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パグが最もかかりやすい病気トップ10

 イギリス国内で行われた大規模な統計調査により、パグが最もかかりやすい病気トップ10が明らかになりました(2016.8.8/イギリス)。

詳細

 調査を行ったのは王立獣医大学。「VetCompass」と呼ばれる疫学プログラムを通じて、第一診療におけるパグの医療データを統計的に集計したところ、以下のような事実が明らかになったといいます。元となったのは2013年にイギリス中部から南東部にある102の動物病院を受診した合計1,009頭の医療データです。
パグの部位別有病率
パグの体のうち病気を発症しやすい部位
  • 頭・首=43.51%
  • 腹部=19.33%
  • 背中・胸=12.49%
  • 四肢=12.09%
  • 肛門・会陰部=7.53%
  • 骨盤=1.49%
  • 脊柱=0.99%
  • 尾=0.10%
パグの疾患別有病率
パグが発症しやすい病気のランキング
  • 肥満=13.18%
  • 角膜の病変=8.72%
  • 外耳炎=7.53%
  • 何らかの耳の疾患=7.43%
  • 肛門嚢病変=6.54%
  • 歯周病=6.14%
  • 爪の伸びすぎ=5.65%
  • 短頭種気道症候群=5.15%
  • 嘔吐=4.96%
  • 下痢=3.77%
Demography and health of Pugs under primary veterinary care in England
Dan G. O’Neill, Elisabeth C. Darwent, et al. 2016

解説

 犬全体における肥満率が6%であるとに対し、パグの肥満率は13%と高率でした。こうした高い肥満率の背景には、うるうるした瞳で見つめられた飼い主がついついおやつを与えてしまうということのほか、ドッグショーの審査員が肥満体のパグを「理想的」としてもてはやす悪習があるように思われます。2015年、イギリス・リバプール大学の獣医学チームが、世界最大の犬の品評会「クラフツ・ドッグショー」において、2001年から2013年までの間に上位入賞を果たした28犬種を写真で評価したところ、全体の26%もの犬が肥満傾向にあったと言います。また、特に高い割合を示していたのはパグ(80%)、バセットハウンド(68%)、ラブラドールレトリバー(63%)だったとも(→出典)。 犬の肥満
 角膜の病変は短頭種の宿命であるようです。2015年、イギリスのロンドン大学が中心となった調査チームは、国内にある小動物専門病院を訪れた700頭の犬の中から、角膜潰瘍にかかっている犬、もしくは過去にかかったことがある犬を選別し、そこに共通項があるかどうかを精査しました。その結果、以下のような危険因子が浮き彫りになったといいます(→出典)。 犬の角膜炎
角膜潰瘍の危険因子
  • オス犬が71%
  • ほとんどが小型犬(11.4±1.1kg)
  • 最も多い犬種はパグ
  • 鼻にシワがあると5倍かかりやすい
  • 眼裂が10%広がり、白目が見えていると3倍かかりやすい
  • 「マズルの長さ/頭の縦の長さ<0.5」(=鼻ペチャ)だと20倍かかりやすい
 外耳炎を含めた耳疾患もまた、短頭種という身体的な特徴によって引き起こされているかもしれません。2016年、イギリス・ケンブリッジ大学の獣医学チームは、25頭の短頭種と40頭の非短頭種を対象としてCTスキャンとMRI検査を行い、マズルの構造と中耳障害の間に関連性があるのかどうかを検証しました。その結果、短頭種では鼓室胞と管腔サイズが小さく、中耳内への滲出が頻繁に起こり、潜在性の中耳障害を抱えている可能性が高いという結論に至りました(→詳細)。 犬の中耳炎
 短頭種気道症候群を患って犬が苦しげな呼吸をしているのに、約半数の飼い主は「問題ない」と回答したそうです(→出典)。恐らく、常にゼーゼーと荒い息遣いをしているため、それが正常であると錯覚してしまうのでしょう。この現象と同様、鼻ペチャの顔に見慣れてしまった人は、その顔が各種疾患の原因になっているにもかかわらず、それが普通であると誤認してしまう危険性があります。ブルドッグの場合と同様(→詳細)、犬種標準の改正や他犬種からの血統導入といった抜本的な改革を行わないかぎり、パグのマズルを長くして不要な苦しみから解放してあげる方法はないと思われます。 パグ 犬の鼻腔狭窄 パグの遺伝的疾患を減らすためには、まずマズルの長さを伸ばすことが必要