トップ愛犬家の基本ドイツのペット産業犬の殺処分と安楽死

ドイツにおける犬の殺処分と安楽死

 日本でもドイツでも法律によって「むやみに動物を殺してはならない」と規定されています。しかしその解釈には大きな隔たりがあるようです。日本では公示期間が過ぎた犬や猫を次々と殺処分していきますが、ドイツでは一旦保護した動物をむやみに殺したりしません。一見すると動物愛護先進国という印象を受けますが、それは早合点です。ドイツには狩猟法というとんでもない法律があり、条件付きで屋外にいる犬や猫の銃殺を許可しています。

ドイツに殺処分がないというのは本当か?

炭酸ガスを用いた殺処分はありません。

 日本のように炭酸ガスを用いて一度に大量の動物を殺す方法は採用されていません。また収容所を連想させるため、今後も採用される事はありえないでしょう。そのかわり薬剤注射を用いた安楽死は普通にあります。
 日本のように個体数が増えすぎたことを理由とした安楽死は行われておらず、治療が可能である限り治療が優先されます。実際の判例としては、事故に遭った猫の手術費が1,500ユーロ(18万円)だとしても、治療が可能であるならば安楽殺してはならないという判決が出ています。これは動物保護法により「むやみに殺してはならない」と規定されているからです。
 安楽死が行われるのは、はなはだしい苦痛を伴う怪我や病気がある時、もしくは行動に著しい問題があって、人間もしくは他の動物に危害を加える危険性が高い場合だけです。こうした場合は逆に安楽死が推奨されています。

犬や猫を射殺してもよいというのは本当か?

条件付きで本当です。

 ドイツには狩猟法があり「犬や猫が狩猟の対象動物を怒らせるなど危険な状態を生じさせる」という条件を満たした場合、射殺することが許されています。ただし州レベルで独自の規制を設け、射殺が許容される条件を厳しくしているところもあります。
 「駆除」の対象となる犬や猫の中には、飼い主のいない犬猫のほか、放し飼いの犬猫、迷子の犬猫も含まれます。仮に猟師が飼い犬や飼い猫を撃ったとしても、「首輪をつけている」などペットであることが明白な場合を除き、処罰の対象になることはありません。

年間どのくらいの犬や猫が射殺されているのか?

正確な統計はありません。

 例えばノルトライン・ヴェストファーレン州における2012年度の統計では、狩猟者による駆除頭数に関し野良猫10,047頭、野良犬77頭と発表されています。
 ドイツ全体の駆除頭数を示す公的統計はありませんが、動物福祉協会は年間10万頭、動物保護団体PETAは年間猫40万頭、犬6万5千頭に達すると推計しています。ただしPETAによる推計は多少のバイアスや我田引水が入っているかもしれません。
 日本においては殺処分がしばしば非難の対象となりますが、ドイツにおけるハンターによる犬や猫の射殺は、殺処分問題に匹敵するような大きな福祉問題です。

日本の殺処分との違い

 日本にもドイツにも動物を保護するための法律があり「みだりに動物を苦しめたり殺してはいけない」と定められています。しかしその解釈の仕方には大きな隔たりがあるようです。
 日本においては「管理する費用がない」ことを理由に、毎年多くの犬や猫たちが殺処分されています。一方ドイツにおいては、金銭的な問題を正当な理由とは考えておらず、動物達が保護されるティアハイムにおいては基本的に殺処分が行われません。日本の保護施設を「キルシェルター」とすると、ドイツのティアハイムは「ノーキルシェルター」もしくは殺処分数が極めて少ないという意味で「ローキルシェルター」と呼ぶことができるでしょう。
 多くの人はノーキルシェルターとしてのティアハイムだけに注目し、「ドイツには殺処分がない」とか「ドイツは動物愛護の先進国」といった印象を持っているものと思われます。しかしドイツには「狩猟法」というとんでもない法律があり、条件付きではありますが屋外にいる犬や猫を射殺することを許容しています。年間に射殺される犬や猫たちの数はよく分かっていない理由は、撃ち殺された動物がそのまま屋外に放置されてしまうからでしょう。
 10万頭とも40万頭とも推計されている屋外における犬猫の射殺数。この中にはペットとして飼われている犬猫の他、ティアハイムで保護されればちゃんとした譲渡先が見つかるはずの犬猫も含まれています。見方を変えれば、日本の行政機関が行っている殺処分を、「狩猟法」という隠れ蓑を持ったハンター達が屋外で行っているということです。
 もし狩猟法がなく、屋外にいる10万頭~40万頭の犬猫たちがすべてティアハイムに集結したらどうなるでしょう?スペース的にも財政的にも苦しくなり、いずれ「数が多すぎるから殺処分しよう」という議論になるのではないでしょうか。
 どの国にも良い部分と悪い部分があります。良い部分を教師にするのは構いませんが、同時に悪い部分を反面教師にしなければなりません。狩猟法によって屋外で殺される犬猫の正確な数はどのくらいなのでしょう?飼い主が動物病院に持ち込んで安楽死させている犬猫の数はどのくらいなのでしょう?交通事故などで路上死している犬猫の数はどのくらいなのでしょう?こうした具体的な事実を知らずに「動物愛護の先進国」というレッテルを貼り、盲目的にお手本にしてしまうのは非常に危険です。