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ホーディング環境下で育った犬の行動特性

 狭い場所にぎゅうぎゅう詰めにされ、適切な飼養や管理が行われない「アニマルホーディング」という環境下で犬たちが生活した場合、どのような行動特性を示すようになるかが明らかになりました(2016.4.8/アメリカなど)。

詳細

劣悪環境下に多くの犬や猫を軟禁するアニマルホーディング  調査を行ったのは、アメリカやカナダなどからなる共同研究チーム。飼い主のアンケート調査から犬の行動特性を浮き彫りにする「C-BARQ」と呼ばれる手法を用い、ホーディング環境で生活していた408頭の犬と、正常な環境下で生活していた11,277頭の犬を比較しました。ホーディンググループで確認された主な特徴は以下です。
スコアが高い
  • 見知らぬ人への恐怖
  • 他の犬への恐怖
  • 無生物への恐怖
  • 接触への過敏な反応
  • 留守番中の不適切な排泄行動
  • 分離不安行動(家庭内に子供がいる場合)
  • 反復行動(同居犬が居る場合)
  • 愛着と注目を求める行動(新しい家庭で2.5年以上経過した場合)
スコアが低い
  • 訓練性
  • 活動性
  • 犬同士の対抗心
  • 小動物の追跡衝動
  • 無駄吠え(同居犬がいない場合)
  • 見知らぬ人への攻撃性(同居犬がいない場合)
  • 他の犬への攻撃性(犬が2歳以上の場合)
  • 興奮しやすさ(新しい家庭に来てから最初の2.5年だけ)
 こうした結果から研究チームは、ホーディング環境からやってきた犬の行動特性を事前に理解しておく事は、犬に対する里親の過剰な期待を軽減すると同時に、行動を修正する時のヒントになってくれるだろうとしています。 Behavioural characteristics of dogs removed from hoarding situations

解説

 「アニマルホーディング」(Animal Hoarding)とは、劣悪な環境下に尋常でない数の動物を詰め込んでいる状態のことです。アメリカの動物愛護協会(HSUS)によると、米国内では毎年25万頭に及ぶ動物たちがホーディングの犠牲になっているといいます(→出典)。アメリカの動物虐待防止協会(ASPCA)では、「アニマルホーダー」に関して以下のようにまとめていますのでご紹介します(→出典)。
アニマルホーダーの種類
  • 力不足型 最初は適切な飼養を行っていたものの、動物の数が徐々に増え、個人の手に余るようになる。状況が少しずつ変化したため、悲惨な現状を把握できていない。ブリーダー崩壊など。
  • 保護者崩れ型 動物たちを助けたいという強い衝動に駆られて次から次へと動物たちを受け入れ、結果として劣悪な飼育環境に陥ってしまう。「自分がやらなきゃ誰がやる」という使命感に燃えている。
  • 独善型 自分の満足のために動物をかき集め、動物に対して与える苦痛に関しては気にかけない。後悔や罪悪感がなく、他人による介入を嫌う。
ホーディングに走る原因
  • 強迫神経症の一種
  • 人格障害に根ざした愛着障害
  • 偏執病
  • 妄想的思考
  • うつ病
  • その他の精神疾患
  • トラウマになるような出来事や喪失
アニマルホーダーの特徴
  • 一見正常で自分は動物を助けているんだと強く信じ込んでいる
  • 多頭飼育の状況が十分管理されていると他人に信じこませることができる
  • 動物の苦しみを認識できない
  • 健康が悪化したり社会から疎外された老齢の人が多い
  • 非常に多くの動物を飼育しており、トータル数を把握していない
  • 家が劣悪な環境にある
  • 床が糞尿や嘔吐物で汚れており強烈なアンモニア臭がする
  • 動物たちは痩せこけて元気がなく、社会化もされていない
  • ノミや害獣が蔓延している
  • 当人は社会から孤立しており、気にかける人がいない
  • すべての動物は幸せで健康であるという盲信を抱いている
ホーディングシェルターの特徴
  • 非営利の動物保護施設という形でスタートする
  • 動物たちが管理されている場所をなかなか見せてくれない
  • 管理している総数を教えてくれない。もしくは把握していない
  • 里子に出す数よりも引き取る数の方が圧倒的に多い
  • 時として、行政機関や他の保護団体を目の敵にする
 日本では2016年3月、札幌市が10頭以上飼育する人への届け出を義務付ける条例を可決しました。その背景にあるのは2013年、2件の多頭飼育崩壊による犬の引き取り数が34頭(全体の28%)に上ったことです。こうした多頭飼育環境から来た犬を里子に出す場合、今回アメリカとカナダのチームが行った研究が多少役に立ってくれるでしょう。ホーディング犬は概して恐怖心が強く、孤独を嫌う傾向があるようですので、そうした行動特性に対応した家庭環境を見つけることが望まれます。例えば、家の中には最低1人の人間がいる犬のしつけに習熟した大家族などです。