音声学の領域にはフォルマント(ホルマント)という概念があります。これはある個体の発した音声は、その個体特有の周波数領域が強くなっているという現象のことです。発声器官の形状が個体によって微妙に違うためにこのような現象が生じます。目の見えない子犬は、母犬の音声中に含まれるこのフォルマントを聞き分けることにより母犬や兄弟犬の個体識別を行っていると考えられています。
また人間の発する言葉は母音(a,e,i,o,u)と子音(k,s,t,n,h,・・・)とからなっています。子音を分析しても明確なフォルマントは見当たりませんが、母音にはあります(写真左)。犬は飼い主の発する声からこのフォルマントを聞き分け、飼い主の識別をすると考えられます。このフォルマントから母音を聞き分けることはできますが、子音を聞き分けることは難しいでしょう。「たんぼ」という言葉も「さんぽ」という言葉も同じように「あんお」と聞こえますので、「たんぼ」という言葉を会話の中から聞き取ってテンションが上がる犬がいるかもしれません。 まして「だめでしょ〜そんなことしちゃ!」などという言葉を聞き取ることはできず「あええおーおんあおおいあ」としか聞こえていない可能性のほうが大きいのです。だからしつけるときは短い音節で、飼い主の感情がわかるようにはっきりと「ダメ!」や「ノー!」と犬が聞き取りやすく、なおかつ犬にも分かりやすいように叱りつけることが必要なのです。名前をつけるときも「ネブガドネザル」などという複雑な音にするのではなく「ジョン」や「マロン」など犬が聞き取りやすいものがよいでしょう。 |