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マージョリー

 世界で初めてインスリンを投与された糖尿病の犬「マージョリー」について解説します。

マージョリーとは?

 マージョリー(Marjorie)は、世界で初めてインスリンを投与された糖尿病の犬。
後のノーベル賞受賞者となる、カナダ人医師フレデリック・バンティング(Frederick Grant Banting)  カナダ人医師フレデリック・バンティングとその助手のチャールズ・ベストは、1921年、カナダにあるトロント大学で、ある物質に関する研究を始めました。その物質とは、膵臓(すいぞう)と呼ばれる臓器から分泌される未知の分子です。
 バンティングとベストはまず、犬を開腹し、膵臓に連なる「膵管」(すいかん)と呼ばれる管を結ぶ手術を施しました。その結果、全ての犬が死んでしまったといいます。この失敗を教訓とし、二人はその後様々な試行錯誤を繰り返しました。そしてとうとう、膵臓を摘出することで、糖尿病にかかった犬を人為的に作り出すことに成功します。
 「人工糖尿病」の犬を作り出したまではいいものの、このままでは犬が死んでしまいます。そこでバンティングとベストは、「糖尿病にかかった犬の血糖値をコントロールする謎の物質」の発見に急いで取り掛かりました。研究は苦しく、二人は睡眠時間を削り、実験室のブンセンバーナーで食事を作ったといいます。
人工生成されたインスリンによって70日間行き続けた犬・マージョリー(Marjorie)  そんな二人の努力が報われたのは、1921年夏のある日のことでした。摘出した膵臓から様々な物質を抽出し、実験室にいる糖尿病犬たちに1つずつ注射していったところ、ある特定の物質を注射された犬の血糖値が下がり始めたのです。「ナンバー33」と呼ばれていたこの犬は、その後70日間生き続け、投与物質の有効性を証明しました。
 この記念すべき犬はその後「マージョリー」と名づけられ、世界で初めて血糖値を下げる物質「インスリン」を投与された糖尿病の犬として記録されることになります。またバンティングも、「インスリン抽出」という功績が評価され、1923年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。 Tront in Time Animal Research Sir.Frederick Banting

マージョリーの写真

 以下でご紹介するのは、世界で初めてインスリンを投与された糖尿病の犬「マージョリー」の写真です。 バンティングとベスト、およびマージョリーのスリーショット
 マージョリーとバンティング(右)、およびベスト(左)のスリーショット写真。マージョリーの実験からわずか1年後の1922年11月、製薬会社・イーライリリー社が非常に純粋なインスリンの生産に成功した。そして翌1923年からは早くも、北アメリカやヨーロッパにおいて「アイレチン」という商品名で流通するようになっている。現代の感覚で言うと恐ろしいスピード展開。 写真の出典はこちら