トップ愛犬家の基本ドイツのペット産業犬の繁殖業・ブリーダー

ドイツにおける犬の繁殖業・ブリーダー

 日本の場合と同様、ドイツには犬の健康と福祉を重視したシリアスブリーダーがいる一方、パピーミルのような悪徳繁殖業者もいます。前者が生み出す犬の割合は、年間に生み出される子犬のうち16%程度で、残りは趣味で繁殖を行う素人(バックヤードブリーダー)、悪徳繁殖業者、隣国のパピーミルなどが繁殖した犬たちです。

繁殖は誰が行っているのか?

ブリーダーが行っています。

 日本の場合、反復継続して繁殖を行う場合には「業」として第一種動物取扱業の「販売」という登録をしなければなりません。一方ドイツにおいては、たとえ繁殖や販売が反復継続しない場合であっても、妊娠可能なメス犬を3頭以上飼育しているか、年間の繁殖回数が3回以上である時点で、ドイツ動物保護法の規定により商業ブリーダーとして登録しなければなりません。
 商業ブリーダーにも2種類あります。1つは繁殖規定を設けている連盟や協会に所属し、規定を守りながら繁殖を行う「所属型ブリーダー」。もう一つは連盟や協会に所属しない状態で繁殖を行う「無所属型ブリーダー」です。どちらであっても商業ブリーダーとして登録している限り違法というわけではありません。

所属型ブリーダー

 所属型ブリーダーとは連盟や協会など何らかの組織に属した状態で繁殖を行うブリーダーのことです。毎年新たに生み出されているおよそ30万頭の純血種犬のうち、27%に相当する8万頭がドイツ犬連盟に所属したブリーダーによって生み出されていると推定されています。

無所属型ブリーダー

 無所属型ブリーダーとは、連盟や協会に所属していないブリーダーのことです。毎年新たに生み出されているおよそ30万頭の純血種犬のうち、73%に相当する22万頭が無所属型ブリーダーによって生み出されていると推測されています。
 どこにも所属していないためステータスが曖昧で、繁殖犬がどのような基準で選ばれているのか全くわかりません。また飼育放棄された際の返還規定もまちまちのため、ブリーダーが誰なのかをたどれないこともしばしばあります。ただし存在自体は合法です。

犬の繁殖数はどのくらいか?

正確な統計は取られていません。

 犬の正確な流通量や飼育頭数に関しては、日本の場合と同様、データを集積する中央システムが存在しないため、よくわかっていません。推定ではドイツ全土で690~790万頭の犬が飼育され、毎年50万頭の子犬が生まれているとされています。
 さらに上記した50万頭のうち雑種が20万頭で純血種が30万頭、純血種の27%に相当するおよそ8万頭がドイツ犬連盟に所属したブリーダーによって生み出され、残りの22万頭が連盟に所属していないブリーダーによって生み出されていると推計されています。
 これら22万頭の子犬達は、国内にいる登録済みのブリーダーや未登録のブリーダーが繁殖したもののほか、東欧を中心とした犯罪組織が「パピーミル」と呼ばれる劣悪な環境下で無理やり繁殖したものから構成されています。

所属型ブリーダーは良心的か?

犬種団体に所属しているブリーダーは良心的と言えます。

 ブリーダーが連盟や犬種協会に所属している場合、犬の健康や福祉に配慮したいわゆる「シリアスブリーダー」に近い存在と考えられます。
 例えばブリーダーが「ドイツ犬連盟」(VDH)に所属している場合、利益追求型のいわゆるパピーミル(子犬工場)が出てくるのを防ぐため、犬種ごとに置かれているブリーディングの責任者によって繁殖に用いる犬が審査を受けます。具体的な審査基準は行動、健康状態、外見などです。ゴーサインが出たら繁殖犬は協会に登録され、産まれた子犬もマイクロチップなどにより個体識別された上で協会に登録されます。

無所属型ブリーダーは良心的か?

必ずしも良心的とは言えません。

 犬種協会の管理の目を逃れているため繁殖施設、母犬の健康状態、子犬の生育環境などが全くチェックされていません。一般市民から「あそこのブリーダーはひどい!」という通報があれば地元の獣医局が立ち入り検査を行うこともありますが、基本的には一般家庭であるため、明白な犯罪行為が行われていない限り警察などが介入することはできません。
 中には国の法律で定められている商業ブリーダーとしての登録すらしていない悪徳ブリーダーも存在しています。

犬を繁殖する際の規制はあるか?

所属型ブリーダーの場合、法律や州法のほか犬種協会規則によって縛られます。

 ブリーダーが犬種協会に所属している場合、繁殖に際して一定のルールが課されます。例えば「15ヶ月未満の犬は繁殖させてはいけない」「体重が2kg未満の犬は繁殖させてはならない」「繁殖年齢の上限は8歳」などです。
 また犬種協会によっては国の「犬保護法」(通称:犬命令)で義務化されている「体高50cmの犬には最低6平方メートルのスペースが必要」「メス犬10頭につき世話人1名が必要」といった最低基準では不十分と考えているところもあります。その場合、犬種協会自体が独自の基準を設け、ブリーダーに順守するよう義務付けています。
 ブリーダーを監督する責任者は犬が出産した3日後のタイミングで施設を訪問し、子犬と母犬の状態をしっかり確認する義務があります。さらに8週間後のタイミングで再び繁殖施設を訪問し、きちんと予防接種が終わっているか、母犬と子犬が一緒にいたかどうかを確認します。ブリーダーが管理を怠っていた場合は報告書にその旨が記載され、以降繁殖者としての信頼を失うことになります。つまり販路を失うということです。また「狩猟犬のワイマラナーならば狩猟をする人に譲る」など、販売先にもある程度の制約がかかります。
 犬種団体の中には「販売した後で飼育放棄された場合、ブリーダーが引き取らなければならない」という規定を設けているところもあります。犬の個体識別情報にブリーダー情報も含まれているのは、犬がブリーダーのもとに帰れるようにするためです。
 なおドイツ犬連盟ではなく「ドイツ動物取扱専門業者中央連盟」(ZZF)に所属しているパターンもありますが、こちらは小動物や鳥などのブリーダーが中心で犬や猫のブリーダーはほとんどいません。

ドイツ犬連盟(VDH)とは何か?

犬の繁殖と販売を管理統制する民間の機関です。

 純血種ごとに設立された犬種協会(2018年時点で177)の他、アジリティ競技などを行っているスポーツドッグ協会(2018年時点で20)も含まれます。個人会員数は約1万人で、必要経費以上の金額をふっかけるような営利目的のブリーダーは会員になれません。
 運営資金は会費が約15%で、残りの85%は会社の運営収益でまかなっています。主な収入源は純血犬のドッグショー(品評会)です。

日本の繁殖業者との違い

 犬種協会に所属しているブリーダーの場合、協会が定める繁殖規定を遵守しながらブリーディングを行う必要があります。こうした面に着目すると、いわゆるシリアスブリーダー近い存在と言えるでしょう。また必要経費以上の法外な値段をふっかけるような営利目的のブリーダーはそもそも所属を認められなかったり除名されることもありますので、趣味で犬の繁殖を行うホビーブリーダーという側面も併せ持っています。
 しかしこうした一側面だけ見て「ドイツのブリーダーは素晴らしい!」結論づけるのは早計です。上記したようなまっとうなブリーダーが占めている割合は、年間に生み出されるおよそ50万頭の子犬のうち16%に過ぎません。残りの84%は監視の目がない状態でブリーディングを行っていますので、犬たちの福祉や健康がないがしろにされる危険性をはらんでいます。繁殖者の中には劣悪環境下に犬たちを軟禁するアニマルホーダーのような存在もいるでしょうし、パピーミルに代表されるような悪徳業者もいるでしょう。
 隣国から国境を越えて犬が頻繁に密輸入されるという問題は、海に囲まれた島国で検閲も厳しい日本では考えられない相違点です。