トップ犬の食事ドッグフード成分・大辞典発色剤亜硝酸ナトリウム

亜硝酸ナトリウム~危険性から使用基準まで

 ドッグフードのラベルに記された「亜硝酸ナトリウム」。この成分の意味・目的から安全性までを詳しく解説します。何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

亜硝酸ナトリウムとは何か?

 亜硝酸ナトリウム(英語:sodium nitrite)とは白~淡黄色の結晶性粉末で、亜硝酸ソーダとも呼ばれます。主な機能は、食肉中のヘモグロビンやミオグロビンと結合して鮮赤色を保たせること、およびボツリヌス菌をはじめとする細菌の生育を抑えて食肉製品の腐敗を防ぐことです。 亜硝酸ナトリウムを含んだハムと含んでいないハムの色の違い  成分の分類上は「発色剤」に属し、フードの色や鮮度を調整して犬の食いつきを良くする作用を持っています。「着色料」と発色剤の大きな違いは、前者の機能が食品への色付けであるのに対し、後者の機能は色を保たせるという点です。
亜硝酸ナトリウムの使用基準・概要
  • 厚生労働省=指定添加物
  • IARC=2A(赤肉)
  • EFSA=使用基準0.07mg/体重1kg/日
  • JECFA=使用基準0.06mg/体重1kg/日
  • ペットフード1g中100μg

日本での使用基準

 日本では厚生労働省によって指定添加物として認可されており、食肉製品の発色剤として用いられます。一方、大量の場合は毒物及び劇物取締法で劇物に指定されているという二面性を持った物質です。
 厚生労働省は食品由来の亜硝酸イオンが、ヒトの健康に悪影響を及ぼしているという科学的知見がないとの見解を示しています。食品添加物として使用した場合、亜硝酸ナトリウムとしての最大残存量は、食肉製品、鯨肉、ベーコンが「70mg/kg」、魚肉ソーセージ、魚肉ハムが「50mg/kg」、いくら、すじこ、たらこが「5mg/kg」です。
 人間の体に悪いという確たる証拠はないものの、近年はハムの製造過程において調味液に発色剤を使用しない「無塩せき」をPRポイントとした製品が市場に出回るようになっています。

海外での使用基準

 亜硝酸塩を含んだ食肉を加熱したときの代謝産物であるニトロソアミンの一部は発がん性を有していることが確認されていますが、亜硝酸塩の摂取量がADI(一日摂取許容量)の範囲内であれば健康に問題はないだろうとしています。ちなみにIARC(国際がん研究機関)は、亜硝酸塩が用いられる赤肉(加工されていない哺乳動物の肉全般)の発がん性を2A、すなわち「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と位置づけています。
 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)におけるADIは体重1kg当たり0.06mgで、EFSA(欧州食品安全機関)におけるそれは亜硝酸塩に関して体重1kg当たり0.07mgと設定されています。

ドッグフードに入れると危険?

 日本のペットフード安全法では2015年2月より亜硝酸ナトリウムの使用基準がフード1g中100μgまでと設定されました。 これは2013年から2014年にかけ、日本国内で流通しているセミモイストとウェットフードを調べたところ、かなりの確率で亜硝酸ナトリウムが含まれており、また一部はラベルへの記載を怠っていることが明らかになったためです出典資料:Kobayashi, 2016
 ちなみにラットにおける半数致死量(LD50)は180mg/kg、人間における致死量は71mg/kgと推定されています。つまり体重50kgの人なら3.5gの摂取で死亡する危険があるということです。
 犬は赤色をうまく認識できないためドッグフードやおやつが赤かろうがくすんだ灰色だろうがそれほど気にしません。フードに亜硝酸ナトリウムが添加される理由は、ボツリヌス菌の抑制を除けば「飼い主の視覚にアピールして美味しく見せる」ことだと考えられます。
多くの場合、ドッグフードや犬用おやつのラベルには亜硝酸ナトリウムの含有量が記載されていません。基準値以内なのかどうかを逆算できないのは困ったものですね。