トップ有名な犬一覧人命を救助した犬カバン

カバン

 顔の一部を失いながらも飼い主の少女を事故から救った犬「カバン」について解説します。

カバンとは?

 カバン(Kabang)は、顔の一部を失いながらも飼い主の少女を事故から救った犬。
 フィリピン・ミンダナオ島最西端の都市サンボアンガに暮らすルディ・バンガルさんは、2011年12月、道端をうろついていた子犬を拾い、ペットとして養い始めました。このメス犬は、現地の言葉で「ブチ犬」を意味する「カバン」と名づけられ、ルディさんや娘のディナに可愛がられながら育ちました。
近づいてくるバイクに突進し、上顎を失った英雄犬カバン  貧しいながらも幸せな生活を送っていたルディ一家でしたが、ある日生死を分けるような大事故に遭遇します。2011年の12月、ルディ家の9歳になる娘ディナと3歳になる彼女のいとこが、サンボアンガ市内の往来を横切ろうとしたところ、一台のオートバイがまっすぐ突っ込んできたのです。このままでは衝突してしまうと思ったその瞬間、バイクの前に飛び出してきたのは、2人に同行していたカバンでした。オートバイは横転したものの、幸い運転手も子供たちも、かすり傷程度で大事には至らなかったと言います。
 しかしカバンだけは違いました。バイクを止めようとした拍子にマズルを前輪にぶつけ、上顎の骨が粉々に砕けてしまったのです。一時は「死んでしまうのではないか?」と心配されたものの、驚くべきことに、彼女は大怪我を抱えたままどこかへ走り去っていったそうです。
 生死不明だったカバンが再び姿を現したのは、事故から2週間後のことでした。ルディ家にひょっこりと帰ってきた彼女は、命に別状はないものの、怪我をした部分が感染症を起こし、痛々しい状態だったといいます。ルディ家は決して裕福ではなかったため、手術費用を工面することができず、せいぜい抗生物質を投与するくらいしかできませんでした。
カバンのための募金運動を始めたニューヨークの看護士カレン・ケンガットさん  傷口の二次感染による死の危機にさらされていたカバンに転機が訪れたのは、事故から2ヶ月ほど経った2012年2月のことです。インターネットで偶然カバンの話を耳にしたニューヨークのカレン・ケンガットさんは、「彼女のために何かをしたい」と思い立ちます。早速「カバンに愛の手を」という募金キャンペーンを始めましたが、立ち上がりは静かでした。しかし、動物の福祉を支援する「Animal Welfare Coalition」の手助けが入ってからは徐々に勢いを増し、わずか4週間で目標額を達成するに至ります。またこのころから、カバンの英雄的な行動が世界各国のニュースで報道されるようになり、彼女は一躍人気者となりました。
地元フィリピンに帰国し、家族の出迎えを受けるカバン  ニューヨーク発の募金運動は、結局47カ国にまで広がり、カバンの顔面整形手術に十分なだけの金額が集まりました。2012年10月、彼女は世界中からの善意を元手にしてアメリカへと飛び、早速手術の準備に入りました。しかし、手術前の予備検査において、フィラリアと悪性腫瘍に冒されていることが判明し、手術の延期を余儀なくされます。結局これらの病気を完治させるのに半年を要し、2013年3月、ようやく本命の整形手術が施されました。
 手術は無事に成功し、6月3日に退院、6月8日にはフィリピンに帰国し、地元の人々からは「ヒーロー」として扱われ、写真をせがまれるほどの人気者なっています。 Kabang Kabang the Hero Dog

カバンの写真・動画

 以下でご紹介するのは、顔の一部を失いながらも飼い主の少女を事故から救った犬「カバン」の写真と動画です。 事故で失った上顎を手術で修復したカバン
 砕けたカバンの上顎は、再建まではできなかったものの、首や頬の皮膚を移植し、露出していた敏感な部分はカバーされた。奥歯がかろうじて2本残っているため、エサを噛むことはできるという。また、嗅覚も残っている。写真の出典はこちら
地元フィリピンで家族と再会したカバン
 27,000ドル(約270万円)にも及ぶカバンの治療費は、全て世界中からの募金でまかなわれた。地元フィリピンではヒーローとして愛され、一緒に写真を撮りたがる人々が訪れるという。写真の出典はこちら
2021年、13歳で虹の橋へと旅立った英雄犬カバン
 2021年5月、カバンは推定13年の短い生涯に幕を閉じた。前日までは元気でご飯をもりもり食べていたものの、眠っている間に原因不明のまま息を引き取ったという。写真の出典はこちら
【閲覧注意】英雄犬カバン
 以下でご紹介するのは、自らの命の危険を顧みず、飼い主の女の子を事故から救った英雄犬カバンの映像です。外見がややショッキングなため、閲覧注意としておきます。 元動画は→こちら