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犬の知能を測る「犬用IQテスト」が考案される

 イギリス・ロンドンの「LSE」とスコットランド・エジンバラ大学の共同チームは、犬の知能を計測するためのIQテストを考案しました(2016.2.10/イギリスなど)。

詳細

 当テストの目的は、人間の知能において想定されている「g因子」が、果たして人間以外にもあるのかどうかを検証することです。「g因子」とは「全ての知的活動に共通に働く基盤的因子」のことを指します。研究チームは68頭のボーダーコリーを対象とし、以下に述べる3種類の知能テストを行いました。
犬のIQテスト(試験段階)
  • 先見能力テスト 「短い」、「長い」、「V字型」、「迷路型」という4種類の透明な仕切り板を設定し、スタート地点から板の裏にあるおやつにたどり着くまでの時間を計測する。犬のIQテスト~先見能力テスト
  • 指さし理解力テスト 実験者は真正面を向いたまま腕だけを動かし、2つある器の内の一方を指し示す。犬が器に興味を惹かれるまでの時間を計測する。犬のIQテスト~指さし理解力テスト
  • 数量比較能力テスト おやつが少ないお皿と多いお皿の2つを同時に掲示し、どの程度多い方を選ぶかをカウントする。犬のIQテスト~数量比較能力テスト
 テストの結果、「先見能力」が好成績だった犬ほど、他のテストにおいても好成績を収めたと言います。こうした傾向から研究チームは、犬にも「g因子」に相当する基礎的な知能が存在しているかもしれないとの結論に至りました。この知見は今後、人間の知能の発達や、認知症の発症因子の研究などに応用されていく予定です。 A general intelligence factor in dogs Who's a clever boy, then? Find out with doggy IQ test!

解説

 犬を知能テストの対象とすることのメリットは、個体間の変数が少ないという点です。一般的に「純血種」と呼ばれる犬種は遺伝的にも近く、また飲酒歴、喫煙歴、社会的な地位といった紛れもないため、個体間での比較が人間よりもスムーズに進みます。一方デメリットは、犬の「やる気」と知能とが混同されてしまう危険性があるという点です。過去に狼を対象として「指さしテスト」が行われたことがあります。この時の成績が犬よりも悪かったため、狼は長らく犬よりも指さし理解力が低いと考えられてきました。しかし2003年、犬と狼を全く同じ環境で、幼い頃から育てた場合、狼は犬と同等の理解力を示すようになることが確認されました。この事実から研究者は「犬と狼の間に見られる指さし理解力の違いは、知能の違いではなく、どの程度人間に対して注目するかという点によって左右される」との結論に至りました。
 上記したように「どの程度人間に注目できるか?」とか「どの程度おやつに執着を見せるか?」といった犬の側の「やる気」によって、知能テストの成績に格差が生まれてしまう余地があるようです。学術的であれ遊び半分であれ、知能テストを実施する際は、この点を常に念頭に置いておく必要があるでしょう。