トップ愛犬家の基本ドイツのペット産業犬の小売・ペットショップ

ドイツにおける犬の小売・ペットショップ

 ドイツにおける小売の中心はブリーダーからの直販です。日本のようなオークションシステムや犬猫の生体販売を行うペットショップはありません。その一方、規制の緩いインターネットを介した犬の売買が大きな問題になっています。また近隣諸国と国境を接するという地理的な関係上、隣国から違法に持ち込まれて売買される犬たちが非常に大きな懸案事項になっています。

犬の販売は誰が行っているのか?

基本的にはブリーダー自身が行います。

 ブリーダーが特定の犬種協会に加入している場合、協会の参考情報を元に子犬を新しい飼い主に販売します。販売価格は血統や受賞歴、スタンダードとされる規定(毛色・体格)などによって変動し、犬種協会が参考価格を示すことがあるものの、最終的な売値を決定するのはブリーダー本人です。
 販売に関しては州ごとに独自の規制が設けられていることもあります。例えばベルリン州では2016年、「1歳以上の犬でなければ販売してはならない」という規制が導入され、ベルリン州から他の州に売り渡すことも、他の州からベルリン州に買い寄せることも禁止されました。しかし必要経費以上の料金を請求する営利目的のブリーダーにはなぜかこの規制は適用されておらず、不公平感を生んでいます。そのため、目下違憲として訴訟の準備をしているとのこと。

ペットショップがないというのは本当か?

犬や猫の生体販売をしている小売店はほぼゼロです。

 ドイツ国内に生体販売を禁止する法律ありませんので、ペットショップの存在自体は違法ではありません。生体販売を行うペットショップがほとんどない理由は小売業界の自主規制です。
 一方、犬や猫は扱っていないものの爬虫類や鳥類といった小動物を扱うペットショップは普通に存在しています。またペットグッズを扱うという意味でのペット用品店も普通にあります。ただし近年はデュイスブルクにある「Zoo Zajac」など、犬や猫の生体販売を扱うペットショップも出てきているようです。ただし社会的な風当たりが強く、「ペットショップに犬を販売したら除名にする」という警告を所属ブリーダーに出している犬種協会もあります。
Zoo Zajac
 以下でご紹介するのはデュイスブルク最大のペットショップ「Zoo Zajac」の動画です。2012年から犬の展示販売を開始しましたが、一部の動物愛好家から非常に強い非難を受けています。この人たちが日本のペットショップを見たら腰を抜かすでしょう。 元動画は⇒こちら

犬の違法販売は無いのか?

ペットの違法販売はあります。

 現在ドイツ国内で大きな問題になっているのは、東欧から違法に持ち込まれた犬や猫がインターネットを通じて違法に売買されていることです。犬を郵送で送ることはさすがに禁止されているものの、売買自体に対する法的な規制がないため、飼い主がブリーダーまで引き取りにいくか、ブリーダーが自宅まで車で配送するという形で犬や猫の取引が行われています。また高速道路のサービスエリアなどで路上販売するなど、かなりいい加減なケースも散見されます。
 東欧諸国からドイツ国内に犬や猫を違法に持ち込むことは簡単です。EU規則では「許可なしで5頭以上の犬を運搬してはならない」とされているものの、4頭までなら許可は必要なく、また国境で厳しい検問をしているわけではないため、車の中に隠すなどして違法に国内に持ち込むケースがざらにあります。
 またドイツの法律により、狂犬病の侵入を防ぐためワクチンによる抗体が体内にまだ生成されていない生後15週齢未満の子犬は輸出入できません。しかし獣医師の発行するワクチン接種証明書や、国家間を移動する際のペットパスポート自体が偽造されているケースもあるため、15週齢未満の子犬が国内に流入することもあります。
 こうした問題があることから、政府のスポークスパーソンの中には「密室で行われるインターネット取引よりはオープンな形で行われるペットショップでの生体販売の方が健全である」と考えてる人すらいます。

日本のペットショップとの違い

 日本とドイツの小売における大きな違いは、ネットオークションという流通システムが存在していないこと、及び犬や猫の生体販売を行うペットショップが存在していないことです。お金を出して犬を購入したいという場合、希望者はブリーダーと直接交渉する必要があります。
 ではペットショップが存在しないことによって悪徳繁殖業者を排除できているのでしょうか?答えはノーです。オークションやペットショップという販路がない一方、インターネットを介した通信販売という販路がありますので、やはり悪徳繁殖業者に付け入る隙を与えてしまっています。「取り締まりにくいインターネット通販に比べれば、実店舗を持つペットショップの方が監督しやすくはるかに健全である」という政府のスポークスパーソンの言葉が、ドイツ国内における問題点を如実に物語っています。
 ヨーロッパ(EU)ではペットパスポートシステムにより比較的簡単に動物が国境を越えることができるようになりました。しかしこのシステムは、悪徳繁殖業者とグルになった獣医師が一人でもいれば簡単に悪用されてしまう諸刃の剣です。獣医師が健康証明書やパスポートを偽造してしまえば、簡単に国境を越えることができますし、実際に越えています。こうした犬の密輸入問題はドイツのみならずイギリスでも報告されていますので、おそらくEU全体の問題と言ってよいでしょう。悪徳繁殖業者の本拠地は多くの場合東欧諸国です。 イギリスは動物愛護の先進国? 法の監視機構がいい加減なイギリスでペット産業がほとんど無法化 「ルーシー法」(Lucy's Law)の背景にあるのはイギリス国内における子犬の違法売買