クイールとは?
クイールは、本や映画など多くの作品に登場する盲導犬。
1986年6月25日、東京のとある家庭に5頭のラブラドールレトリバーが生まれました。兄弟たちはすくすくと育ち、無事に生後50日を迎えます。その内の1頭「ジョナサン」は人が大好きで、なおかつ落ち着きのある点を見込まれ、盲導犬になるべく、パピーウォーカー仁井さんの元へ預けられました。パピーウォーカーとは、盲導犬候補生に人間の愛情を教え込む、期間限定の家庭のことです。 「ジョナサン」から「鳥の羽根」を意味する「クイール」(Quill)へと改名した彼は、学校帰りの子供たちや商店街の人たちに愛されながらその後の1年間を過ごします。そしてクイールの体重が20キロを越えたころ、彼はいよいよ京都・亀岡市にある関西盲導犬協会の総合訓練センターに移され、盲導犬になるためのトレーニングを開始しました。訓練を担当したのは、カリスマトレーナーとして有名な多和田悟さんです。
ここでの厳しい訓練に耐えたクイールは、合格率30~40%という狭き門をくぐり、見事盲導犬に合格しました。 盲導犬になった彼の最初のパートナーは、亀岡市に住む渡辺さんでした。渡辺さんは当初、犬に対して苦手意識を持っていましたが、クイールと4週間の共同訓練を終え、色々な場所に行くに連れ、だんだんと心を開いていきます。そのうち、バス通勤はもちろん、散歩や山登りなど、どこにでも一緒に行くほど、切っても切れない仲になっていきました。 渡辺さんの体調に変化が現れたのは、クイールとの共同生活が始まってから2年目のことです。検査の結果は、重い腎臓病。最初は自宅から人工透析に通っていましたが、症状が悪化するに伴い、入院生活を余儀なくされます。結果として、クイールの出番は徐々に少なくなっていきました。
パートナーの回復を待つクイールの待機生活が3年ほど続いたある日、渡辺さんが「クイールの待っている訓練センターに行きたい」とリクエストします。早速センターに行くと、そこには穏やかな表情で彼を待つクイールの姿がありました。渡辺さんとクイールは、約3年ぶりにようやく足並みをそろえて歩くことができたのです。その距離はわずか30メートルほどでしたが、渡辺さんにとっては十分だったようです。その1週間後、彼は静かに息を引き取りました。 パートナーを失ったクイールはその後、学校などにおける盲導犬のデモンストレーションという第二の仕事に就きます。そんな彼の姿を、傍らで見守る人がいました。パピーウォーカーの仁井さんです。1997年、クイールが11歳を迎えた頃、体力の衰えを感じ取った仁井さんは、彼を引き取ることを決意します。最初の一年間を過ごした思い出の家に戻ってきたクイールは、白血病と戦いながらも最後の一年間を幸せに過ごし、1998年7月20日、12才と25日で他界しました。 クイールの部屋 関西盲導犬協会
1986年6月25日、東京のとある家庭に5頭のラブラドールレトリバーが生まれました。兄弟たちはすくすくと育ち、無事に生後50日を迎えます。その内の1頭「ジョナサン」は人が大好きで、なおかつ落ち着きのある点を見込まれ、盲導犬になるべく、パピーウォーカー仁井さんの元へ預けられました。パピーウォーカーとは、盲導犬候補生に人間の愛情を教え込む、期間限定の家庭のことです。 「ジョナサン」から「鳥の羽根」を意味する「クイール」(Quill)へと改名した彼は、学校帰りの子供たちや商店街の人たちに愛されながらその後の1年間を過ごします。そしてクイールの体重が20キロを越えたころ、彼はいよいよ京都・亀岡市にある関西盲導犬協会の総合訓練センターに移され、盲導犬になるためのトレーニングを開始しました。訓練を担当したのは、カリスマトレーナーとして有名な多和田悟さんです。
ここでの厳しい訓練に耐えたクイールは、合格率30~40%という狭き門をくぐり、見事盲導犬に合格しました。 盲導犬になった彼の最初のパートナーは、亀岡市に住む渡辺さんでした。渡辺さんは当初、犬に対して苦手意識を持っていましたが、クイールと4週間の共同訓練を終え、色々な場所に行くに連れ、だんだんと心を開いていきます。そのうち、バス通勤はもちろん、散歩や山登りなど、どこにでも一緒に行くほど、切っても切れない仲になっていきました。 渡辺さんの体調に変化が現れたのは、クイールとの共同生活が始まってから2年目のことです。検査の結果は、重い腎臓病。最初は自宅から人工透析に通っていましたが、症状が悪化するに伴い、入院生活を余儀なくされます。結果として、クイールの出番は徐々に少なくなっていきました。
パートナーの回復を待つクイールの待機生活が3年ほど続いたある日、渡辺さんが「クイールの待っている訓練センターに行きたい」とリクエストします。早速センターに行くと、そこには穏やかな表情で彼を待つクイールの姿がありました。渡辺さんとクイールは、約3年ぶりにようやく足並みをそろえて歩くことができたのです。その距離はわずか30メートルほどでしたが、渡辺さんにとっては十分だったようです。その1週間後、彼は静かに息を引き取りました。 パートナーを失ったクイールはその後、学校などにおける盲導犬のデモンストレーションという第二の仕事に就きます。そんな彼の姿を、傍らで見守る人がいました。パピーウォーカーの仁井さんです。1997年、クイールが11歳を迎えた頃、体力の衰えを感じ取った仁井さんは、彼を引き取ることを決意します。最初の一年間を過ごした思い出の家に戻ってきたクイールは、白血病と戦いながらも最後の一年間を幸せに過ごし、1998年7月20日、12才と25日で他界しました。 クイールの部屋 関西盲導犬協会
クイールの写真
以下でご紹介するのは、本や映画など多くの作品に登場する盲導犬「クイール」の写真です。
子犬の頃のクイール。足についている模様がカモメに見えたことから、生家である三戸家では「ジョナサン」と呼ばれていた。写真の出典はこちら。
盲導犬のステータスシンボルであるハーネスを装着したクイール。彼を育てた盲導犬訓練士の多和田悟さんは、クイールを育てた訓練士という本を出している。写真の出典はこちら。
パートナーである渡辺さんをリードするクイール。クイールのお話は盲導犬クイールの一生という書籍や、「クイール」という映画にもなっている。映画においては、小林薫さんが渡辺さん役を演じた。写真の出典はこちら。