トップ愛犬家の基本ドイツのペット産業犬の飼い主

ドイツにおける犬の飼い主

 日本とドイツの大きな違いは、通称「犬命令」と呼ばれる犬の飼育方法に関した数値規則が設けられているという点です。また州によっては犬の飼育を許可制にするなど、犬だけでなく飼い主に対しても 基準を設けているケースがあります。

犬の飼い主の義務は何か?

国全体に適用される動物保護法や犬命令のほか各州に設けられている独自の州法を守らなければなりません。

 州法の例を挙げると、ニーダーザクセン州では2013年から飼い主の免許制が導入されており、犬と飼い主の両方が獣医局(州付属の行政機関)の試験に合格しなければ犬を飼うことができないことになっています。
 飼い主は飼育する前に筆記試験を受験し、飼育開始後1年以内に実技試験を受験することが義務付けられています。このライセンスは特定の犬と飼い主に対して発行されるため、同じ飼い主が別の犬を飼育し始めた場合には、改めてその犬との実技訓練を受ける必要があります。具体的には飼い主の指示に従う(服従)訓練が終了しているかを確認する試験と、街中で行動を制御できているかを確認する試験などです。
犬免許
 以下でご紹介するのはニーダーザクセン州で採用されている「犬免許」(Hundefuhrerschein)の試験の模様です。知識だけでなく実技試験もクリアしなければなりません。誕生のきっかけになったのは、少年がピットブルに噛まれて死亡するという2002年に発生した咬傷事故でした。検証の結果「問題なのは犬ではなく人間の方」という結論にいたり、犬だけでなく飼い主の方にも試験を課す体制が採られるようになりました。 元動画は⇒こちら
 ライセンスを取得した後も、犬が覚えた内容を忘れさせないための様々なプログラムが用意されています。例えば各種犬種団体やドッグスクールで用意されたトレーニングプログラムなどです。ドイツ犬連盟(VDH)以外にも訓練施設が全国にたくさんあり、犬のしつけのみならず飼い主の知識レベル向上も図れる環境が整っています。
 また同じくニーダーザクセン州では、犬を原因とする交通事故や咬傷事故を起こした場合に備え、飼い主に対して損害賠償責任保険への加入の義務付けています。さらに野鳥がたくさんやってきて犬が興奮しやすくなる4/1~5/15の期間は、犬種にかかわらずリードを装着しなければならないという特別な州法も定められています。

犬命令とは何か?

2001年に施行された「動物保護・犬に関する命令」のことです。

 犬命令では犬の飼い主が当然守るべき飼育方法などの基準が具体的に規定されており、違反すると罰金を科されることがあります。具体的には以下のような内容です。
ドイツの「犬命令」の内容
  • 第2条屋外での十分な運動、飼育者との十分な接触
  • 第2条生後8週齢以下の子犬を母犬から引き離すことを禁止
  • 第3条商業的に繁殖する者は犬10頭及びその子犬につき管理者1名を配置
  • 第4条屋外飼育の場合、雨風をしのげる小屋と、小屋外に日陰になる断熱された寝床を用意
  • 第5条屋内飼育の場合、自然採光と新鮮な空気を確保
  • 第6条檻飼育の場合、檻の各辺長さは、体高の2倍以上とし、かつ2mを下回らない
  • 第6条檻の最小床面積は、体高50cm未満で6平方メートル、50~65cmで8平方メートル、65cm以上で10平方メートル
  • 第7条つなぎ飼いの場合、長さ6m以上のレール上をスライドできるようにリードを取り付け、かつ、レールに対して横方向(レールに対して90°の方向)にも5m以上動けるように設置
  • 第7条生後12ヶ月齢以下の犬を繋ぎ飼いすることを禁止
  • 第12条基準の一部については、違反すると動物保護法33の規定に基づく罰金が科せられる

犬税とは何か?

犬の飼育頭数に応じて課される税金のことです。

 犬税(Hundesteuer)は市町村税で、ドイツのほとんどの自治体で導入されています。税額は自治体により異なり、2頭目以降や危険犬種の場合に高い税率が設定されるのが通例です。
 税収は犬の福祉向上のために使われるわけではなく、一般財源となります。しかし2008年以降の不況の煽りを受けて寄付金が減り、運営に支障をきたすティアハイム(動物保護施設)が増えているため、多くのティアハイムが所属するドイツ動物保護連盟では、犬税による税収の2割を動物保護施設の運営資金に当てるようロビー活動を続けています。

動物虐待への罰則は?

動物保護法により強制的な動物の押収や飼育禁止令が出されます。

 動物を暴力によって虐待したりネグレクト(怠慢飼育)したりしている人には、まず行政の勧告が行われます。勧告に従わない場合、行政機関が介入して動物が押収されます。その際に要する飼育コストは、動物保護法の規定に従い飼い主に請求されます。
 押収というのは一時的に取り上げることであり、所有権がなくなることではありません。飼い主の態度が改善されれば返還されることもあります。態度が改善されなければ、裁判官が一定期間~一生涯に渡り、動物の飼育を禁止する命令を課すこともできます。この「動物飼育禁止令」はヨーロッパ各国では一般的ですが、日本にはありません。

日本の飼い主との違い

 日本においては動物愛護法や都道府県に設けられている条例によって犬の飼育方法に関する大まかな規則が定められています。しかし具体的な数値基準までは定められていませんので、たとえ不適切な飼い方をしている人間がいたとしても「どこにそんな規則があるんだ?」とか「それは単なる主観の相違だろ?」といった切り返しを許してしまいます。ドイツにおける犬命令は、虐待の基準を客観的に数値化してあり、反論を招きにくいという点において抑止効果が強いと思われます。
 犬税は日本にはないユニークな税制です。しかし税収が犬の福祉向上に使われるわけではありませんし、また犬以外のペットを飼っている人に税がかからないというのは不公平感を招きやすいでしょう。日本におけるNHK受信料のように、支払っていない人が結構いるというのもかなりの問題です。
 ドイツにおいては屋外でトイレをさせることが一般的で、糞尿をそのまま放置することもザラです。日本の飼い主がやっているように排泄物を袋に入れて持ち帰ったり、おしっこの痕にマナー水をかけるといった几帳面な行動は驚かれることがあります。この点に関してはドイツが日本を見習った方が良いでしょう。