指導等の徹底について」(犬猫等健康安全計画の遵守)という通知が出されました。内容は、犬猫等販売業者における平均死亡率と比較して、あまりにも高い数字を出している業者に対しては監視と指導を強めるよう指示するものです。また届け出が義務づけられている「犬猫等健康安全計画」が、環境省令で定める基準に適合しない事業者に対しては、登録の取り消しや業務停止といったペナルティを課すことも明示されています。
 犬猫等販売業者における全国の平均死亡率は以下です。元データとしては「犬猫等販売業者定期報告届出書」が用いられています。なお死亡率は「死亡数÷(販売数+引き渡し数+死亡数)」という式から求められ、「引き渡し数」には卸売の事業者等と一部重複する個体が含まれます。 平成26年度、販売業者における犬と猫の全国平均死亡率 第一種動物取扱業者に対する監視、指導等の徹底について

解説

 今回出された通知は、悪質な販売業者を撲滅するためのものだと考えられます。しかし、より厳しい法的な規制がないと、劣悪業者を完全に取り締まる事はやはり難しいようです。理由は、簡単に数字の改ざんができるからです。
 犬猫死亡率の分母の一部を構成している「販売または引き渡した数」に関しては、取引相手がいるため比較的数字のごまかしが効きにくいと考えられます。一方、分母の一部と分子を構成している「死亡した数」に関してはいくらでも改ざんが可能です。例えば、ある繁殖業者のもとで1年間に50頭の子犬が生まれたとしましょう。そのうちの7頭は死産で、4頭は新生子期に死亡、3頭は口蓋裂といった先天的奇形を持っていたため間引きしたとします。真正直に報告すると、死亡率は「14/50頭」=28%という極めて高い数字になりますが、劣悪業者が自分に不利な事実を馬鹿正直に報告するわけはありません。死亡したり間引いた12頭を始めからいなかったことにして「2/38頭」=5.2%のようにデータを改ざんし、全国平均の「5.6%」を下回るよう微調整します。その結果、管轄している役所の目に留まらなくなり、どんなに劣悪環境下で繁殖が行われていても見過ごされてしまいます。死亡した子犬に「死体遺棄罪」は適用されませんので、いかようにも処理できるでしょう。
 このように、いくら基準となる数字を出しても、業者の側にそれを改ざんする余地が残っている限り、あまり効力をもたないと考えられます。通知の中には海外で行われた子犬の死亡率が資料として添付されていますが、オーストラリアの18.5%、ノルウェーの8%、フランスの25.2~30.9%と比較すると、日本の「5.6%」という数字は非常に小さいと言えます。この数字は「すごいじゃないか!」とポジティブ見ることもできますし、「業者が報告した元データがそもそもデタラメなんじゃないの?」とネガティブ見ることもできます。 日本のペット産業