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アトピー性皮膚炎の重症度は犬のストレスと比例関係にある

 アトピー性皮膚炎を抱えた犬の毛を調べたところ、皮膚の状態が悪いほど被毛中のストレスホルモンのレベルも高まることが明らかになりました(2016.8.9/韓国)。

詳細

 調査を行ったのは、ソウル大学校の獣医科学研究所。人医学の分野で確認されている「皮膚炎の重症度が増すほど生活の質も低下する」という関連性が、皮膚病を抱えた犬にも当てはまるかどうかを検証するため、健康な犬5頭とアトピー性皮膚炎を患った犬21頭を対象とした比較調査を行いました。調査方法は、坐骨(お尻の骨)付近にある被毛をカットし、中に含まれるストレスホルモン「コルチゾール」のレベルを計測するというものです。その結果、以下のようなデータが得られたと言います。
被毛中コルチゾール(pg/mg)
  • 健康(5頭)=5.65±1.28
  • 軽度(4頭)=8.56±1.1
  • 中等度(6頭)=14.76±4.32
  • 重度(11頭)=19.85±4.74
 統計的な計算の結果、軽度アトピーと健康な犬との間に顕著な差異は見られなかったものの、中等度以上の犬においては、「重症度が高まるほどコルチゾールレベルも高まる」という正の相関関係が見出されたと言います。
 こうした事実から調査チームは、アトピー性皮膚炎を抱えた犬は慢性的なストレスにさらされており、そのストレスの度合いは皮膚炎の重症度と関連しているという可能性を突き止めました。皮膚の水分喪失に伴うかゆみや、患部を掻いた後の引っかき傷が、犬にとってのストレスになっているものと推測されています。 Elevated cortisol content in dog hair with atopic dermatitis 犬のアトピー性皮膚炎好発部位

解説

 過去に行われた飼い主に対するアンケート調査では、「アトピー性皮膚炎の重症度が増すほど犬の生活の質も低下する」という関連性が確認されています。しかしこの調査は、あくまでも飼い主による間接的な評価であり、犬に直接聞いた結果ではありません。今回ソウル大が行った被毛中のコルチゾールレベル検査は、言葉を話せない犬の代わりに「毛」に語ってもらう直接的なストレス評価法として注目されています。この方法は個体の日内変化や一時的な感情の影響を受けにくく、また海外においても有効性が確認されつつある手法ですので、犬の生活の質を定期的にモニタリングする際に役立ってくれることでしょう。 長期ストレスと被毛コルチゾール 犬のアトピー性皮膚炎