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ダイエットの基本

 犬にダイエットをさせるとき、絶対に必要となる基礎知識です。肥満の判定方法からダイエット計画の立て方までを順を追って解説します。

ダイエットの目的

 肥満とはそもそも、脂肪細胞に過剰な脂肪が蓄積された状態をいいます。犬の肥満でも解説した通り、余分な脂肪を持っていると、以下のリストで示すような疾病につながりやすくなります。そこで必要になってくるのが、増えすぎた体重を適正体重に戻す「ダイエット」です。ダイエットの最大の目的は、犬が肥満に連動した疾病にかからないよう予防することと言えます。 小動物の臨床栄養学(4版, P461)より
肥満に伴う疾病のリスト
  • 代謝の変化高脂血症、インスリン抵抗性の増加、グルコース不耐性、脂肪肝(猫)、麻酔による合併症
  • 内分泌障害クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、甲状腺機能低下症糖尿病、インスリノーマ、下垂体前葉色素嫌性腺腫、下垂体機能低下症、視床下部の障害
  • 機能の変化関節へのストレス、筋骨格の痛み、呼吸困難、高血圧、難産、運動能力の低下、熱中症、免疫機能の低下
  • その他関節軟骨の摩耗等、変形性関節症、心血管系の疾患、転移性細胞癌
 肥満と病気がここまで密接な関係を持っているとなると、肥満自体が病気の一種と言っても過言ではないでしょう。ペットが肥満に陥らないよう気を付けることが、飼い主の重大な責務の一つと言えます。なお、3~5歳の子供を持つ母親を対象とした調査によると、子供が肥満傾向であるにもかかわらず、そのことに気づいていない割合が98.1%、そして子供が明らかに肥満体であるにもかかわらず、そのことに気づいていない割合が82.9%にも達したといいます(→出典)。ペットを我が子のようにかわいがっている飼い主も、同じように肥満を見落としがちになりますので要注意です。例えば明治大学・農学部の研究チームが行った調査によると、2006年~2013年の期間、日本全国にある1,198の動物病院から犬の体型に関するデータを収集した所、BCSの割合が以下のような数値になったといいます(→詳細)。太り気味を示す「BCS4」(39.8%)と明らかな肥満を示す「BCS5」(15.1%)とで全体の54.9%を占めていることがお分かりいただけるでしょう。 日本のペット犬におけるBCSの割合
 ダイエットはの基本的な流れは、「現在の体型と体重を知る」→「理想の体型と体重を知る」→「計画を立てる」→「実践する」→「計画を評価する」です。このサイクルを繰り返すことにより、徐々に理想体型に近づけていきます。ただし、ダイエットの対象となるのは健康な成犬だけです。ライフステージが異なる犬に無理な運動や食事制限を課すと、時に健康を損ねてしまうことがありますので、持病がある犬は病気を治し、成長期にある子犬は1歳を超え、妊娠期・授乳期にあるメス犬は乳離れが終わってからがダイエットの対象となります。またダイエットを開始する前に、基礎疾患の有無を確認するため、必ず動物病院で健康診断を受けておいてください。
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現在の体型と体重を知る

 ダイエットを開始する前に、まず自分のペットが今現在どのような状態にあるのかを把握する必要があります。犬の肥満を測る際は体型(BCS/MCS)と体重を目安にするのが一般的です。

ボディコンディションスコア(BCS)

 「ボディコンディションスコア」(BCS)とは、犬の肥満とやせの度合いを短時間で評価するための指標です。肥満を判定する際は、適正体重と現体重の比率を出す方法や、骨盤周囲を計測して体脂肪率を推測する方法もありますが、簡便性と正確性を考慮した場合、このBCSが最も優れているといえます。BCSには9段階方式もありますが、以下では最も広く用いられている5段階方式をご紹介します。飼い主はこれを参考にしながら、現在犬がどの段階にあるのかを把握します。もし難しい場合は、獣医さんに判定をお願いしても構いません。
犬の肥満判定用BCS
  • BCS1・やせすぎ 理想体重の85%以下・体脂肪率5%以下
     肋骨や背骨、腰骨のアウトラインが浮き出しており、横から見ると腹部は著しく巻き上がっている。上から見ると腰がくびれて砂時計のように見える。皮下脂肪はなく、尾の付け根も明瞭に区別できる。 犬のボディコンディションスコア(BCS)・やせすぎ
  • BCS2・体重不足 理想体重の86~94%・体脂肪率6~14%
     わずかな脂肪に覆われており、肋骨や腰の骨を容易に触ることができる。腹部の脂肪もごくわずかで、横から見るとおなかが巻き上がって見える。 犬のボディコンディションスコア(BCS)・体重不足
  • BCS3・理想体重 理想体重の95~106%・体脂肪率15~24%
     わずかな皮下脂肪を通して肋骨や骨格の隆起に触れることができる。腰には適度なくびれが見て取れる。 犬のボディコンディションスコア(BCS)・理想体重
  • BCS4・体重過剰 理想体重の107~122%・体脂肪率25~34%
     皮下脂肪に覆われており、肋骨に触るのが難しい。骨格の隆起部にはかろうじて触ることができる程度。腰のくびれは不明瞭で、上から見ると背中がやや横に広がって見える。 犬のボディコンディションスコア(BCS)・体重過剰
  • BCS5・肥満 理想体重の123~146%・体脂肪率35%以上
     厚い皮下脂肪に覆われており、肋骨に触れることができない。尾の付け根が脂肪で不明瞭。横から見るとおなかが垂れ下がり、上から見ると箱や樽の形に見える。 犬のボディコンディションスコア(BCS)・肥満

マッスルコンディションスコア(MCS)

 以下は、犬の筋肉の付き具合を確認するための「マッスルコンディションスコア」(MCS)です。食餌中のタンパク質が不足すると、時に筋肉の萎縮を招いてしまいます。こうした事態に陥らないよう、日常的に犬の筋肉の状態をチェックすることも大事です。なお毛が長い犬種の場合、シルエットが判然とせず、太っているのか痩せているのかがわからない場合があります。そういう時は、飼い主がマッサージブラッシングのついでに犬のボディラインをチェックし、肉の付き具合を細かくチェックしておきます。 WSAVA Global Nutrition Committeeより
マッスルコンディションスコア(MCS)
  • 通常の筋肉量  頭部の咀嚼筋は緩やかな丸みを帯びている。肩甲骨、背骨、大腿骨、肋骨は適度な筋肉に覆われており、浮き出ていない。 犬のマッスルコンディションスコア(MCS)~通常の筋肉量
  • わずかな筋肉の喪失  頭部の咀嚼筋はやや失われている。肩甲骨、背骨、大腿骨、肋骨がうっすらと浮き出ている。 犬のマッスルコンディションスコア(MCS)~わずかな筋肉の喪失
  • かなりの筋肉の喪失  頭部の咀嚼筋はかなり失われ、側頭部にわずかなへこみが見える。肩甲骨、背骨、大腿骨、肋骨は明瞭に浮き出ている。 犬のマッスルコンディションスコア(MCS)~かなりの筋肉の喪失
  • ひどい筋肉の喪失  頭部の咀嚼筋はほとんど失われ、側頭部にはっきりとしたへこみができる。肩甲骨、背骨、大腿骨、肋骨に筋肉はほとんどなく、骨と皮ばかり。 犬のマッスルコンディションスコア(MCS)~ひどい筋肉の喪失

体型を写真にとる

 犬の体型はBCSやMCSを確認して終わるのではなく、必ず写真に収めておきます。明るさが一定な撮影場所を決めておき、そこで犬の前、横、後ろ、上からの姿を撮影しましょう。ダイエットの前後で写真を見比べれば、どこがどのように変わったのかが一目瞭然でわかるはずです。

体重を測る

 体重は決められた時間に測るようにします。食事の前と後、排泄の前と後では、微妙に体重が変動しますので、計測するタイミングを決めておけば、こうした誤差を減らすことができるでしょう。測り方は、飼い主が犬を抱えたまま体重計に乗り、そこから自分の体重を差し引くというやり方が簡便です。ただし、人間用の体重計は0.1キロ、つまり100グラム単位で計測することが大半です。一方、ペットのダイエットでは数十グラムの微妙な増減をモニターする必要があります。ですから成人用の体重計ではなく、より細かな計測ができる赤ちゃん用のベビースケールなどを用いて体重を測った方がよいでしょう。
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理想の体型と体重を知る

 理想の体型は、BCSで言えばちょうど中間の「BCS3」です。この体型を目指してダイエット計画を進めていくことになります。
 また理想の体重は「(現体重×除脂肪率)÷0.8」という公式で求められます。「脂肪率」が体の中において脂肪が占めている割合を示しているのに対し、「除脂肪率」は体重全体から脂肪だけを除いた部分、すなわち「除脂肪体重」が占めている割合を示しています。おおまかな目安は、「BCS4(体重過剰)→体脂肪率30%/除脂肪率70%」、「BCS5(肥満)→体脂肪率40%/除脂肪率60%」です。統計的に、現体重に除脂肪率を掛けて出てきた値を0.8で割ると、理想体重に近い値が出ます。
理想体重の計算式(kg)
体重過剰や肥満状態の犬における理想体重の求め方  多くの方にとっては計算が面倒でしょうから、おおまかな理想体重を以下で一覧化しました。ご自身のペットが「BCS4」(体重過剰)と判断される場合は、「BCS4の犬の理想体重」を、そして「BCS5」(肥満)と判断される場合は、「BCS5の犬の理想体重」をご参照ください。例えば、現状が6kgでBCSが4の場合は「5.3kg」が理想体重となり、現状が20kgでBCSが5の場合は「15kg」が理想体重となります。
BCS4の犬の理想体重(kg)
現状理想現状理想現状理想
54.4 3026.3 6254.3
65.3 3228.0 6556.9
76.1 3530.6 6758.6
87.0 3732.4 7061.3
97.9 4035.0 7263.0
108.8 4236.8 7565.6
1210.5 4539.4 7767.4
1513.1 4741.1 8070.0
1714.9 5043.8 8271.8
2017.5 5245.5 8574.4
2219.3 5548.1 8776.1
2521.9 5749.9 9078.8
2723.6 6052.5 92 80.5
BCS5の犬の理想体重(kg)
現状理想現状理想現状理想
53.8 3022.5 6246.5
64.5 3224.0 6548.8
75.3 3526.3 6750.3
86.0 3727.8 7052.5
96.8 4030.0 7254.0
107.5 4231.5 7556.3
129.0 4533.8 7757.8
1511.3 4735.3 8060.0
1712.8 5037.5 8261.5
2015.0 5239.0 8563.8
2216.5 5541.3 8765.3
2518.8 5742.8 9067.5
2720.3 6045.0 92 69.0
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ダイエット計画を立てる

 現在の体型と体重、および理想の体型と体重ががわかったら、今度はダイエット計画を立てます。無理のないダイエットは、1週間で体重の0.5~1.5%前後、1ヶ月で体重の2~6%くらいを落とすペースです。週2%までは許容範囲と考えられていますが、あまり急激に体重を落とすと脂肪以外の組織が減ってしまう可能性があるため、上限としては1.5%くらいが妥当だと考えられます。
 例えば適正体重が10kgなのに、現在12kgある犬がいたとします。1ヶ月で下限である2%減量しようとすると、現体重の2%は0.24kgですので、余分な2kgを減量するには「2.0÷0.24≒8.3」で8ヶ月半程度かかるという計算になります。また1ヶ月で上限である6%減量しようとすると、現体重の6%は0.72kgですので、余分な2kgを減量するには「2.0÷0.72≒2.7」で3ヶ月弱かかるという計算になります。3~8ヶ月と、ずいぶんのんびりとした印象を与えますが、急激なダイエットは、犬の心身への負担が大きいですし、運動につきあう飼い主の負担にもなりますので厳禁です。
 以下は「理想体重が7.5kg/現在10kg」を例にとった2.5kgのダイエット計画グラフです。グラフの縦軸を「体重」に、そして横軸を「ダイエット期間」に設定してあります。ご自身のペットを基にして同じようなグラフを作ってみてください。
2.5kgのダイエット計画
ダイエットの適正なペース
  • 現在の体重10kg
  • 現在のBCSBCS5の「肥満」
  • 理想体重(現体重×0.6)÷0.8=7.5kgくらい
  • 1ヶ月の適性減量値10kg×2%=0.2kg(下限)~10kg×6%=0.6kg(上限)
  • ダイエット期間余分な脂肪2.5kg÷1ヶ月の適性減量値0.2~0.6kg=4~12ヶ月
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ダイエットを実践する

 ダイエット計画を立てたら、いよいよ実践です。犬の脂肪を減らす唯一の方法は、体の中で「摂取エネルギー<消費エネルギー」というエネルギーバランスを作り出すことです。摂取エネルギーを減らす際は「食事制限」が、そして消費エネルギーを増やす際は「散歩」がメインのアプローチ方法となります。具体的な方法や注意点に関してはここで書ききることができませんので、犬の摂取エネルギーを減らす犬の消費エネルギーを増やすに分割して記載しました。実践中は、最低でも1週間ごとに犬の体型と体重を記録しておきましょう。体型は写真に収め、体重は事前に作っておいた計画グラフに数値を書き込むようにします。
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ダイエット計画を評価する

 ダイエット計画に沿って1ヶ月実践してみたら、ひとまず体重や体型の変遷をチェックしてみます。犬の体重が上限と下限の間にある「適正ペース」に入っていれば順調です。また体型が少しでも理想に近づいていたら大成功といえます。その調子で1週間ごとに記録をとり、目標体重に到達するまで残りの期間を頑張ってみましょう。
 もし体重の減少が下限に届いておらず、計画グラフの「遅すぎ」の範囲に入っていたら、エネルギーバランスが適正でない可能性を考慮しなければなりません。その場合は、摂取エネルギーを少し減らし、消費エネルギーを少し増やしてダイエット計画を再スタートしてみましょう。また逆に、体重の減少が上限を超え、計画グラフの「速すぎ」の範囲に入っていたら、急激に体重を減らしすぎです。目減りした体重は脂肪ではなく、筋肉やその他の組織である可能性があります。その場合は摂取エネルギーを少し増やし、消費エネルギーを少し減らすように微調整します。
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